チート狩り

京谷 榊

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第七章 新たな旅立ち

六十一話 大事件

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 人工惑星ユニバースステーションを出発したルガたちは、ルガの故郷のある星に向かっている途中、ルガたち乗っている宇宙船は墜落した。しかも、ルガとその他の七人は別々の場所に墜落した。

 それはなぜかと言うと、遡ること2時間ほど前、宇宙船でルガの故郷のある星に向かっていた彼らは起床して朝食を取っていた。
 この時は珍しくルガも早起きで、早めに起きたヤスケ、ロス、タイカ、そしてルガの四人でリビングの真ん中にテーブルを出して朝ごはんを食べている。
 タイカとヤスケは宇宙船でも繋がるネットニュースを真剣な顔で見ながら食べており、ロスは起きたばかりで眠そうな顔でスプーンを口に運ぶ。ルガの場合は周りと関わることなく黙々と食事をとっている。
 そんな閑散とした食事の際中にヤスケとタイカはネットニュースを見て驚く。
「ヤスケ!これ、」
「はい、私も今見てます。」
「どうした?お前ら」
 タイカとヤスケが喋り出すとルガは二人に何があったのかを問う。
「これ見てください」
 とヤスケがルガにネットニュースの記事を見せる。
 そこにはヤスケの故郷である惑星ライトに関する記事が載っていた。内容は、惑星ライトが宇宙一科学と魔学の進んだ星の名を剥奪されると言うことだ。
 その原因として惑星ライトの株が暴落し、そこに住む様々な種族が他の土地や星に移住し、惑星ライトは荒れた状況に陥っていると言うことだ。
「ああ、なんだそんなことか」
「そんなことかって、ルガはヤスケの故郷のことを心配したりしないの?」
 するとルガはタイカとヤスケに向かって。
「あんな経済情況だったらいつ株が暴落してもおかしく無いんだよ。それに、ヤスケの勤めていた戦闘員だって人員不足で大変だったじゃねぇかよ」
「まぁ、でもロスやリアの生まれた魔学都市やあの森は大丈夫らしいな」
 ルガはそう言ってロスのほうに視線を向ける。ロスは今にも寝そうな表情でのうのうと食事をしている。
 その次にタイカが見つけたのは物騒なニュースだった。サダ星、タキ星、コリョウ星の三つの惑星が謎のテロリスト、ザーダによって破壊される。と言う記事だ。
 このことにより、ザーダと言う人物を全宇宙で指名手配するといったニュースがルガたちのもとへ入り込んできた。
「一人の男に三つの星が破壊されるなんて物騒だなぁ」
 タイカはそう言ってヤスケやルガに反応を求める。ヤスケの場合は。
「たしかにそうですね、星を破壊するだなんて、常人の域を超えていますよ」
 ルガの場合はきにとめることなく、黙々と食事を続けていた。

 四人は食事を終え皿洗いをしたり身支度をしていると、突然、宇宙船の緊急警報が鳴った。その音に驚き、四人は何かと思いコックピットへ向かおうとする。
「緊急警報⁉︎」
「一体どうしたのでしょう?」
「とりあえずコックピットに行くぞ」
 すると宇宙船に何かが衝突し、船が大きく揺れる。
「さっき何かにぶつかりませんでした?」
「多分、小惑星か宇宙ゴミのどっちかだと思う」
 四人はコックピットへ向かい、何かに衝突されたところを見ていると、トレーニングルームの天井になるところの外壁が壊れているのが確認できた。
「このままだと星に降りるのは難しいかも」
 タイカはそう言い、誰かに宇宙服を着て作業に徹してもらうしかなかった。
「この中で宇宙船に詳しいのって誰ですか?」
 ロスは他の三人に聞く。タイカは、船が動かないようコックピットで操作しなければならない。それを考えると、ほかにこの宇宙船について詳しいのはルガしかいなかったため、結局のところルガが宇宙船の修理をすることとなった。
 そして四人は下の階に降りると、今まで寝ていた残りの四人が起きてきた。
「お、目ぇ覚めたか」
 とルガが言うと。
「あんな起こし方されたら誰だって起きるわ!」
 ジョセフはそう言って、ほかの三人と朝食を取る。
 それが終わると、男子は寝室、女子は風呂場でそれぞれ身支度をする。その間、ルガは特にすることもなく、リビングでくつろいでいた。
 そしてことが済むと、タイカはルガに
「それじゃあ、始めますか」
 そう言ってルガを外に出る用のハッチに案内する。寝室の隣にある外に出る用の部屋には、宇宙服が二着置いてあるが。二つとも、ルガにサイズが合わなかった。というのも片方は子供用のように小さなもので、もう片方はヤスケほどの大きさのものだったからである。
「しまった、近いうちに宇宙服を買うって言ったけど最近、いろんなことが重なるからつい。」
 タイカはそう言って、宇宙服のサイズの合うヤスケに頼もうとするが、ルガはタイカの肩を掴んで、言った。
「俺、宇宙服なくても行けるから」
 そう言ってルガは親指でハッチの方を指す。そして、ルガは二重ドアになっている向こう側に立って何かを唱え始めると、そのまま浮かび上がり、目の前の外に出る用のドアを開けようとするが、タイカにとめらる。
「ちょっと待て!いい⁉︎宇宙空間にでってことはいろんな危険が伴うんだよ⁉︎」
「大丈夫、命綱はつけとくから。」
 ルガはそう言って腰にワイヤーを巻き付ける。タイカは心配そうな表情と信じられないものを目にするような表情が混ざっている。
「いやダメ!危なすぎる!」
 すると埒があかないと思ったルガはタイカを説得する。本当であればタイカがルガを説得しなければいけないのだが、されるがままにタイカはルガに説得される。
「ちゃんと戻ってくるんだよ⁉︎」
 そしてタイカはコックピットへ行く。
 ルガは命綱をつけた状態で宇宙船の破損したところまで行く。壊れている範囲はさほど大きいものではなく、ルガはさっさと修理に取り掛かろうとする。

 その間、ルガとタイカ以外の六人はリビングでゆっくりしていた。エフィとリアはゲームを、ジョセフはコーヒーを飲見ながらユウに魔学や業力などを教えている。そして、ロスとヤスケは本を読んでいた。
 すると、エフィはゲームから目を逸らし、ロスの読んでいる本に目を向ける。
「ロスくん、君が今読んでいるのって」
 エフィの呼びかけにロスはそのまま答える。
「これは、国を出る時にもらった本です」
 ロスはそう言って本を閉じて表紙をエフィに見せる。表紙にはナビア大陸の童謡と書かれていた。
「ほう。それで、どこまで読んだのだ?」
「ね~エフィ、ゲームの続きしようよ」
 エフィにおねだりするようにリアは頼むが、もうちょっと待ってくれ、と言われてリアはむすっとした顔でゲームを続ける。
 エフィは再度、ロスに質問する。
「それでどこまで読んだのだ?」
「アナークの怪物のところまでです」
 ロスはそう言い、エフィの返事を待つ。
「アナークの怪物か、これは私のお気に入りの作品の一つなんだ」
「へぇ~どんな話なの?」
 と一人でやるゲームに退屈したリアも会話に混ざってくる。その問いかけにエフィが答えた。
 アナークの怪物と言うのは。昔、ナビア大陸のある村に一人の若くて力持ちで勇敢な村長がいた。そいつは嘘をつず、欲に溺れず、負というものが嫌いな男だった。
 ところがある日、悪魔が村にやってきて村長に対し、
「俺は真面目なおまえが嫌いだ。お前が欲に溺れ、惰眠を貪り、偉そうにするお前の姿が見たい。」
 と言う。だが当然、男はそれを断り悪魔を払い除けた。すると悪魔は男にアナークの薬というものを渡す。その薬を飲むと怒りの感情が湧き出し、更なる力を得ることができる。しかし、あまりの怒りの強さに薬を飲んだものは怪物になってしまう。という薬だ。
 男はそれを絶対に飲まないと決めて、自分の住む家の誰にも見つからない場所へ隠した。
 だが、それから数日経ったある日、その村は遠いところからやってきた魔物の群れに襲われてしまい、窮地に立たされる。
 すると村長は悪魔からもらった薬を飲んで、怪物に変身してしまう。そのことにより、村は助かるが、男は元の姿に戻らなくなってしまった。それどころか男の怪物化はどんどん悪化していき、それを見限った村人たちは村を出ていき、離れたところに新しい村を作り始める。
 村に残った人もいたが、そいつらも怪物を腫物扱いし、村長だった怪物はとうとう村から出ていき、放浪の旅に出ることになる。
 そして、その怪物の亡霊は今でもナビア大陸のどこかを彷徨っているという。

 と言う話だった。エフィが話し終えるとロスもリアもまじまじとエフィを見つめていた。
「なんだか暗い話ね。」
「そうだな、だが実を言うとこの話に関しては私はとても驚いているのだよ」
 するとロスとリアはキョトンとした表情でエフィの顔を見る。
「ロス、その本の次のページを開いてごらん」
 エフィに言われるがままロスはアナークの怪物の話がちょうど終わったページから次のページを開くと、死神やゴーストのような見た目の巨大な怪物が描かれてある。
 その特徴として、怪物は大きな布を頭巾のように被りマントの役目をするようにからだ全体も覆っている。両手を彷彿とさせるような物も描かれており、足はなく宙に浮いていると言った感じだ。
 そして、なによりも驚いたのが頭の部分を見ると、顔の部分が黒いモヤのような物で覆われていて、顔が見えなくなっている。
「これ、ルガさんにそっくりですね」
「本当だ!」
 ロスとリアが反応すると、近くにいたヤスケやジョセフもそのイラストを見にくる。
「だから私も最初にルガの顔を見た時はとても驚いたんだ」
 すると、ジョセフは
「そういえば、ミズ帝国の住民たちもルガのことを見てめちゃくちゃビビってたな」
「そういえばルガってどこにいったの」
 リアはふとルガがいないことに気がつく。
 すると、ロスは窓の外を指差す。
「あれ!」
 そこには命綱を腰に巻いて宇宙空間を漂っているルガがいた。
「彼は外に出て大丈夫なのか⁉︎確か宇宙は空気がないと聞いたぞ」
 そこ言葉を聞いてジョセフは。
「あ~、大丈夫だ、あいつは生物として普通じゃないから」
 その言葉一つでエフィ以外は納得した。エフィはまだ混乱し、話についていけてなかった。

 だが、次の瞬間ルガたち八人に災いが襲いかかる。
 コックピットにいるタイカがいち早くそれを察知した。タイカは青ざめて至急連絡する。
「宇宙船がこっちに向かって来てる!みんな、安全のためにふせて!それと、ルガも一旦船の中に入って!」
 タイカはそういうと、リビングにいるジョセフたち六人はタイカの言う通りに床に伏せる。
「なんだ!どうしたよ急に」
「わ…わからない、」
 するとタイカの次の放送で今の状況がわかる。
「宇宙海賊が攻めてきた!」
 たちまち船内の状況は悪化する。
「なにそれ」
 リアは宇宙海賊のことがわからず周りに聞く。しかし、この荒れきった状況の中で聞く耳を持つものは少なかった。
「宇宙海賊って実在するんですか⁉︎」
「私もはじめて知りました。宇宙船の積荷がなくなるとかそう言ったニュースはたまに聞きますが、宇宙海賊に襲われる話なんて聞いたことがありません」
 ロスとヤスケが喋り終えるとジョセフがリアに宇宙海賊の説明をした。
「宇宙海賊ってのは、宇宙空間で略奪行為をしたり冒険したりする。いわば犯罪組織(仮)のような物なんだが、何かおかしい」
 ジョセフはそう言って窓の外を見る。するとそこには宙を漂っているルガがいる。
「まずい!このままだとルガさんが宇宙空間に放り出される!」
 するとタイカが次の放送を流す。
「近くの星に緊急着陸する!みんな船のどこか掴まれるところに捕まって!」
 タイカがそう言って着陸しようとした星はなんと、ルガの故郷のある星だった。
 すると、宇宙海賊の船から一発の光線が打ち込まれてルガがそれを防ぐが、その衝撃で命綱がちぎれ、ジョセフたちが乗っている宇宙船のとルガが別々の場所に落ちる。
 その様子を宇宙船の中から見たジョセフやそのほかの六人は言葉が出ないままルガと離れ離れになった。
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