チート狩り

京谷 榊

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第七章 新たな旅立ち

六十七話 不幸の修繕

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 話を聞く限り、パルとアイラは昔っからの親友で、アイラは名家の生まれでパルは一般の家庭で育った女の子だった。
 だが、ある日アイラの両親が不慮の事故に遭い他界してしまった。これに好機だと思った家主であるアイラの伯父は過去に犯したことのある自分の罪を贖うために国の法律に則ってアイラを奴隷として国に売ったのだ。
 そしてそれを知ったパルはなんとか稼いでアイラを買って取り戻そうとしていた。しかし、職場の人間関係に関するトラブルで問題を起こし、仕事をクビになると酒に溺れ、盗みを働くようになった。

 そして現在に至るという。
 その話を聞いたルガはパルにちょっとばかし説教をする。
「お前、ちょっとこっちに来い」
 ルガはそう言ってパルに声をかける。
「なんだよ」
 パルはルガに対する恐怖を悟られないためにクールぶった返事を返す。
「お前、他人の迷惑を買うのは自由だが、他人に迷惑をかけるな」
「迷惑なんてかけて…な…。」
 パルは途中まで喋りかけるがあることに気がついて口を閉じた。
「お前、このままだと大好きな友達を無くすことになるぞ」
「でも何でそんなこと知ってるの」
「おてんとさまってのは何でも見てるもんなんだよ」
「…今は夜で日が出てないけど」
「それでも見てるんだよ」
 ルガはそう言ってパルに言い聞かせる。アイラは何のことか全くわからずパルに話を聞こうとする。
 するとルガはこう言って二人の元を去る。
「話は全部パルから聞くといい、それで話がまとまったら今度あいつのところへ行くといいさ」
 そしてルガはアイラとパルの前から居なくなった。

 その次に向かったのはパルに金貨を奪い取られた少女の家だった。
 ルガは玄関のドアを開けて長い入る。すると中で横になって寝ていた少女が起き上がって言う。
「もうお金ならないぞ、それとも酒を飲みにきたのか、…いい加減にしろここは酒場じゃないんだぞ!」
 途中から怒りの混じった声色で話す。だが、彼女がルガを見た瞬間驚愕して退ける。
「なっ…何⁉︎誰ですか」
まさか強盗⁉︎
 そう思った彼女は咄嗟にクワを手に取って構える。
「違う、強盗じゃないよ福の神だよ」
「絶対嘘だ!福の神はそんな闇をまとってそうな服を着ないと思う!」
「特に顔の部分とか本当に変な感じ…なにそれ、どうなってんの?」
 少女は喋り続ける。
「それはさておき本題に入ろう」
「話聞きなさいよ!」
 少女はそう言って大声でルガに向かって言う。
「しょうがねえな、じゃあ昨日の昼間に三人の女の子から金をぶんどっただろ、それを返せ」
 ルガは無理だと分かってて要求する。すると彼女は部屋の奥にあるタンスの引き出しから金の入った袋を持ってきてそれをルガに渡す。袋の中には銀貨と銅貨が数枚入っていた。当然、金貨十五枚とは比にもならないが彼女はそれで切り抜けようとした。
「仕返しなら自由にすればいい、でも私にだって生活はあるの、だから」
「だからといってあの三人の女の子にも生活があったんじゃないか?」
「それは…」
 彼女は言葉が詰まる。
「それに金なら持ったあったはずだ、金貨が十五枚くらいな」
「知ってるならさっさと言いなさいよ。それで?これから私のことをどうするの?お望みなら体で払いましょうか?」
 彼女はそう言いながらルガに近づいて体をルガに擦り付ける。だが、彼女はそのことに対して恐怖していることはルガにはすぐに分かった。
「それじゃあ、好きにしてやろうじゃないの」
 ルガはそう言うと彼女はビクつく。
「まずアンタの名前を教えてくれ」
「……レス…。」
 彼女はうつむきながら暗い声で自分の名を名のる。
「よし、レス!早速だが、仕事について話だ。お前はここで酒を作ってるんだよな」
「そうよ、よく分かったわね」
「だって臭いが」
「悪かったわね、でも酒ってそんなものよ、私がここを継いで酒を作る前はもっと臭かったんだから」
 するとルガはその言葉を聞いて彼女を外まで連れて行く。それと同時にレスにこんな質問をする。
「この酒造業を継ぐってことはやる気があるってことだな」
「そうよ、当たり前じゃないの」
「それなら話が早い、早速仕事に出かけるぞ」
「仕事って何の?」
 レスはそう言ってただただルガについていく。
「お前のための仕事だ黙ってついてこい」
 そして、二人は外に出るとルガはレスを抱っこする。
「えっ、ナニ⁉︎急に」
 レスは少し頬を赤らめてルガに言われるがまま捕まる。
「捕まってろ、飛ぶぞ」
 するとルガは空高く跳びあがり10キロメートルほど離れた河川に着地すると、そこでレスを下ろす。
「何だったの⁉︎今のは」
「気にすんな、夢だと思えばいいさ」
 そしてルガは本題に入った。
「お前、足が悪いんだよな」
「そうよ、文句ある?」
「ないよ、ちなみに畑作業をする時とかどうしてる?特に水やりとか」
「ああ、それは大変だから定期的に大量の水を汲んでこっちへ持ってきて少しずつやるようにしてるの。それとも、これから一生私のために働いてくれるの?」
「そんなことしないさ、もっと手っ取り早くするんだよ」
「どうすんのよ?」
 レスはそう言ってルガを見つめる。するとルガはボーリングの球を転がす時のようなポーズで構え、レスの家に向かって少しずれた方向にかけて地面をえぐる。
 すると目の前に堀ができてその跡を河川の水が枝分かれして流れていく。
 この様子を見たレスは大層驚いていたが、一番最初に言ったのはこれだった。
「あっちの方向って私の家がある方じゃなかった⁉︎」
「あるよ」
「どうしてくれんのよ!私の家が吹き飛んじゃったじゃないの!」
 するとルガはレスをなだめるように言う。
「大丈夫だよ、ちゃんと微調整して狙ったから」
「そう言う問題じゃないでしょ…」
 すると、レスは青ざめて気を失った。
「まぁ、この国は地形に対してうるさく無さそうだしちょっとくらい大丈夫だろ」
 ルガはそう言うと、レスを抱えて彼女を家に送り届ける。ルガはレスをベットに寝かせて軽く足を治癒するとその家を後にした。
 ルガがその家を出る頃には日が上り始め、次の日の朝になっていた。

 そして次にルガが向かった先はソフィアたち親子から金を奪った三人の女の子の元へ向かった。
 ルガは彼女たちを見つけた。三人の子供たちがいたのは屋根がない上に建物と建物の間にあるとても狭い路地で、布も何もかけるものが何もない状態で寝ていた。
 そこにルガは声をかけて起こす。
「おはよう、お嬢ちゃんたち」
 ルガは声をかけただけで女の子三人はすぐに起き上がった。
「何?」
「もう朝なの?」
「ファ~~~……」
 しばらくして女の子三人は目を覚ますと、急に目の前に現れたルガに驚く。
「うわっ!だれ…ですか?」
 そう言って退いたのはマンシェだった。その声に驚いてラックとテイプも驚いて退いた。三人とも怯えて声が出なくなっている。
 ルガは三人の元へよるとそっと頭を撫でながら三人をなだめる。
「大丈夫、取って食ったりはしないから」
 するとルガは続けてこんなことを話す。
「お前たち、昨日お金取ってきたあの女の子いるだろう?」
「…うん、」
「あの怖いお姉さんのこと?」
 ああそうだ、と言おうとしたがこの三人に断られてしまう。
「嫌だ!」
「あの女のところで働くなんて死ぬのと一緒だ」
 テイプとラックはそう言っていた。
「参ったな、」
 レスのことを女って呼んでいる時点で現状での仲直りは難しいな。
 ルガはそう思って別のことを考えた。
「それなら、お前らはこれからどうやって生きていくんだ」
 そう質問すると彼女たちはこう答えた。
「あんな奴よりモンスターを相手にしている方がまだマシだ」
 ルガはその言葉を聞いて彼女たちをあるところへ連れて行った。
「それじゃあ、俺についておいで」
 そんなルガをラックたちは冷めた目で見ている。
「一生このままでいいならついてこなくてもいいよ」
 ルガはそう言うと三人の女の子は恐る恐るついて行った。
 ルガが向かった先は、モンスターが出現する森だった。そこにはスライムやゴブリンなどのさまざまなモンスターがいる。
 ルガはそこで三人に狩りの方法やモンスターの倒し方を教えた。
「それじゃあ今から君たちにはこの森のモンスターや小動物を狩ってもらう」
「そんなことできるの?私たちに」
「ああ、できるとも」
 するとルガは三人に剣、弓矢そして魔法の使い方を教えた。
 三人とも最初の方は苦戦していたが、この三人の女の子たちは驚くほど上達が早かった。
「やった!見てみて!」
「私だってこんなにとれた!」
「ここにはきのみもたくさんある!」
 ラックとテイプとマンシェはそうやって喜び合っていた。ルガは最後に三人にこう言った。
「今はまだ昼だけど、夕方や夜とか暗い時間になる前にちゃんと帰るんだ。夜は一部のモンスターが活発に動き出すから、危ない目に遭わないためにもちゃんと明るい時間帯のうちに帰るんだ、いいか?」
「「「は~い」」」
「それともう一つ、君たちが15歳くらいになったらギルドってところに行って、登録をしてもらうといい。君たちの実力ならAランク冒険者も夢じゃないかもな」
 ラックたちはポカンとした表情でルガの話を聞いていた。
 その後、ルガと三人の女の子はあのスラム街に戻った。そこでルガは去り際に三人にあることを告げて去って行った。
「最後に一つ、君たちの昨日の様子を見ていたけれど奪ったお金の分ちゃんと狩りをしたり何でもいいからあの親子にちゃんと返すんだぞ」
 そのことを聞いてラックたち三人はギョッとして聞いた。
「何で知ってるの?」
「そうだなぁ、御天道様はいつでもみんなのことを見守っているんだよ」
 ルガはそう言ってその三人の元を去って行った。

 最後にルガが訪れたのはルガに依頼をしてきた女の子のいるところだった。
 そこで親子の様子を見ると、ソフィアの母は昨日見た状態よりもさらに体調が悪化しており、咳がひどくなっている。
 ソフィアはそんな母を部屋の隅でうずくまって見守っている。
 そこにルガが入ってきた。
「あ!あの時の!」
 ソフィアはそう言うと彼女の母はゆっくりと体を起こしてルガを見る。するとルガは母親に無理をさせないようにそっと手を添える。
「余り無茶なするなよ、アンタが病弱だと子どもがかわいそうだ」
 ルガはそう言って手っ取り早くソフィアの母に治癒をかけてねむらせた。
 その次にルガはソフィアをこっちに来るように招き寄せる。
「なぁに?」
「ソフィア、君にちょっとしたいいものをあげよう」
 ルガはそう言ってソフィアに回復や治癒の魔学知識を直接授けた。そしてルガはこうも言っていた。
「いいかい?今借りたものは必ず返すんだ、でも返す相手は俺じゃなくてもいい。君も困っている人を見かけたら助けてあげるんだ」
 ルガはそう言ってもうしばらくソフィアと一緒に彼女の母の看病をした。

 その後、ルガはソフィアとその母親に別れを告げてギルドに戻って行った。丸一日依頼をこなしていたルガは1日ぶりに会った受付のお姉さんに焦った表情でこんなことを言われた。
「ルガさんですね、ある冒険者チームから手紙を預かりましたので、これ…読んでください」
 ルガは受付のお姉さんから丁寧に手紙を渡され、それを受け取る。周囲の冒険者たちの視線は全員ルガとお姉さんの二人に向けられていて、ルガはそれに気がつくまで数分と経たなかった。
 その手紙にはこんなことが書かれてあった。
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