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第一部 第二章

第5話 情報と反撃

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 〔デイ・ノルド王国〕首都 〔ハルマ―〕城下町 クリスタ家

 僕とオルティシアとセドイスは、エマのお招きを受けクリスタ家の中にお邪魔をした。ダンテは、僕たちよりも先に入ると「服を着替えてくると」言って自分の部屋がある2階へと消えていった。
僕たちは、エマの案内でリビングに通され、ソファーで少し待つことになった。

「ダンテ、怒っているのかな? ちゃんと名乗らなかったから。」

 僕は、2階に上がってしまったダンテに対して少し罪悪感持っていた、しかしそこへエマがお茶とお茶請けのお菓子を持ってきてこう言って来た。

「エギル殿下、お茶をお持ちいたしました。それと罪悪感を持たれることはありませんよ。」

 エマが、言った意味が分からず僕は、こう聞き返した。

「だけど、騙したことになるよね。友達に対して。」

 この答えにエマは、こう諭してきた。

「殿下、嘘をつかれたことを後悔し反省されことは、非常に良い事でございます。ただ王族の方々を、お守りするために偽名は存在しているのでございます。そしてその事が、お友達を守ることにも繋がるのです。それは重々ご承知くださいます様、臣下を代表し申し上げます。」

 僕は、エマの言葉を聞いて偽名を名乗ることの意味を改めて痛感したのであった。そんな話をしている時、リビングの扉が開きダンテが、入室してきた。
僕は、ソファーから立ち上がり、ダンテの前に達と頭を下げた。

「ごめん、ダンテ。嘘をついて。」

 するとダンテは、手を差し出してきてこう言った。

「初めまして。俺は、ダンテ・フォン・クリスタ。親しい人たちからは、ダンテって呼ばれる。よろしく。」

 僕は、その言葉を聞いて顔を上げ、手を差し出し、こう言った。

「初めまして。僕は、エギル・フォン=パラン=ノルド。親しい人たちからは、エギルと呼ばれる。こちらこそ、よろしく。」

 僕とダンテは、お互いが差し出した手同士を握り握手をすると耐えきれずに笑ってしまい、しばらく二人で悶絶をしてしまったのであった。
その間エマたちは、微笑ましいモノを見ている様な状態で、お茶を楽しんでいたのであった。

 ようやく悶絶から解放された僕たちもエマが入れてくれたお茶を飲み、話をしていると、先ほど僕が裏路地で見たことが気になりダンテに質問をした。

「ダンテ、先の貴族の子息たちは、なんで君を虐めていたの?」

 するとダンテは、少し困った顔をすると事のあらましを説明してくれた。

 ダンテの話によると彼らからの嫌がらせが始まったのは建国祭の2か月前からだという、その原因として考えられるのが、ダンテの父親であり、エマの夫でもある、エトス・フォン・クリスタ卿であるというのだ。

「待って、クリスタ卿が原因って、どう事?」

 僕もクリスタ卿は知っている、彼は近衛師団に所属しており、父上の護衛を専任で行っている第一近衛騎士団の団員である。
その実直さ真面目さに加え戦闘力に秀でており更に後方(軍隊が戦う体制を維持するために行う事)について師団の中ではトップレベルと言われ、その事により3か月前から軍務省に出向し軍務卿を支える秘書官を務めている人物である。
そんな彼が、原因だと言われてもピンと来ないのであった。
僕が怪訝そうな顔をしていたのでダンテは、こう言って来た。

「正確には父さんが、とある貴族たちの頼みを断ったためこんな事になっているんだ。」

 その言葉を聞いたセドイスが、僕にこんな事を教えてくれた。

「殿下、思い出しのですが、1ヶ月前にクリスタ卿と食事をする機会がございまして、その食事の席でとある伯爵から自分たちが贔屓にしている商人を軍の仕入れ先に加えて欲しいと依頼されたが断ったと、彼から聞きました。」

 この事を聞いて僕は、事のあらましが分かったのであった。クリスタ卿は、とある伯爵に便宜を図るように依頼をされたが、これを拒否、それを不服と思った伯爵は、卿の弱みであると考えられる子供を脅すことにより、卿に無理やりにでも便宜を図らせたいのだと言う事が。
そしてクリスタ卿の息子であるダンテを脅す役を自分の息子とその取り巻き連中に依頼をして実行していたのであった。

「どこの伯爵か知らないけど、王国貴族の恥さらしが、許さん。」

 僕は、怒りを露わにしたが、その伯爵がどういった人物で、何処の家なのかもわかっていないうえに、今まで語られたのは状況証拠に過ぎないのであった。
しかし、野放しにはできない。すると僕の脳裏にある事が閃いた。
それは、父上に確実に訴えることが出来、さらに証拠も揃うという一石二鳥に大逆転の場所であった。

「先生たちにも協力してもらって、準備を進めよう、反撃のためのね。」

 僕は、そう言うと、オルティシアに王宮への使いを頼み、セドイスにはダンテの家の警備の手配を頼んだのであった。

「ダンテ、少しの間、窮屈な思いをするかも知れないけど、我慢してくれよ。」

「うん、分かった。何するつまりだ、エギル。」

 ダンテは、そう聞いてきた。そして僕は、こう答えた。

「大掃除さ、悪い奴らのね。」

 そう言うと僕は、エマに対してお茶のお礼を言い、クリスタ家を後にした。そして、そのまま王城へと戻ったのであった。
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