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出会い編
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「見ろ! あの速さ! あれこそ愛の証だ!!」
「……縛り首にしたいくらい愛されているってことだな、レオン」
「そうだとも。まさにデンジャラス・イン・ラブラブだ」
レオンは色気たっぷりにウィンクする。マルコはこりゃ駄目だというように、後ろにいるヴァイオに注意した。
「やばくなったら、いつでも船ごとどこかへ飛ばしてくれ」
「へいさー」
サンタ・マリア海賊団お抱え魔術師ヴァイオは、凛々しい少年の姿できりっと答えた。昨日は魔術『立体三次元』でブロンド美女の姿をして、女に飢えている仲間からグラビア代として小銭をふんだくっていたが、将来のためのアルバイトは終わったようだ。
「爺さん、元気かな? しばらく会っていないから、心配になってきた」
レオンは無事な右目だけを器用に細める。左目は一文字の傷痕があって、まったく開かない。
「バデーリ提督が聞いたら、泣きながらロープを首に巻いてくれるぞ、レオン」
「そうだな、爺さんのために俺も一肌脱いで、一回くらい死んでやるかな」
やる気満々で両腕を振り回す。一度も死んだことがないくせにとマルコはぼやきながら、とりあえず甲板にいる仲間たちへ注意した。
「おい、おめーら。適当に相手してやれよ。俺たちは問題を起こさない海賊団として、アル&マーニーともブランド契約しているんだからな。くれぐれも海賊になりたい子供の夢を壊すなよー」
「へいさー」
海賊たちはまるで遠足へ行くような気軽さで飛びあがる。サンタ・マリア海賊団は過去に新大陸で発行されている雑誌「フォーブスブス」で世界のセレブ一〇〇にも選ばれたことがあり、旧大陸の著名なファッションデザイナーであるアル&マーニーの専属モデル軍団としても有名である。
「よーし、俺も燃えてきたぜ! 爺さん! 今から会いに行くからな!」
レオンはへりの上にのりあがると、どんどん近づいてくるロイヤル・ネルソン号へ盛大な投げキッスをする。その後ろでイエーイイエーイと肩を組んで踊りだす仲間たちに、真面目な副船長は、半分白けながら一言注意した。
「おめーら、一応戦闘準備くらいしろ……」
ほどなく戦いは始まった。
まずロイヤル・ネルソン号がサンタ・マリア号へ向けて至近距離から大砲を撃ち込んだ。この大砲は新大陸のマウンテンロッキード社製のもので、去年古代都市カ・タールで開催された世界武器屋ショーで紹介された新商品である。従来の大砲に命中率二〇〇パーセントの魔術をインプットし、宝くじより絶対に当たる! というキャッチフレーズとともに現在世界中で売り出されている。そのキャッチフレーズどおりに、派手に撃ち込んだが、サンタ・マリア号にはかすりもしなかった。
サンタ・マリア号のマストの上には、推定年齢不詳の魔術師ヴァイオがいた。今は美少年の姿をしているヴァイオは、めんどくさいな~と欠伸をしながら、魔術師のマストアイテムである魔術書『仮想空間』をポケットから取り出して、密林の書を開くと、きりりっと呪文を唱えた。
「アレクサーラ! 飛んでくる弾丸をつぶせ!」
すると、その本がピカーッと光り、にょきにょきと巨人族の腕が本のページから浮き出ると、弾丸を気持ちよく手で押し潰していった。
宝くじより絶対に当たるはずの弾丸が当たらないどころか簡単に潰されるのを目撃したロイヤル・ネルソン号は、若き海軍提督の怒りの号令もと、突撃アタックを決行した。二つの大型帆船が波しぶきを上げてぶつかりあう。
海賊たちと海軍兵士たちはそれぞれ剣や銃を手にすると、互いに雄叫びをあげながら相手帆船に乗り込んでいった。
「臆するな! 海賊どもを打ち倒せ!!」
バスターはそう鼓舞しながら、かかってきた海賊の一人をなぎ倒した。手には女王陛下より賜った円卓の剣の一つランスロットがある。
「戦え!!」
そう叫びながら、バスターは周囲に目を散らしていた。探しているのは、勿論、サンタ・マリア海賊団の船長である。
どこにいると目を皿のようにしながら、バスターは憎い敵を探し回っていた。脳裏に甦るのは、同じく円卓の剣の一つであるガラハッドをまんまと盗み出し、その後なんと「Hello ОK」誌の独占インタビューを受けていたレオンの記事である。七つの海にも知れ渡る恐るべきパパラッチーズの一角を担う「Hello ОK」誌は独自ルートで隻眼のレオンに接触、独占インタビューに成功すると、特集を組んでその詳細な活動を記していた。
バスターはまだロイヤル・ネルソン号に乗船する前であったが、その記事を読んであやうく憤死するところであった。盗まれた円卓の剣は、イングレス女王国の国宝で、遥かに遠い昔に当時の女王グウィネスに仕えていた円卓の騎士たちが帯びていた剣の総称である。ガラハッドは女王の弟公が所有していたが、愉快な弟公が一緒にいたジェントルマンと熱いティータイムをしている時に、堂々と盗み出したと告白。海賊家業でいい仕事ができたと笑顔でウィンクするレオンの写真を睨みつけながら、世界の果てまでも追いかけてやると誓ったバスターであった。
――あのふざけた連中を絶対に縛り首にしてみせる!
日頃の清楚で品格のある顔立ちに血圧を上昇させて、鼻息荒く剣を振り回す。
「……縛り首にしたいくらい愛されているってことだな、レオン」
「そうだとも。まさにデンジャラス・イン・ラブラブだ」
レオンは色気たっぷりにウィンクする。マルコはこりゃ駄目だというように、後ろにいるヴァイオに注意した。
「やばくなったら、いつでも船ごとどこかへ飛ばしてくれ」
「へいさー」
サンタ・マリア海賊団お抱え魔術師ヴァイオは、凛々しい少年の姿できりっと答えた。昨日は魔術『立体三次元』でブロンド美女の姿をして、女に飢えている仲間からグラビア代として小銭をふんだくっていたが、将来のためのアルバイトは終わったようだ。
「爺さん、元気かな? しばらく会っていないから、心配になってきた」
レオンは無事な右目だけを器用に細める。左目は一文字の傷痕があって、まったく開かない。
「バデーリ提督が聞いたら、泣きながらロープを首に巻いてくれるぞ、レオン」
「そうだな、爺さんのために俺も一肌脱いで、一回くらい死んでやるかな」
やる気満々で両腕を振り回す。一度も死んだことがないくせにとマルコはぼやきながら、とりあえず甲板にいる仲間たちへ注意した。
「おい、おめーら。適当に相手してやれよ。俺たちは問題を起こさない海賊団として、アル&マーニーともブランド契約しているんだからな。くれぐれも海賊になりたい子供の夢を壊すなよー」
「へいさー」
海賊たちはまるで遠足へ行くような気軽さで飛びあがる。サンタ・マリア海賊団は過去に新大陸で発行されている雑誌「フォーブスブス」で世界のセレブ一〇〇にも選ばれたことがあり、旧大陸の著名なファッションデザイナーであるアル&マーニーの専属モデル軍団としても有名である。
「よーし、俺も燃えてきたぜ! 爺さん! 今から会いに行くからな!」
レオンはへりの上にのりあがると、どんどん近づいてくるロイヤル・ネルソン号へ盛大な投げキッスをする。その後ろでイエーイイエーイと肩を組んで踊りだす仲間たちに、真面目な副船長は、半分白けながら一言注意した。
「おめーら、一応戦闘準備くらいしろ……」
ほどなく戦いは始まった。
まずロイヤル・ネルソン号がサンタ・マリア号へ向けて至近距離から大砲を撃ち込んだ。この大砲は新大陸のマウンテンロッキード社製のもので、去年古代都市カ・タールで開催された世界武器屋ショーで紹介された新商品である。従来の大砲に命中率二〇〇パーセントの魔術をインプットし、宝くじより絶対に当たる! というキャッチフレーズとともに現在世界中で売り出されている。そのキャッチフレーズどおりに、派手に撃ち込んだが、サンタ・マリア号にはかすりもしなかった。
サンタ・マリア号のマストの上には、推定年齢不詳の魔術師ヴァイオがいた。今は美少年の姿をしているヴァイオは、めんどくさいな~と欠伸をしながら、魔術師のマストアイテムである魔術書『仮想空間』をポケットから取り出して、密林の書を開くと、きりりっと呪文を唱えた。
「アレクサーラ! 飛んでくる弾丸をつぶせ!」
すると、その本がピカーッと光り、にょきにょきと巨人族の腕が本のページから浮き出ると、弾丸を気持ちよく手で押し潰していった。
宝くじより絶対に当たるはずの弾丸が当たらないどころか簡単に潰されるのを目撃したロイヤル・ネルソン号は、若き海軍提督の怒りの号令もと、突撃アタックを決行した。二つの大型帆船が波しぶきを上げてぶつかりあう。
海賊たちと海軍兵士たちはそれぞれ剣や銃を手にすると、互いに雄叫びをあげながら相手帆船に乗り込んでいった。
「臆するな! 海賊どもを打ち倒せ!!」
バスターはそう鼓舞しながら、かかってきた海賊の一人をなぎ倒した。手には女王陛下より賜った円卓の剣の一つランスロットがある。
「戦え!!」
そう叫びながら、バスターは周囲に目を散らしていた。探しているのは、勿論、サンタ・マリア海賊団の船長である。
どこにいると目を皿のようにしながら、バスターは憎い敵を探し回っていた。脳裏に甦るのは、同じく円卓の剣の一つであるガラハッドをまんまと盗み出し、その後なんと「Hello ОK」誌の独占インタビューを受けていたレオンの記事である。七つの海にも知れ渡る恐るべきパパラッチーズの一角を担う「Hello ОK」誌は独自ルートで隻眼のレオンに接触、独占インタビューに成功すると、特集を組んでその詳細な活動を記していた。
バスターはまだロイヤル・ネルソン号に乗船する前であったが、その記事を読んであやうく憤死するところであった。盗まれた円卓の剣は、イングレス女王国の国宝で、遥かに遠い昔に当時の女王グウィネスに仕えていた円卓の騎士たちが帯びていた剣の総称である。ガラハッドは女王の弟公が所有していたが、愉快な弟公が一緒にいたジェントルマンと熱いティータイムをしている時に、堂々と盗み出したと告白。海賊家業でいい仕事ができたと笑顔でウィンクするレオンの写真を睨みつけながら、世界の果てまでも追いかけてやると誓ったバスターであった。
――あのふざけた連中を絶対に縛り首にしてみせる!
日頃の清楚で品格のある顔立ちに血圧を上昇させて、鼻息荒く剣を振り回す。
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