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R18(後半)

11.誕生日プレゼント買いに行こう!(※)

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 翌朝、杏里はキングサイズベッドの端で目を覚ました。

 瞳を開けて最初に飛び込んできたのは、全面窓から見える都内の絶景。
 あ、人生詰んだ。この高さから落ちたら死ぬレベルじゃないよね?また転生かな?

 そう思って叫びそうになったのを杏里は手を口に当てて必死で抑える。

 眼下に広がる景色にゾクゾクと全身に鳥肌が立ち、杏里は自分の身体を見て硬直した。
 全裸。そう、まごう事なき全裸!だ。

 そしてモゾモゾと隣で蠢いた何かが、自分の胸をやわやわと触って······。

「っひぃ!!!」

 隣を見て、杏里は現実に引き戻された。

 そうだ、ばかばか。忘れてた、アホすぎる!
 重要な事!昨日喪失した処女!!

「セバスチャン······」

 ここは前世で私の執事で初恋の相手だったセバスチャンの家、都内の超高層マンションの最上階。
 そのセバスに処女を奪われて······と考えて、杏里は全身に襲う鈍痛に蹲った。

「待って······何これ、動けない······腰いたい、なに······」

 その時、隣から声が聞こえて、杏里は恐る恐るそちらを振り向いた。

「アンリエッタ様、おはようございます」
「セ、セ、セバス······」
「はい?ああ、昨日は少し無理をさせてしまいましたので······。でも大丈夫です。私は仕事も辞めておりますし、お嬢様のお世話なら全てして差し上げられますよ」

 寝起きとは思えない程清々しく、大輪の花を咲かせた様な笑みで微笑んだセバスが身体を起こしてベッドの上に腰掛けて。
 杏里はその彼の身体に釘付けになった。

 イケメンだったのは顔だけじゃなく、やっぱり身体もだったのね······。
 昨夜も見た気はするけど、明るい所で見ると、やっぱり凄い筋肉······。

「ふふっ、触って下さい?私の身体はお嬢様の物ですから」

 その時、むくっと立ち上がったナニカがシーツから顔を覗かせて、杏里はその部分を凝視した。

「そ、そ、それ······ねえ、セバス、ちょっと、隠して!っていうか、なんでそんなに元気なの?!そういうものなの?それともそれが”絶倫”とかいうモノなのッ!!?」

 顔を真っ赤にして両手で顔を覆った杏里を見て、セバスは楽しそうに笑う。

「確かに昨日はずっとお付き合い頂きましたからね。歯止めが効かず、申し訳ありませんでした。ですが、そうですね······絶倫だと、前世では言われた事がありますが······。今世でもそうかは分かり兼ねます」

 少し困ったような表情をして顎に手をあて首を傾げたセバスは、直ぐに妖艶な笑みを口元に浮かべた。

「なにせ、童貞、でしたので」



「な~にが、”童貞でしたので”、よ!あんの絶倫執事っ!無理させました······とか、朝方気を失うまで相手をさせられた処女の身にもなって欲しいんですけど!!」

 杏里は、ズキズキと痛む腰を押さえながら大学の校門をくぐった。
 
 車で送迎をする!と張り切って校門まで来たセバスチャンが真っ黒のスポーツカーの隣に立ちながら手をヒラヒラと振って、周りの女子学生達がキャアキャアと黄色い声を上げていたのを思い出して、杏里は溜め息をつく。

「はぁ······疲れた。本当に疲れた······」
「あ、杏里!一緒にお昼たべよ~······って、あっれ~?これは、もしかして!祝、しょにょ······そーひふんはな!?」

 杏里は”処女”ネタを講堂で言いかけた親友、朋美の口を慌てて塞いだ。

「朋美、今日はそれ、聞きたくないのっ!」
「え?なんで、どうしたの?腰痛い?身体ダル重系?」
「私、なんか顔に書いてる?」

 杏里は口を開けて朋美を凝視する。
 そんな杏里を見て、朋美は笑った。

「え、だから、朋美さんは恋愛系経験、杏里よりは大分豊富だよおっ?!」
「はぁ······」

 盛大な溜め息をついた杏里を見て、朋美は彼女の顔を覗き込んだ。

「処女喪失はできたけど、思ったより痛かったし、あんなに求められるなんて知らなかったし、ましてや彼が絶倫とか知らなかったんですけど!!って所?」

 その言葉に、杏里は顔を上げると机に突っ伏す。

「もう、無理~······」
「杏里さあ、真面目なのは良い事だけど、こういう日はサボるにつきるよ?とりあえず、今日はこれから私とデートしない?」

「朋美~、マズいよ、進級できなくなったら困る」
「え?アンタは困らないでしょ?セバス様がいるんだし」

 その言葉に杏里は顔だけ上げるとジトッとした目で朋美を見つめる。

「······朋美、彼の事、どこまで知ってるの?」
「えっへん!良くぞ聞いてくれたね!ファンクラブの会員は結構情報通なの。超大手外資企業の息子って事は分かってるわ?だから、杏里の将来は安泰じゃない?付き合ったんでしょう?」

「······まぁ、」

 安泰······なのだろうか?まあ、結婚を前提にお付き合いをしているわけだから······そうなのかもしれないけど······。だけど、セバスと一緒に居たいのはお金とかそういう問題じゃないの。
 だって私はずっと前から、彼の事が好きだった······から。

「あんなイケメン彼氏も出来て、処女も喪失できて、でもじゃあ、何にそんなに悩んでるわけ?」
「けど······ずっと一緒にいれるかは分からないでしょ?」

 また前世みたいにいきなり病気で死ぬかもしれないし、セバスが自分に愛想を尽かしていなくなってしまうかもしれない。
 確かに前よりは深い繋がりは持つことが出来てるのかも知れないけど。······でも、不安なんだもん。

 口を開けばポツリポツリと昨日の話や今後の不安が零れおちる。
 朋美はセバスが好きだったわけだし、きっとこんな話聞きたくないに決まっているのに······だけど朋美は嫉妬する事もなく全てを親身に聞いてくれた。

 やっぱり持つべきものは色々と相談に乗ってくれる友だ。
 そう杏里が思って感謝を伝えようとしたその時、朋美は杏里の目を真っすぐ見て口を開いた。

「朋ちゃん、いつもありが「ねえ、杏里さ、玩具とか持ってないの?」

 杏里はその発せられた言葉を脳内で繰り返し、そして一言こう答える。

「はい?」

「え、別にボードゲームとかの話じゃないよ?ほら、大人の、ローターとかバイブとかさ······「っねえ!朋美、こんな学び舎のど真ん中でやめてってえ!」

 クスクスと悪気もなく笑った朋美は食堂のポテトを頬張りながら頬ずえをついた。

「杏里が気持ちよくなれば、行為も絶対に楽しくなると思うのよねえ。そうすればセバス様も喜んでくれるでしょ?」
「セバスが······喜ぶ?」
「うんうん、殿方を喜ばせるのも姫の努めですよ!ってね。うん、じゃあ、それにしよう?誕生日プレゼント!」

 ニカッと笑った朋美を杏里はぼうっと見つめる。

「ほら、行くよ、いまから!」
「え?!ちょっと、今から?!嘘でしょ?!」

 杏里は朋美に腕を掴まれ、急かされるがままにカフェラテを飲み干した。
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