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17.魔法使いのちょっかい

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 それから、メルテウス様は度々学園に遊びにいらっしゃるようになりましたわ。

「ねぇ、ナリアンヌ。君ってどんな魔法が使えるの?」

「魔法……ですか」

 そういえば、わたくし……魔法を使ったことがございませんわ! 基本的に魔物はパワーで倒して参りましたの。

「僕が魔法を教えてあげるよ。おいで?」

 そう言って、メルテウス様はわたくしの手を引いて、魔術練習場へと連れ去ってしまいました。

 私が去った後、取り残された殿下とルチア様は、何やらお話ししていらっしゃいましたわ。


「ねぇ、男爵令嬢」

「なに? 王子」

「一時休戦としないか?」

「私もそう思ってた。同盟、組む?」

「あぁ、共にナリアンヌ嬢を取り戻そう」










「よく言うけど、魔法はイメージが大切だよ? さぁ、炎をイメージしてごらん?」

「イメージしましたわ」

「そして、自分の体内から押し出すイメージで呪文を唱えてみて」

「あの、先日、メルテウス様は呪文を唱えていらっしゃいませんでしたわ」

「あぁ、魔術具を身につけていると、慣れた魔法使いなら無唱魔法も可能だよ。そうだ」

 そう言って、メルテウス様はわたくしの首に何かをかけました。

「魔術具のネックレス。あげるよ」

「まぁ! こんなに素敵なものをありがとうございます。よろしいのですか?」

「君にあげたくて、作ったからね」

「メルテウス様の手作りですの!? メルテウス様は魔術具までお作りになられるんですね! さすが魔法の天才大魔法使い様ですわ」

「ありがとう」

 メルテウス様にお礼を言ったわたくしは、炎の魔法のイメージを浮かべ、体内からそれをだそうとしました。

「な!? 無唱魔法!?」

「まぁ。わたくしにもできましたわ」

「ナリアンヌ。僕と一緒に魔法研究所に勤めるつもりはない? 君ならすっごい魔法を作り出せると思うよ!」

 わたくしの両手を取り、接近してくるメルテウスさま。殿方とそのような距離感、わたくしったら照れてしまいそうですわ。

「魔法使い殿。ナリアンヌ嬢は、僕の婚約者候補だ」

「悪役令嬢は、ヒロインのもの」

「殿下とルチア様!?」

 そんなわたくしを、どこからか現れた殿下とルチア様が引っ張ります。

「……ナリアンヌはまだ、候補だよね? 王子様に止める権利はないんじゃないかな?」

「……」

「ヒロインのもの」

「君は何を言っているのか、よくわからないけど、王妃よりも魔法使いの方が自由だよ? 君にとってもナリアンヌが自由なことはいいことじゃないの? それに、ナリアンヌが魔法を極めた方が捕まえられる魔物も増えるんじゃない?」

「……たしかに」

 ルチア様と殿下は、メルテウス様の言葉に黙ってしまわれました。

「お誘いいただきありがとうございます、メルテウス様。わたくし、学園卒業ゲーム終了までは何者にも縛られるつもりはございませんわ」

 そうでないと、国外追放された場合に各所にご迷惑をおかけしてしまいますもの。

「そっか。気が変わったらいつでも教えて? ナリアンヌ」


 そう言って、わたくしの頭に手を乗せてぽんっと撫でたメルテウス様は転移魔法で一瞬にして消え去ってしまわれました。

「……やっと帰ったな」

「悪役令嬢。魔法一緒にする」

「まぁ。ルチア様。ご一緒に魔法の練習をしたいのですか?」

 こくり、と頷くルチア様につられて、魔法の練習が始まりました。






「ねぇ、悪役令嬢」

「どうなさったの? ルチア様」

「次のイベント、何を食べられる?」

「……キメラは絶滅させてしまいましたから、別の何かが……そう言われれば、キメラ発生イベントの時期は過ぎておりますわ」

「キメラって何?」

「さまざまな魔物が混ざった生き物ですわ」

「美味しそう……。悪役令嬢、獲物、狩り尽くした! もう知らない!」

「お待ちになって、ルチア様。どちらにお行きになるの!?」


 涙を流したルチア様は、どこかに駆け出していってしまわれました。わたくし、キメラは美味しそうには見えませんわ。

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