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10.エステ王国への差金
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「エステ王国の後継者問題に首を突っ込みます」
エステ王国では、第一王妃が産んだ王女と第二王妃が産んだ王子が継承権をめぐって争っています。エステ王国では、王女にも継承権があり、長子ほど優先されますが、第二王妃のご実家が国内最大派閥の公爵家であり、実際に国王になったことが多い王子でいらっしゃるとのことということで、国内冷戦状態にあります。国王陛下は状況を見ていて、まだ後継者を指名していません。
状況的に優位なのは王子と思いますが、実は王女の方が優秀なのです。
そこで、小国であるものの隣国である我が国が王女との友好を見せるとなると、混乱を極めるでしょう。その混乱は、王子には収められず、王女でしたら収められる。わたくしは、そう予想しております。わたくしの予想ではあるものの、新ミリュー王国みなは、同意してくださいました。ということで、王女殿下へのお手紙を認め、我が国特産の金と共に贈ります。
我が国は小さいものの、旧ミリュー王国の資源の大半を産出していたのです。資源国という意味では、近隣諸国が我が国には敵いませんわ。だからこそ、旧ミリュー王国は我がフェイジョア領を除いて各国に分割されたのですが……。
「ミルフレッツァ王女! 新ミリュー王国から、ミルフレッツァ王女へ使者の方がいらっしゃいました!」
「わたくしに? 何かしら……」
新ミリュー王国といえば、旧ミリュー王国の旧第一王子の婚約者であったツリアーヌ・フェイジョア。彼女は新ミリュー王国の王妃だわ。しかし、実際の新ミリュー王国立国の立役者は彼女であるし、権力者も彼女に違いないわ。
旧ミリュー王国の中枢から追い出す真似をした我が国への恨み……彼女はそれだけで行動に移す短略的な人物ではないはずよ。
「お会いします。支度してちょうだい」
「ミルフレッツァ・エステ第一王女へ、新ミリュー王国王妃であるツリアーヌ・フェイジョア様より贈り物とお手紙をお届けに参りました」
「贈り物……?」
「こちら、新ミリュー王国特産の金で作った黄金のティアラでございます」
「ティアラ……」
新ミリュー王国、いえ、ツリアーヌ・フェイジョアはわたくしを次期女王に就かせようとしているのかしら。しかし、彼女は今自国を整えることで手一杯のはずよ。なぜ我が国を混乱に陥れたいのかしら? ……それでも、女王の座に着くためにはこの手を掴まないわけにいかないわ。
「ありがたく頂戴いたします。今夜のパーティーでつけさせてもらうわ。ぜひあなたもご出席なさって?」
「ありがたく出席させていただきます」
手紙……内容が気になるところね。お父様もツリアーヌ・フェイジョアのことを一目置いていたはずよ。お父様にもこのことを報告しなければいけないわ。
さぁ、ツリアーヌ・フェイジョア。あなたを利用させてもらうわ。わたくしが女王の座についたときには、あなたがわたくしを支援した意図を明らかにさせてもらいますからね。覚悟していらっしゃい!
「ツリアーヌ様。無事、エステ王国は後継者争いが激化して混乱に陥ったようです。ツリアーヌ様の予想の通り、後継者はミルフレッツァ王女殿下が指名されるかと」
「ありがとう。あとは、ティモルト王国ね……って、メルティーヌ様!? 帰国なさったのではなくて?」
ヤリアント様と話し合いをしていたら突然現れたメルティーヌ様。
数週間前に帰国なさったはずのメルティーヌ様。なぜ我が国に戻っていたらしたのでしょう? というよりも先触れは……?
「わたくし、ツリアーヌ様に会いたくて父上の目を騙して抜け出してきてしまいましたわ! この国の兵には“ツリアーヌ様に頼まれた仕事を忘れていて”って言ったら入れていただきましたの!」
「あとで兵を叱っておくわ。メルティーヌ様。まずは、お父上にご報告なさってください。ご自身で」
メルティーヌ様を叱って、“通信の鏡”を起動させます。
「ツリアーヌ嬢……メルティーヌ! おぬし、また新ミリュー王国に迷惑をかけよって!」
「お父様! 今回は非公式訪問ですわ!」
「そう何度も訪問させてたまるか!」
「わたくし、ツリアーヌ様とピクニックに行きたかったのですもの!!」
ピクニック……。最近流行りの物語にピクニックに行く描写のあるものが……ありましたわね。メルティーヌ様はそれに影響されたのでしょう。
「では、メルティーヌ様。わたくしと一緒にピクニックに行ったら帰国なさるとお約束できますか?」
「……」
「メルティーヌ!」
「わかりましたわ~。お父様。仕方ありませんもの。ピクニックに行ったら帰国いたしますわ~。ツリアーヌ様! わたくし、お手伝いすることはございますか? わたくし、少しでもツリアーヌさまのお役に立ちたくて!!」
「それなら、早く帰国することだな」
「うるさいですわ! あなたなんてツリアーヌ様の夫なだけですもの! わたくしこそツリアーヌ様の弟子ですわよ!」
また喧嘩を始めたヤリアント様とメルティーヌ様。わたくし、いつの間にメルティーヌ様を弟子にしたのでしょうか? 余計なことを言うと揉めそうですから、黙っておきましょう。
「ボレアース国王陛下。メルティーヌ様はピクニックが終わり次第、帰国させますわ」
「迷惑をかけてすまない。よろしく頼んだ」
エステ王国では、第一王妃が産んだ王女と第二王妃が産んだ王子が継承権をめぐって争っています。エステ王国では、王女にも継承権があり、長子ほど優先されますが、第二王妃のご実家が国内最大派閥の公爵家であり、実際に国王になったことが多い王子でいらっしゃるとのことということで、国内冷戦状態にあります。国王陛下は状況を見ていて、まだ後継者を指名していません。
状況的に優位なのは王子と思いますが、実は王女の方が優秀なのです。
そこで、小国であるものの隣国である我が国が王女との友好を見せるとなると、混乱を極めるでしょう。その混乱は、王子には収められず、王女でしたら収められる。わたくしは、そう予想しております。わたくしの予想ではあるものの、新ミリュー王国みなは、同意してくださいました。ということで、王女殿下へのお手紙を認め、我が国特産の金と共に贈ります。
我が国は小さいものの、旧ミリュー王国の資源の大半を産出していたのです。資源国という意味では、近隣諸国が我が国には敵いませんわ。だからこそ、旧ミリュー王国は我がフェイジョア領を除いて各国に分割されたのですが……。
「ミルフレッツァ王女! 新ミリュー王国から、ミルフレッツァ王女へ使者の方がいらっしゃいました!」
「わたくしに? 何かしら……」
新ミリュー王国といえば、旧ミリュー王国の旧第一王子の婚約者であったツリアーヌ・フェイジョア。彼女は新ミリュー王国の王妃だわ。しかし、実際の新ミリュー王国立国の立役者は彼女であるし、権力者も彼女に違いないわ。
旧ミリュー王国の中枢から追い出す真似をした我が国への恨み……彼女はそれだけで行動に移す短略的な人物ではないはずよ。
「お会いします。支度してちょうだい」
「ミルフレッツァ・エステ第一王女へ、新ミリュー王国王妃であるツリアーヌ・フェイジョア様より贈り物とお手紙をお届けに参りました」
「贈り物……?」
「こちら、新ミリュー王国特産の金で作った黄金のティアラでございます」
「ティアラ……」
新ミリュー王国、いえ、ツリアーヌ・フェイジョアはわたくしを次期女王に就かせようとしているのかしら。しかし、彼女は今自国を整えることで手一杯のはずよ。なぜ我が国を混乱に陥れたいのかしら? ……それでも、女王の座に着くためにはこの手を掴まないわけにいかないわ。
「ありがたく頂戴いたします。今夜のパーティーでつけさせてもらうわ。ぜひあなたもご出席なさって?」
「ありがたく出席させていただきます」
手紙……内容が気になるところね。お父様もツリアーヌ・フェイジョアのことを一目置いていたはずよ。お父様にもこのことを報告しなければいけないわ。
さぁ、ツリアーヌ・フェイジョア。あなたを利用させてもらうわ。わたくしが女王の座についたときには、あなたがわたくしを支援した意図を明らかにさせてもらいますからね。覚悟していらっしゃい!
「ツリアーヌ様。無事、エステ王国は後継者争いが激化して混乱に陥ったようです。ツリアーヌ様の予想の通り、後継者はミルフレッツァ王女殿下が指名されるかと」
「ありがとう。あとは、ティモルト王国ね……って、メルティーヌ様!? 帰国なさったのではなくて?」
ヤリアント様と話し合いをしていたら突然現れたメルティーヌ様。
数週間前に帰国なさったはずのメルティーヌ様。なぜ我が国に戻っていたらしたのでしょう? というよりも先触れは……?
「わたくし、ツリアーヌ様に会いたくて父上の目を騙して抜け出してきてしまいましたわ! この国の兵には“ツリアーヌ様に頼まれた仕事を忘れていて”って言ったら入れていただきましたの!」
「あとで兵を叱っておくわ。メルティーヌ様。まずは、お父上にご報告なさってください。ご自身で」
メルティーヌ様を叱って、“通信の鏡”を起動させます。
「ツリアーヌ嬢……メルティーヌ! おぬし、また新ミリュー王国に迷惑をかけよって!」
「お父様! 今回は非公式訪問ですわ!」
「そう何度も訪問させてたまるか!」
「わたくし、ツリアーヌ様とピクニックに行きたかったのですもの!!」
ピクニック……。最近流行りの物語にピクニックに行く描写のあるものが……ありましたわね。メルティーヌ様はそれに影響されたのでしょう。
「では、メルティーヌ様。わたくしと一緒にピクニックに行ったら帰国なさるとお約束できますか?」
「……」
「メルティーヌ!」
「わかりましたわ~。お父様。仕方ありませんもの。ピクニックに行ったら帰国いたしますわ~。ツリアーヌ様! わたくし、お手伝いすることはございますか? わたくし、少しでもツリアーヌさまのお役に立ちたくて!!」
「それなら、早く帰国することだな」
「うるさいですわ! あなたなんてツリアーヌ様の夫なだけですもの! わたくしこそツリアーヌ様の弟子ですわよ!」
また喧嘩を始めたヤリアント様とメルティーヌ様。わたくし、いつの間にメルティーヌ様を弟子にしたのでしょうか? 余計なことを言うと揉めそうですから、黙っておきましょう。
「ボレアース国王陛下。メルティーヌ様はピクニックが終わり次第、帰国させますわ」
「迷惑をかけてすまない。よろしく頼んだ」
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