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1.採用理由
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「ちょっとー! 早くマッサージしにきてー!」
「はい、美容の神様! お待たせして申し訳ありませんが、この仕事だけ終わらせたらすぐに伺います!」
仕事中と思えない注文に、ハキハキと返事をする少女が一人。そんな彼女は、神の使い人だ。名前はテラス。
いわゆる死後の世界で、テラスは“神の使い人”として働いている。見た目は普通のお役所だが。
動物である“神の使い”の事務作業を“神の使い人”が一手に引き受けている。
「おい、テラス! これやっとけ」
「わかりました!」
テラスに仕事を押し付けながら、どすどすと歩く神の使いたちは、神託や神罰という形で数字を上げている。そのため、かなり優遇されている。一方で、数字にならない仕事をしている、“神の使い人”は、使い倒してなんぼという扱いを受けている毎日だ。
社畜として使えそう、マッサージ機代わりに、という採用理由のテラス以外の使い人は、“見た目採用”と言われているのが、その最たる例であろう。
なぜテラスが神の使い人になったのか、採用に至った経緯はこうであった。
死者の審判を待つ死者たちの列で、素直に順番を待っているテラス。
待ちくたびれたと騒いだり、勝手に列から外れたり者もいる。他にも、審判に怯えてパニックになる人も多い中、大人しく、ただただずっと並んでいるテラスの姿は神たちの目を引いた。
「あの子、すごい素直に待ってるよ? 言うことをよく聞きそうじゃない?」
「どれどれ? あの子か、いいね! 社畜体質っぽいし!」
「待って、あの子、浄化魔法持ってない? マッサージ代わりによさそう……」
「……え、今、後ろから来た人に譲ってって頼まれて、断らないよ? その癖、自分の後ろの人たちのヘイトも管理できてる……仕事できそう」
「どう思う?」
「神の使い人にすっごく欲しい」
「わかる、死後なら過労死なんてありえないし、あのタイプ、いいよね」
「素直に社畜になってくれそうだし、本当魅力的」
「私、マッサージかわりに浄化してもらおっと」
このようにして、神々は、テラスを神の使い人として酷使しようと決めたのであった。
本来輪廻転生をして、異世界転生や人生のやり直し、はたまた動物になったり、人として生まれ変わったり......テラスだって人生を謳歌することができたはずなのだ。
しかし、そんなこんなでテラスは神の使い人に採用されてしまった。神の使い人は、激務だった。その上、神々にも神の使いである動物たちにも仕事を押し付けられる。
ミスは押し付けられ、成果は取り上げられる。なまじ、仕事ができるせいでテラスに押し付けられる業務量は異常と言っても過言でない。それでも、テラスは文句も言わず素直に働いていた。
「テラス、こっちの仕事も頼んだわよー?」
「え!? それって……」
一部の神の使い人たちも、テラスに仕事を押し付けることがあるくらい、テラスは基本的にほとんどの同僚に舐められていた。
「まぁ、言い返して揉めるよりも、私がやった方が早いか……」
理不尽、という思いを飲み込みながら、テラスは働くのであった。
「はい、美容の神様! お待たせして申し訳ありませんが、この仕事だけ終わらせたらすぐに伺います!」
仕事中と思えない注文に、ハキハキと返事をする少女が一人。そんな彼女は、神の使い人だ。名前はテラス。
いわゆる死後の世界で、テラスは“神の使い人”として働いている。見た目は普通のお役所だが。
動物である“神の使い”の事務作業を“神の使い人”が一手に引き受けている。
「おい、テラス! これやっとけ」
「わかりました!」
テラスに仕事を押し付けながら、どすどすと歩く神の使いたちは、神託や神罰という形で数字を上げている。そのため、かなり優遇されている。一方で、数字にならない仕事をしている、“神の使い人”は、使い倒してなんぼという扱いを受けている毎日だ。
社畜として使えそう、マッサージ機代わりに、という採用理由のテラス以外の使い人は、“見た目採用”と言われているのが、その最たる例であろう。
なぜテラスが神の使い人になったのか、採用に至った経緯はこうであった。
死者の審判を待つ死者たちの列で、素直に順番を待っているテラス。
待ちくたびれたと騒いだり、勝手に列から外れたり者もいる。他にも、審判に怯えてパニックになる人も多い中、大人しく、ただただずっと並んでいるテラスの姿は神たちの目を引いた。
「あの子、すごい素直に待ってるよ? 言うことをよく聞きそうじゃない?」
「どれどれ? あの子か、いいね! 社畜体質っぽいし!」
「待って、あの子、浄化魔法持ってない? マッサージ代わりによさそう……」
「……え、今、後ろから来た人に譲ってって頼まれて、断らないよ? その癖、自分の後ろの人たちのヘイトも管理できてる……仕事できそう」
「どう思う?」
「神の使い人にすっごく欲しい」
「わかる、死後なら過労死なんてありえないし、あのタイプ、いいよね」
「素直に社畜になってくれそうだし、本当魅力的」
「私、マッサージかわりに浄化してもらおっと」
このようにして、神々は、テラスを神の使い人として酷使しようと決めたのであった。
本来輪廻転生をして、異世界転生や人生のやり直し、はたまた動物になったり、人として生まれ変わったり......テラスだって人生を謳歌することができたはずなのだ。
しかし、そんなこんなでテラスは神の使い人に採用されてしまった。神の使い人は、激務だった。その上、神々にも神の使いである動物たちにも仕事を押し付けられる。
ミスは押し付けられ、成果は取り上げられる。なまじ、仕事ができるせいでテラスに押し付けられる業務量は異常と言っても過言でない。それでも、テラスは文句も言わず素直に働いていた。
「テラス、こっちの仕事も頼んだわよー?」
「え!? それって……」
一部の神の使い人たちも、テラスに仕事を押し付けることがあるくらい、テラスは基本的にほとんどの同僚に舐められていた。
「まぁ、言い返して揉めるよりも、私がやった方が早いか……」
理不尽、という思いを飲み込みながら、テラスは働くのであった。
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