チート狩り

京谷 榊

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第八章 ルガの故郷

七十三話 餃子事件

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 ミゲー大陸に到着して2日目、ルガの知り合いである虫たちに大歓迎されたジョセフたちは一夜の大宴会を過ごした後は丸一日、大陸の虫たちと親交を深めるために街中で数多くの虫たちと携わっていた。
「ねぇ、ルガって何でこんなに人気者なの?催眠術かなんか使ったの?」
「んなわけねぇだろ」
 ルガたち八人は昨日パーティを行ったビルから離れたところで昼食をとっていた。
「まさか、虫たちが住む大陸にこんな店があるなんてな」
 今ルガたちがきている店は外星から来た様々な種族をもてなすために作られた店で食事をしている。
「大将!次は餃子一枚!」
 ジョセフがそう喋ると店主が店の奥の見えないところでペリペリと何かをと剥がすような音がした。
「大将、今絶対パッケージかなんか開けてるよね」
「てっきりこの店で作ってるかと思った」
「いいじゃねぇか、食えるんだから問題ねぇよ」
 ジョセフはそう言ってラーメンをすすっていると店の奥の方から餃子が運ばれてきた。
「へいお待ち!」
 ジョセフの目の前には出来立てで湯気が上がっている餃子が一枚置かれた。
「これだこれ!久しぶりの中華は美味いな」
 ジョセフが美味しそうに餃子を食べているところをユウとエフィとリアがじっと見ている。
「なんだ、お前らも一個ずつ食べるか?」
 ジョセフがそう発言すると、三人はギョッとして視線をずらす。
「私は遠慮する」
「私も」
 エフィとリアはジョセフの誘いを断った。
「遠慮すんなって」
 するとユウはジョセフに一声かけて餃子を一個もらい、一口で口の中に頬張り口を閉じた。
 だが、その瞬間誰が予想しただろうかユウは苦しそうにもがいて椅子から落花して床に倒れ込んだ。
 その出来事に店内の空気が一瞬で凍りつく。その時はお湯が沸騰する音と炎が燃える音がその場に響いた。
「どうした!ユウ!しっかりしろ」
 一番最初に反応したのはエフィだった。彼女の後に続いてルガやロスもユウを心配して近くに寄っていく。
「オイ!この餃子に何入れやがった、答えろ!」
 ジョセフが立ち上がり、店主に向かって怒号を発する。
「な…何も入れてません…ふ袋から出してそのまま…あっあた…温めただけです」
 餃子のパッケージを開ける音を聞き逃さなかったロスはこう言った。
「もしかして餃子が腐ってたのでしょうか?」
「そんなはずないよ、だってついさっき袋から出したばかりなんでしょ?」
「いや、でも袋の中に入っていたとしても腐ってないとは言い切れませんよ…そうでなかったとしたら…」
「おそらくアレルギーか食中毒のどちらかと」
 ヤスケはそう言うとその場にいるみんなが一瞬ユウに目を向けた。
「この餃子の材料はなんだ?」
 店主は餃子の入っていた袋を見るなりジョセフに渡した。ジョセフはそれを受け取り、材料が記載されているところを見ると黙り込んでしまった。
 次にルガがその袋を受け取ると材料の書いてある項目を読んだ。
「豚肉、小麦、卵、ニラ、ネギ、ニンニク、塩、醤油その他様々な調味料」
「やはり、アレルギーと考えられるような食材が入っていますね」
 するとユウの症状が少し落ち着いてきたため、ユウを近くにあるソファに寝かせてその後もしばらく彼女の様子を見ていた。
 
 それからまたしばらくすると、戸を開ける音がして店の中に誰かが入ってきた。その音がしたのと同時にジョセフたちは入り口の方に目を向けるが、誰もその場から動かなかった。
 店の中に入ってきたのは黄色い服を着た年老いた虫と、ルガと似て頭に黒い布を被り、摺動服のようなものをきている虫で、黒い服の方はぱっと見でヤスケより大きいとわかるほど身長の高い虫だった。
「いらっしゃい」
 と店主は店に入ってきた虫に言おうと入り口のところを見るなり、店主は仰天した。
「ウスタビ大統領!それにスコルド様」
 店主の大統領と言うセリフを聞くと、ジョセフたちも立ち上がりかしこまってお辞儀をする。
「なんだ?そんなに凄い奴らなのか?この二人は」
「この二人だなんて失礼ですよ!この御二方はこの大陸で最も偉い方々なんです」
 店主はジョセフの発言を注意する。
「いいえ、構いませんよ。急に押しかけてしまい申し訳ございません。私はこういうものです」
 ウスタビ大統領はそう言ってジョセフに名刺を渡した。
「そっちの黄色い服を着ているのはウスタビって言って今はこの国で大統領をしているらしい。そんでその隣の黒い奴は分からん」
 ルガはそう言って匙を投げる。すると、黒い服を着た方の虫は。
「申し遅れました。ワタクシはノソア教の管長を努めております、スコルドと申します」
 するとロスは管長という言葉に反応した。
「なぜ管長がこんなところに?」
「管長ってなに?」
「管長って言うのはその宗教団体で一番偉い者のことを指す、最高責任者って奴だ」
 リアの疑問にルガが答えた。その後もルガは続けてスコルドに話しかけた。
「外星の者がくるような料理店に、国のトップと宗教のトップが現れるなんて珍しいですね。何か問題でも?」
「はい、ここに体調のすぐれない方がいらっしゃると聞いて参上いたしました。」
 スコルドはそう言ってユウのお腹の上で手をかざして呪文を唱える。するとユウの表情がみるみるうちに良くなってゆく。
「それではワタクシはこれで失礼します」
 そして彼は出口に向かう、スコルドは出口の前で一度立ち止まりルガたちの方を振り返り最後に一言告げた。
「今日の午後、15時からヤディス教会で講演があるのですが、宜しければ参加されてはどうでしょうか?」
「みなさんはこの海外からいらしたのでしょう?ワタクシたちは彼らヒトに対してもっと関わりを持つべきなのです。あなた方も海外のヒトたちと触れ合ってきたのであればわかるはずです…。」
「それではワタクシはこれで」
「ちょっと待ってください」
 ロスはスコルドを呼び止めた。
「はい、何でしょう?」
「どうしてここに具合の悪い人がいるってわかったんですか?」
「それは……秘密です。」
 そう言うとスコルドは店をあとにした。
 するとウスタビはルガの顔を見て自分の能力であるテレパシーを送った。その内容は先程スコルドの言っていた公演に行き、彼の秘密を探ってきてほしいとのことだった。

 そして午後15時、教会には大勢の虫たちが集まっていた。さらには、さすが虫が使用する教会というだけ普通の教会とは作りが違っていた。
「ユウ、もう具合はいいのか?」
「ああ、だけどまだ少し変な感じがする」
「あんまり無理すんじゃねえぞ、また倒れられたら俺たちが困るんだ」
 エフィとジョセフの二人はユウを気遣っていた。
 建物自体は普通の境界だが、中に入るとホールがあり、そこから大広間へ続くドアと左脇の方に一つ狭い廊下があった。反対の右の脇には階段があり、二階の観覧席に繋がっている。ルガたち八人はまっすぐ進んだところにあるドアから大広間へ入った。
 普通の教会と構造が違ったのはここからだった。そこには照明が一切なく、あたりは夜のように暗くなっていた。さらに、壁や天井にも足場があり、虫たちは壁や天井に捕まっている。集合体恐怖症の者にとってはたまったもんじゃないような風景だった。
 そしてスコルドがステージに現れる。すると大衆から歓喜の声があがり、大いにもてはやされていた。そしてスコルドによる公演が始まった。
 最初は挨拶をして、本題に入ると海外にいるヒト達についての話をした。
「…ですから我々は彼らとの関わりを持つべきなのです。彼らの文化や文明の在り方を知り、善い行いには誉を、悪い行いには制裁を。みなさんも己の行いには気をつけてください」
 ルガはタイミングを見計らってスコルドの頭の中を読もうとする。しかし、スコルドの念を感じ取ろうとすると、途中で遮断されてしまった。そしてルガは咄嗟にスコルドの方を見るとちょうどスコルドと目があった。危機を感じたルガはジョセフたち七人を連れて教会を出て行った。

 その後、ルガが仲間を連れて向かったのは古い知り合いのいる店だった。
「何で途中で出てきたんだよ」
「何か用事でもあるの?」
「いいや、少し都合の悪いことがあったもんで」
「都合の悪いこととはなんだ?」
 ジョセフやエフィがルガに話を聞いてくる。
「わけは後で話す。とにかくお前たちはこの店の中で待っててくれ」
 ジョセフたちはルガのいう通りに店の中へ入って行った。するとルガは店の前でたたずんでいると教会から後を追いかけてきた二名の虫が近づいてきて話しかけた。
「申し訳ありませんが、少しお話しさせていただいてもよろしいですか?」
 片方の虫がそう言うとルガは
「出来ればここで話がしたいな」
 と意見する。ジョセフたちにはこんなところを見せられないと思ったルガは一人で彼らの対処をしようと思っていたが、次の瞬間店のドアが開いて中から砲撃のような者がルガの顔をスレスレで飛んでいき、片方の虫に直撃する。
 もう片方の虫が動揺していると今度は斬撃が飛んできてルガの反対の顔をスレスレで飛んでいき、もう片方の虫も一発で倒された。
「すまん、手が滑った」
「申し訳ございません、私も刀の手入れをしようとしたら、ついうっかり刀を振ってしまいました」
 ジョセフとヤスケがそう言いながら店の外に出てくる。
「………全く中で待っていろって言ったのに、よくできた仲間だよ。お前らは」
「フフッ」
 そうして三人は店の中へ入って行った。店の中に入ってからはルガに対する説教の嵐だった。
「よく気がついたな、ジョセフとヤスケ。俺たちが尾行されてるって」
 ルガは驚いて発言するとヤスケはこう返した。
「それはルガさんが珍しくあんな挙動するからですよ」
「それに尾行されてたのは最初からみんな気づいてたわよ」
 リアがそう言うとみんながうなづく。
「やっぱり隠し事はしないってルールとか決めるべきじゃないですか?」
 しかし、ロスの意見に首を縦に振るものはいなかった。
「そのルールはひとまず置いといて、ひとまず話をしよう」
 ルガはそう言うが、ロスは少しきにくわなそうな顔をする。しかし、周囲の者たちの表情を見るなり、発言するのをやめた。

 それからしばらく八人でスコルドに関することを話していると店の奥からある者が出てきた。
「今日はまだ明るいのにもうお客さん入ってるの?」
 そう言いながらカウンターへ出てきたのは虫ではなく、ヒトでもない下半身がタコやイカのような触手の足が生えて上半身がヒトの女性が出てきた。
 その女性があたりを見回し、ルガの姿を見つけると驚きと喜びが混ざった表情で叫ぶ。
「えっっ!お兄ちゃん!」
「その声はまさかマールか!」
 ルガは驚いて立ち上がり、その女性の方へ近づいていった。
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