チート狩り

京谷 榊

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第九章 水没した世界

九十七話 新領主の反撃

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 グルウクウスからくる反撃でルガたちは吹き飛ばされてしまった。ユウ、エフィ、タイカ、リアの四人は海中へ。ジョセフ、ヤスケ、ルガ、ロスたちのもう半分は砂場へ叩きつけられるように吹き飛ばされた。
 八人はいずれも負傷し、特に砂場に落ちた四人はかなりの重体だった。ルガとジョセフはなんとか受身をとり怪我を最小限に抑えられたが、ふとロスとヤスケの方を見ると大量出血して倒れていた。急いで近くに寄り状態を診るとほぼ全身の骨が骨折しており、命の危機に瀕していた。
「ロス!ヤスケ!…ルガ!急いで応急処置手伝ってくれ!」
「悪いが今はそれどころじゃない!その代わりにこれを使ってくれ」
 ルガが懐のポケットから瓶に入った液体を投げ渡す。ジョセフはその受け取った瓶の容器とそこに貼り付けてあった表示を見ると驚愕しルガの方を振り向いた。
「…サンキュー!これだけの薬があれば応急処置くらいはできそうだ」
「おう!こっちは任せろ!」

 しかしその頃、海の中へ落とされた女子たち四人はいずれも気を失っていた。このままではルガとグルウクウスの戦いに巻き込まう。しかし、そんな彼女たちに馴染みのある者たちが助けてくれた。
 エフィの場合は、つい最近までモデル業をやっていた時にマネージャーを勤めていたスウェイが彼女を助けた。
「エフィさん大丈夫ですか!」
 ユウの場合は、タートル州の丘で見つけたお洋服屋さんの店主コパに、リアの場合はスーパーイーターズの三人に。タイカはマークによって助けられた。

 そしてルガはと言うと一万メートル以上の体格を持つグルウクウス領主と一人で戦っていた。ジョセフはヤスケとロスを助けるためにここから遠く離れた場所にある病院に運んでいるところだった。そのため、ルガはジョセフが帰ってくるまで一人で対処しなければならなかった。
 ルガは暴れ回るグルウクウスの頭部に再びのぼり、もう一度一撃を喰らわそうとする。だが、彼も彼で抵抗するためなかなか一撃が当てられなかった。ルガがグルウクウスの頭部にのぼってもグルウクウスは身をくねらせ、ルガをふるい落とそうとする。しかし、ルガも抵抗しヒレにしがみついて振り落とされないように捕まっている。
ギュオオオオオオオオオ‼︎
 そして、ヒレの一つを引き裂こうと鋭い刃物を突き立てるがなかなか効かない。その間にグルウクウスは地面へ急降下し砂場に体当たりし、ルガがしがみついているヒレの部分を豪快に擦り付ける。その時の衝撃でまるで地震のような揺れが生じる。
 しかし、これで音を上げないのがルガだ。グルウクウスの体から離れてしまったが、グルウクウスの巨体と地面に押し潰されることなく回避していた。
「チクショウ、このままじゃらちがあかねぇな」
 ルガは周りにジョセフたちがいないことを確認すると、雀の涙ほどだが元々の力を解放する。
「さてと、肩をつけるぞグルウクウス」
 そう言いながら、彼はフードを脱ぎ銀色の髪をなびかせて両手で業を作り出す。そして、ルガとグルウクウスが向かい合い、ルガはグルウクウスの姿を見てグルウクウスはルガの仮面を見ていた。
「地獄の果てまで、遊びに行こうぜ」
ギュオオオオオオオオオ‼︎
 こうして、ルガとグルウクウスによる最終戦が始まった。ルガはなるべくジョセフが帰ってくる前に肩をつけようと思い、力を解放し戦っていた。始めに攻撃を仕掛けたのはグルウクウスで、最初から大技の氷属性の光線を放ってきた。ルガもそれに対応し、周囲に被害が出ぬようその光線を右手を前に出して吸収するように受け止める。
「さぁ、どうする?俺に同じ手は二度と効かないぞ」
 次にルガは両手を大きく広げ、空の広域に黒雲を作り出す。その雲は次第に稲妻を帯びてグルウクウスに集中落雷する。
天網恢々
 しかし、ダメージは今ひとつのようだ。グルウクウスにさらに大きなダメージを与えるにはやはりさらに大きな衝撃でなければならない。だが、そう考えているうちに反撃が来る。しかも、これまでとは桁違いの大きな反撃が。
 グルウクウスが上を向くと、ヒレをホバリングするように空中を仰ぎ海水を浮かび上がらせる。浮かび上がってきた海水は龍が空を飛ぶようにグルウクウスの体の周りを回る。
 たった今グルウクウスが根こそぎ奪っていった海水は超がつくほど大量で三平方キロメートルほどの海岸が陸地に変化した。
水の王の力
 そしてグルウクウスの元から龍の形をした大量の海水がルガへと放たれる。ルガも必死にガードするが、水の勢いが強すぎて地面の砂もろとも後ろへ押し流されてしまった。長い時間をかけて海水による一撃が終わり、ルガは再び攻撃を仕掛けようとするが、領主がそうさせてくれなかった。
 グルウクウスは先ほどの攻撃が放たれた後すぐに次の一手に取り掛かっていた。
消滅の光線・乱反射
 それが飛んできた瞬間、ルガは固唾を飲んだ。この攻撃は防ぐことも避けることも不可能であり、しかも光線が当たった箇所は消滅すると言ったとても恐ろしい業だった。回避することは無理だと悟ったルガはその場にたたずんで攻撃を吸収する。それからまた反撃に移った。
 今度こそルガはグルウクウスめがけて腕から伸ばした剣で突き刺そうと飛び跳ね、実際にグルウクウスの頭部に剣を指すことができた。しかし、それだけではダメージが入らないためルガはもう一つ、剣から黒引石のように県からグルウクウスの体力を奪う作戦だった。
 そして、しばらくしてグルウクウスの体力が落ちて動きが鈍くなる。これをただの疲れと感じ取るならまだしも、グルウクウスの場合はすぐに異変に気がつき、ルガを頭の上から振るい落とそうと体をひねる。そしてグルウクウスは再び最上級位魔法で反撃する。
 ルガは最初は前回と同じように「消滅の光」を発動するものだと思いきや、グルウクウスの身の回りの光っている空間を圧迫し、縮めて小さな一つの球体を作り出す。するとルガは次はどんな技が来るのかを予想して比較的安全な海中へ逃げようとする。しかし、ルガの行動は一足遅く彼が走っている途中でグルウクウスの魔法が発動された。
ビッグバン・ミニマム
 これにより、ルガは爆風で吹き飛ばされて海の中に落ちていった。
 その頃、海の中ではマールやその他の者たちが必死に救助活動を行なっている。その場に残ってしまった住民や、被害に遭った野次馬、そしてグルウクウスと戦い負傷したルガたち。だが、グルウクウスはルガに向かって追い打ちをかけた。
 何度も何度も光線や氷塊をぶつけては住宅街を壊したり更なる被害者を出した。それをマールはルガを抱えた状態で逃げ回っていた。
「大丈夫か、マール」
「ルガさん!やっとおきたんですね」
「悪いな、助かった」
「ルドさんなら平気ですよね、あんな奴ちゃっちゃとやっつけて下さい」
 しかし、次の瞬間グルウクウスまたも光線が放たれマールに直撃しようとしていた。ルガはその光線を一歩手前で防ぎマールを助けて大ダメージを受けた。ルガはその場に倒れ込みマールは青ざめた。しかし、光線は止むことなくずっと放たれ続けている。いつもならすぐに回復し起き上がりまた動き出すのだが、マールはそのこと知らずとうとう能力を使った。
 彼女は堪忍袋の尾が切れた。
「ルガさんをいじめるなぁ‼︎」
 マールは怒りと業をまとい巨大化していった。彼女の持つ個人能力は恐悍。彼女は始めてこの能力が発現した時、周囲の者から恐れられ悍ましいと感じたため彼女は自らこの名前をつけた。
 彼女の巨大化は止まることなくどんどん大きくなっていき、ルガは押し潰されないようその場から逃げる。
 マールの背丈はおよそ一万メートルほどまで伸びてちょうどグルウクウスと同じくらいの大きさになった。
「こ~れ~い~じょ~おーあーばーれーるー…なっ‼︎‼︎」
 それからマールは超強烈な右フックをグルウクウスの頭部に入れ、だったの一撃でグルウクウスを撃沈させる。
 彼女はあれほどの甚大な被害を出し、ルガたちが大怪我を負い、挙句の果てには最終手段として裁判所からの死刑判決が降ったグルウクウス領主をたったの一撃で打ちのめしたのだった。
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