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21.クロウの暴露
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「盗み聞いたわけじゃないんだけど、テラスがパーティーでいろいろ言われているのを聞いちまったんだよ! ディラン様は他人との関わり方がわかんないんだよ! テラスがなんとかしてやってくれよ!! 俺はもうこんな空気は嫌なんだよぉ!!!」
突然のクロウの暴露に、テラスは手に持っていた書類をバサバサと落とした。
「え? クロウ様。実は私も使い人になってから、ミコ以外とろくに関わっておりません。前世の記憶なんてございませんし……」
「お前もコミュ障か!」
絶望したかのように、地面にひれ伏したクロウの肩をテラスは優しく叩く。
「解説さえしていただければ、自分なりに考えてみます」
「……ディラン様がこんなに他人に興味を持っているのを見るのははじめてなんだよ! テラスを傷付けないために、テラスと距離を取っていらっしゃるんだ!」
「つまり、単なる部下よりも大切に思ってくださっている、ということでしょうか?」
テラスの顔が嬉しそうに華やいでいることに、うつむいたクロウは気づかない。
「なんか面白そうな話、してるじゃん!」
そんな中、テラスの横に突然現れたミコがテラスをつつく。その隣にポーカーフェイスを浮かべた恋愛の神が突っ立っている。
「え!? ミコ!? 今日は出張の予定あったっけ?」
「休暇! あんな話聞いたら気になっちゃって、恋愛の神に連れてきてもらった!」
「あんな話! あ! ミコの気になる人の話も」
「あーーーー! ダメダメ! 二人きりの時って言ったじゃん……」
叫びながら、しゃがみ込んだミコは、頭を抱えて動かなくなってしまった。
「ミコ、ごめん……」
そんなミコに、テラスは真剣に謝罪した。
「なるほど。地獄の神は、テラスのことを避けているんですね」
頷きながら、恋愛の神は話を聞いている。
「恋愛の神なら、俺よりまともなアドバイスができるんじゃねーか!??」
嬉しそうに飛び上がったクロウの言葉に、恋愛の神は神妙な面持ちをする。
「確かに、僕は恋愛の神です。でも、僕自身は恋愛経験はありません! 女の子からのモテ方の研究しか、したことがありません!!」
「最低」
「ミコ、ひどい……」
「ミコ、恋愛の神が落ち込んじゃったから、撤回してあげて」
「撤回はしないけど、参考になることを言ったら尊敬する」
「人の話はよく聞くので、精一杯善処します。考える時間をください」
そう言った恋愛の神は、真剣に悩み始めた。
「……って、待って。私の気持ちってそんなにわかりやすいでしょうか!? なんで恋愛の神がディラン様への気持ちが恋だとわかっているの!?」
「ごめん、テラス。友達の話っていう相談は、よくある自分のことの相談だし、それ以前からテラスの気持ち、ダダ漏れだと思っていた」
とどめを刺したミコに、重ねて恋愛の神が滅多刺しにしていく。
「テラスたちは、わかりやすい方だと思うよ?」
「恋愛の神! 見てて面白いんだから、あんまりヒントを出しちゃだめです!」
ミコが恋愛の神の口を塞ぎながら、引っ張っていく。
「……俺は、今のテラスの言葉で理解したぞ。……働きにくいな」
「嘘!? 自爆!? ごめんなさい! 気持ちに封をします!」
「いや、そこまでは求めねーよ」
ミコに引きずられながら戻ってきた恋愛の神が、ふと思いついたように言った。
「地獄の神が忙しいと言って避けてくるのなら、テラスが地獄を大規模浄化して、暇にしてしまったらいいんじゃないか?」
「「「それだ!」」です!」
「ふっふっふ。天界で売っていた魔力増強剤。これさえあれば、安全に大規模浄化が可能だよ」
ミコに頭をなでられてご満悦そうな恋愛の神は、小瓶を掲げた。
「飲んでみます!……浄化!」
地獄の淀みはなくなった。
残念なことに、この場には恋愛に詳しい者は誰もいなかったのだった。
突然のクロウの暴露に、テラスは手に持っていた書類をバサバサと落とした。
「え? クロウ様。実は私も使い人になってから、ミコ以外とろくに関わっておりません。前世の記憶なんてございませんし……」
「お前もコミュ障か!」
絶望したかのように、地面にひれ伏したクロウの肩をテラスは優しく叩く。
「解説さえしていただければ、自分なりに考えてみます」
「……ディラン様がこんなに他人に興味を持っているのを見るのははじめてなんだよ! テラスを傷付けないために、テラスと距離を取っていらっしゃるんだ!」
「つまり、単なる部下よりも大切に思ってくださっている、ということでしょうか?」
テラスの顔が嬉しそうに華やいでいることに、うつむいたクロウは気づかない。
「なんか面白そうな話、してるじゃん!」
そんな中、テラスの横に突然現れたミコがテラスをつつく。その隣にポーカーフェイスを浮かべた恋愛の神が突っ立っている。
「え!? ミコ!? 今日は出張の予定あったっけ?」
「休暇! あんな話聞いたら気になっちゃって、恋愛の神に連れてきてもらった!」
「あんな話! あ! ミコの気になる人の話も」
「あーーーー! ダメダメ! 二人きりの時って言ったじゃん……」
叫びながら、しゃがみ込んだミコは、頭を抱えて動かなくなってしまった。
「ミコ、ごめん……」
そんなミコに、テラスは真剣に謝罪した。
「なるほど。地獄の神は、テラスのことを避けているんですね」
頷きながら、恋愛の神は話を聞いている。
「恋愛の神なら、俺よりまともなアドバイスができるんじゃねーか!??」
嬉しそうに飛び上がったクロウの言葉に、恋愛の神は神妙な面持ちをする。
「確かに、僕は恋愛の神です。でも、僕自身は恋愛経験はありません! 女の子からのモテ方の研究しか、したことがありません!!」
「最低」
「ミコ、ひどい……」
「ミコ、恋愛の神が落ち込んじゃったから、撤回してあげて」
「撤回はしないけど、参考になることを言ったら尊敬する」
「人の話はよく聞くので、精一杯善処します。考える時間をください」
そう言った恋愛の神は、真剣に悩み始めた。
「……って、待って。私の気持ちってそんなにわかりやすいでしょうか!? なんで恋愛の神がディラン様への気持ちが恋だとわかっているの!?」
「ごめん、テラス。友達の話っていう相談は、よくある自分のことの相談だし、それ以前からテラスの気持ち、ダダ漏れだと思っていた」
とどめを刺したミコに、重ねて恋愛の神が滅多刺しにしていく。
「テラスたちは、わかりやすい方だと思うよ?」
「恋愛の神! 見てて面白いんだから、あんまりヒントを出しちゃだめです!」
ミコが恋愛の神の口を塞ぎながら、引っ張っていく。
「……俺は、今のテラスの言葉で理解したぞ。……働きにくいな」
「嘘!? 自爆!? ごめんなさい! 気持ちに封をします!」
「いや、そこまでは求めねーよ」
ミコに引きずられながら戻ってきた恋愛の神が、ふと思いついたように言った。
「地獄の神が忙しいと言って避けてくるのなら、テラスが地獄を大規模浄化して、暇にしてしまったらいいんじゃないか?」
「「「それだ!」」です!」
「ふっふっふ。天界で売っていた魔力増強剤。これさえあれば、安全に大規模浄化が可能だよ」
ミコに頭をなでられてご満悦そうな恋愛の神は、小瓶を掲げた。
「飲んでみます!……浄化!」
地獄の淀みはなくなった。
残念なことに、この場には恋愛に詳しい者は誰もいなかったのだった。
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