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12.ヒロインを餌付けする
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翌朝、ルチア様にカットしたゴブリンの肉を差し出します。
「ルチア様。一部の民族の間では、ゴブリン肉は食用とされると聞きますわ。先日の虫の魔物の代わりにこちらをお食べください。どうしても、魔物を食べたいというのならば」
「……ありがとう」
そう言って、ルチア様はわたくしが差し出した肉を次々とアイテムボックスに片付けていきます。
「さぁ、お出しなさい? 先日の虫の魔物を」
「……もう食べた。これ、今夜食べる」
「もう。夜食にそんなにもお肉を食べたら、太りますわよ?」
「……」
ルチア様はわたくしを一瞥して去って行きましたわ。今日も日向で寝転がっていらっしゃいます。
休み時間が終わり、教室に戻ろうとすると、サタリー・アルテリア伯爵令息と会いましたわ。話していると、どこからともなくルチア様も現れました。
「まあ、ご機嫌よう。サタリー・アルテリア伯爵令息様」
「ご、ご、ごきげんようでございます! ナリアンヌ・ハーマート公爵ご令嬢様!! じ、自分は、貴女の強さを心より尊敬しております!!!」
「まぁ、ありがとうございます。どうぞナリアンヌとお呼びくださいませ」
「な、なななナリアンヌ嬢」
「はい、なんでしょう? サタリー・アルテリア伯爵令息様。サタリー様とお呼びしてもよろしくて?」
「も、もちろんでございます!!」
「で、ルチア様は何をなさっていたの」
「肉、美味しかった。また討伐して」
「まったく……では、サタリー様。また魔物討伐では、よろしくお願いいたしますね?」
「は、はい!!!!」
怖い顔をしていらっしゃるのに、終始ガチガチのサタリー様が面白く、笑いながら別れを告げてしまいました。大量の魔物を倒したわたくしにとって、あれくらいのお顔は怖くなくなったようですわ。
「……ねぇ。悪役令嬢。ゴブリン、美味しかった……人間、美味しい?」
「こら、ルチア様! 人間なんて美味しくないから、魔物までにしておきなさい。また取ってきてあげるわ。あと、虫型の魔物もおやめなさい?」
「……虫は捕まえるのが楽しい」
「まったく、聖女さまはやんちゃでいらっしゃるわ」
そう言って見ていると、ルチア様は猫じゃらしを見つけて、風に揺れる猫じゃらしにじゃれかかっていきました。
「ヒロインは転生した猫……? まさか、ね」
頭を軽く振ってあり得ない考えを、脳内から追い出します。ルチア様は何を考えていらっしゃるのか、いまいちわかりませんわ。
「ねぇ、悪役令嬢。他に魔物肉、ない?」
「……仕方ありませんわ。次の休みにドラゴンを狩ってきます。ドラゴンなら食べられるものだから」
「遅い。今すぐ食べたい……探してくる」
「ルチア様!? 授業はどうなさるの!?」
壁をひょいと飛び越えて出ていったルチア様は、一講義お休みされました。
「……次の課外学習の班決めがありましたのに。仕方ありませんわ。ルチア様もわたくしの班に入れて差し上げましょう」
「ルチア様。一部の民族の間では、ゴブリン肉は食用とされると聞きますわ。先日の虫の魔物の代わりにこちらをお食べください。どうしても、魔物を食べたいというのならば」
「……ありがとう」
そう言って、ルチア様はわたくしが差し出した肉を次々とアイテムボックスに片付けていきます。
「さぁ、お出しなさい? 先日の虫の魔物を」
「……もう食べた。これ、今夜食べる」
「もう。夜食にそんなにもお肉を食べたら、太りますわよ?」
「……」
ルチア様はわたくしを一瞥して去って行きましたわ。今日も日向で寝転がっていらっしゃいます。
休み時間が終わり、教室に戻ろうとすると、サタリー・アルテリア伯爵令息と会いましたわ。話していると、どこからともなくルチア様も現れました。
「まあ、ご機嫌よう。サタリー・アルテリア伯爵令息様」
「ご、ご、ごきげんようでございます! ナリアンヌ・ハーマート公爵ご令嬢様!! じ、自分は、貴女の強さを心より尊敬しております!!!」
「まぁ、ありがとうございます。どうぞナリアンヌとお呼びくださいませ」
「な、なななナリアンヌ嬢」
「はい、なんでしょう? サタリー・アルテリア伯爵令息様。サタリー様とお呼びしてもよろしくて?」
「も、もちろんでございます!!」
「で、ルチア様は何をなさっていたの」
「肉、美味しかった。また討伐して」
「まったく……では、サタリー様。また魔物討伐では、よろしくお願いいたしますね?」
「は、はい!!!!」
怖い顔をしていらっしゃるのに、終始ガチガチのサタリー様が面白く、笑いながら別れを告げてしまいました。大量の魔物を倒したわたくしにとって、あれくらいのお顔は怖くなくなったようですわ。
「……ねぇ。悪役令嬢。ゴブリン、美味しかった……人間、美味しい?」
「こら、ルチア様! 人間なんて美味しくないから、魔物までにしておきなさい。また取ってきてあげるわ。あと、虫型の魔物もおやめなさい?」
「……虫は捕まえるのが楽しい」
「まったく、聖女さまはやんちゃでいらっしゃるわ」
そう言って見ていると、ルチア様は猫じゃらしを見つけて、風に揺れる猫じゃらしにじゃれかかっていきました。
「ヒロインは転生した猫……? まさか、ね」
頭を軽く振ってあり得ない考えを、脳内から追い出します。ルチア様は何を考えていらっしゃるのか、いまいちわかりませんわ。
「ねぇ、悪役令嬢。他に魔物肉、ない?」
「……仕方ありませんわ。次の休みにドラゴンを狩ってきます。ドラゴンなら食べられるものだから」
「遅い。今すぐ食べたい……探してくる」
「ルチア様!? 授業はどうなさるの!?」
壁をひょいと飛び越えて出ていったルチア様は、一講義お休みされました。
「……次の課外学習の班決めがありましたのに。仕方ありませんわ。ルチア様もわたくしの班に入れて差し上げましょう」
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