チート狩り

京谷 榊

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第三章 エターナルシティにて

二十六話 悪魔の本音

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 ミオはこの広間の奥の方へ進んでいく。ルガとジョセフはその後を追い上へと開けるゲートを見つける。
「あそこから出る気だ」
「好都合だ」
 ルガとジョセフはひたすらミオの後を追いかける。
やがて上へと繋がっているゲートは開きミオはそこを通って上空へと昇っていく。ルガとジョセフもその後を追いかけ、昇っているうちに一つの点の光が見えてくる。
出口だ。
 出口から出た瞬間ミオの姿はフッと消えて見えなくなる。それを見てジョセフとルガは上昇するスピードを上げる。
二人は一点の光に向かって突っ込んでいくとそこはこの、エターナルシティ一帯を見渡せるほど高い塔の上だった。
「ここは…あの塔の上だ!」
ルガはミオを見つけてとっさに指を刺す。
 ミオは苦しそうに呻き声を上げ悶えており背中からリアのように大きくはないが三対の黒い翼が生えてくる。
「それじゃあ作戦を実行しますか」
「了解!」
ルガとジョセフは空中で二手に分かれそれぞれミオの元を目指す。正面からはジョセフが背後からルガが攻めることになっており、
ルガはミオからルシフェルを引き剥がすための魔法を発動させるためジョセフは正面でミオを惹きつけるといった簡単な作戦でありミオ本人に気付かれなければすぐに成功する。
「おいこっちだ‼︎」
 ジョセフは空中でミオの正面に来るとどこからともなく双剣を取り出してミオを挑発する。
「こっちへ来い、俺が相手だ」
 双剣を振り回したり突き出したり隙をついて切り裂こうとするがルガに言われた通り、わざと外してミオの注意を惹きつける。
 その間にもミオは魔法攻撃を放ち続けジョセフを集中して狙う。当本人も双剣を使い攻撃を受け止めたり受け流したりするなど囮役としては実にいい仕事をしている。
「ジョセフ、一旦下がれ!」
 ミオの後方からそう言った声が聞こえて来る。そっちに目をやる暇がなかったがその言葉にすぐに従い10メートルほど距離を置く。
それと同時にミオも後ろを振り向いてルガと目を合わせる。
「よう、ルシフェル今はどんな気分だ」
 自分の後方にはルガ以外にも大きな魔法陣もあり、ミオは瞬時に何をされるか理解した。だが、それをルガが逃してくれるはずもなくまともにその技を喰らってしまった。
 今度は呻き声も鈍い音も鳴らなかったがかわりに禍々しい光が生じると同時にルシフェルの影とおぼしきものがミオの目の前に押し出される。
 その後瞬く間にミオは力を失い下へ下へと落ちていく。
「ヤベッ」
 ジョセフはミオが落ちていった方を見て反応するが下、要は塔のふちににはあの魔法使いの男が立っておりミオをお姫様抱っこしている。
 ジョセフは一瞬その男と目が合い、すぐに逸らしたが後は頼んだとでもいうような目線をジョセフは感じ取った。
 その後ルガの隣へ行きルシフェルとどう戦うか作戦を練る。
 二人の目の前には先ほどのミオと同じように白い長髪に三対の翼、そして全身真っ黒な肌の男か女かもわからない人物が目の前にいて自分らに背を向けて宙に浮いている。
「うかつに手ェ出したら危ない目に遭うぜ」
「わかってる」

 それと同時刻ルガとジョセフを下から見上げるものがいる。彼女の名前はミウト、コサインズの幹部の一人でありこの都市中のコンピュータを全てハッキングしたのも彼女である。
「はわわわわわわ…だっ…大丈夫ですか⁉︎」
彼女は上空から降りてくるミオとそれを抱えたアルカディアにミウトは気が気でない。
「大丈夫だろう、魂が持って行かれなかっただけ幸運と言うべきだよ悪魔を呼び出したら普通何されるかわかったもんじゃないからね」
 ミウトはその言葉を聞いて安心すると同時に不安になる。
「コイツの願いはきっとアイツが叶えてくれるよ」
ミウトはルシフェルのいる上空を見上げて固唾を飲む。
「ミウト、ちょっとこいつを頼む」
アルカディアはそう言うとミオを渡す。
「お、重い~」
「じゃあ僕はやらなきゃ行けないことがあるから」
アルカディアはそれだけミウトに告げると早々と去っていった。
「あっ、自分もこうしちゃいられない早く最後の仕事をしないと」
 そう呟くとミウトはこの大広間から自分専用の部屋に戻りパソコンをいじり始める。
「大体、何でこんな時にあの危なっかしいオオカミを作り出す必要があるのよ」
 ミウトはミオを隣に寝かせて作業を始める。
「まあ、ミオ様の頼み事なら私何でもやっちゃうんだけど。それにしても恐ろしいわねあんなオオカミが悪魔ルシフェルの燃料になるなんて」
 彼女はオオカミを自動で作りだすカプセルのある部屋の電源を付ける作業を続ける。しばらくして作業を終えるとエンターキーを押して実行に移す。
「よしと、それでは…開始っと」
それからしばらくしてからミウトは異変に気がつく。
「おかしいな。いつもならあのとてつもなくうるさい音が鳴り響くのに…まさか⁉︎」
 彼女がパソコンに手をかけ監視カメラの映像を見る頃にはもう遅かった。室内のカプセルは全て破壊されカプセル内の液体が床全体に流れ落ちてる様子が目の中に飛び込んでくる。

 ちょうどその頃ヤスケとユウは室内のカプセルを全て壊し終えて別の部屋へ移動している最中だった。
「あの液体、多少ベトベトするけど大丈夫か?」
「はい、私は大丈夫です」
「そんなことより、いつになったら次の部屋に出られるんだ」
「どうでしょう、かなり下へと進んで行きましたからね。この階段はまだまだ続くと思われます」
「キツイな」
 暗い登り階段の中ヤスケの懐中電灯を頼りに二人は進んでいく。

 ルシフェルはこの時になって自分の体で初めて口を開いた。
「これはこれは、これほどまでの強敵が二人もいるとは」
 「強敵かそれは嬉しいねぇ」
 ジョセフは今、目の前で地獄の王みたいな肩書きのついている悪魔と対等に話し合っていることに脱帽する。
「よし決めた!ジョセフ、本気出していいからお前が戦え」
 ジョセフはしばらく唖然としていた。あんな強そうな大悪魔を自分の手で倒せと言われたのだから無理はなかった。
「何で俺なんだお前がやればいい話じゃないか‼︎」
「わかってねえな、ここで暴れたら下にある建物が破壊されて被害が増えるんだぞ!」
「ルシフェルの力量も勿論だがお前も本気を出せば街の一つや二つ潰せるんだぞ」
 ルガはジョセフを説得しルシフェルと戦うように促す。
「俺は援護に回る。したの建物に被害が出ないようにバリアくらいは張るよ」
 ルガはジョセフの肩をポンと叩き元気づける。
「あなたが相手ですか我はなるべくであれば隣の方とやりたかったのだがな、仕方ない。準備運動程度にはなるだろう。そのあとは是非あなたとお手合わせを」
 ルシフェルはルガに視線を向けるジョセフも恐る恐ると近づいていく。ジョセフもはじめは八割の力で戦闘を開始する。
 ジョセフは最初の戦いで使用したムチの様なナイフを取り出して構える。ルシフェルは何一つ構えることなく手をしたに下ろしジョセフの攻撃を待っているかのようにも見えた。
「それでは始めましょう」
 ルシフェルの合図で両者は一斉に動き出す。その間にルガは両者の下の方に魔法による巨大なバリアを生成する。無口頭魔法だった。そこからジョセフの動きは加速していきいよいよ独自の技を出してきた。
ラニアリイウィップ
 片手に持ったムチのようなナイフを黄色に光らせムチを扱うようにラニアリイウィップを動かす。この武器の先の方がルシフェルの元でしなるとパァンと大きな音を立て相手に攻撃する。最初の手は躱されるが、この武器からは斬撃が発生して一発目からルシフェルの体に傷をつけることに成功した。
「俺の相棒を舐めてもらっちゃ困るぜ」
 その後もジョセフの放つ攻撃は見事に命中し立て続けにルシフェルにダメージを与えている。
「なかなかやるではないか」
 するとルシフェルも片手にジョセフと同じようなやり方で空中に魔法陣を作り手を入れ剣を取り出してジョセフに向ける。
レッドリベリオン
 ルシフェルはその剣を一振りする。それによって飛んでくる斬撃をジョセフは回避するがその後に起こった出来事で相手の恐ろしさを改めて知ることになる。
 ジョセフが避けた斬撃は消えることなく進み続け後ろにあるさっきまでいたタワーにぶつかる。それと同時にタワーは斬撃の当たったところを境に切断され崩れ落ちる。
 さらにまずいことにジョセフがタワーが崩れているのを見てよそ見をしている間にルシフェルに距離を詰められ、
「ジョセフ前!」
 ルガにそう言われるとまでジョセフは気づかず、ジョセフはとっさに振り向くとさっきタワーを倒した斬撃の元となる剣が自分を襲おうとしている。
 ジョセフはその振り下ろされる剣をラニアリイウィップを使い剣のような棒状にするとルシフェルの赤い剣を受け止めた。運良く斬撃は出てこなかったがこの一撃はとても重く逃げなければ下に叩きつけられそうな勢いで自分を押してくる。
「ダメだ…もう我慢できねぇ‼︎」
 自然と声に出てしまった。一旦下がりジョセフは両腕を広げて
「リミッター解除‼︎」
 するとジョセフの周囲に銀色の翼のようなものが出てくる。その翼をよく見ると羽の一つ一つが銃や剣、槍、斧などの武器が多数着いており遠目に見ると翼にしか見えない。
 全身に力を込めて雄叫びをあげる。ジョセフに着いている翼は羽となる武器一枚一枚が横幅を広げそれぞれが操られているように動き出す。
 最初は剣や槍を中心に刃物の雨を降らせるようにルシフェルを目掛けて狙い攻撃を仕掛けるも、彼の手に持つ赤い剣でそのほとんどが跳ね返され使い物にならなくなる。
 ジョセフは次の手として翼のように生えた銃の銃口をルシフェルに向け、マシンガンのように一斉乱射する。しかし、銃弾の幾つかはルシフェルの体に当たるも、さっきジョセフのラニアリイウィップがルシフェルの体に傷つけた時とは違い、まるで鉄の塊に銃弾を打った時のように弾き返される。
 それだけでなくジョセフが乱射した銃の中にはアンチマテリアルと言った形あるものなら何でも破壊することが可能な銃も中には含まれている。それでもルシフェルの体にはそれが効かないという事実を目の当たりにしてジョセフは口をつぐむ。
「どうしたのだ、ここまでか?」
 ルシフェルは煽り気味に語りかける。
くっ、これからどうすれば…とジョセフは戸惑うがルガの一言でもう少し奮闘することになる。
「ジョセフ‼︎あともう少しの辛抱だ頑張ってくれ!」
 ジョセフはルガに目を向けずにその声を聞き取る。あと少しなんだな!ともう少し我慢しようと粘りを見せる。
「案ずるなあともう少しで終わらせてやる」
「うるせぇっ」
 ルシフェルは赤い剣を前に突き出しジョセフ目掛けて突き刺そうとする。そして、とうとうルシフェルの手には剣が鈍いものを突き刺す感触を得た。
 この感触を感じ取ったルシフェルは勝利を確信し笑みを浮かべるが実際は違った。
「何笑ってんだよ気持ちわりーな、」
 ルシフェルは前をよく見ると自分の剣が突き刺していたのは相手の体ではなく紛れも無い空中だった。
 どう言うことだ⁉︎確かに感触はあったはず…幻影か!
「残念、違う」
 ルシフェルは目の前にいるジョセフに目を向ける。
「俺の能力は武器だ、だから武器を使ったりするだけじゃない。錬成することも俺の能力に含まれてるんだよ」
 ルシフェルは目を見開き、
「まさか…」
「ああ、そのまさかさ、ここら一帯の空気を武器に錬成した。素材が空気なだけあって硬さは上出来じゃないが実態は持っているからいくらでも硬度を増すことができる」
「これでお前の目論みも終わりだ諦めろ」
「くだらん、我は去るぞ」
 ルシフェルは後ろを向いた途端、ルガがこっちに向かってくるのが目に入った。
「ジョセフー!よく持ち堪えてくれたあとは俺らに任せろ‼︎」
 と言ってルガの隣や後ろには何十人もの戦闘員が来ていた。ルシフェルはその大人数の群れに囲まれミツバチは集団でスズメバチをやっつける事があるがまさにそのスズメバチのような状態である。
「ええい!鬱陶しい」
 そうやってルシフェルは抵抗するが、幾度となく大勢の人数に魔法をかけられ抵抗し難い状態となっている。
「逃がすなー!」
「どんどん悪魔に魔法をかけまくれー‼︎」
「全員、吸収魔法を存分に使えー!」
「オノレェェェッ‼︎」
 ルシフェルは片手に持っているはずの剣を振る。しかし、そこに剣はあらず拳を握っていた。
「探し物はこれかな?」
 包囲状態の外側にいるルガは右手を掲げルシフェルの持っていた赤い剣を突き出すがルシフェルには見えることなく時間が過ぎていった。
 それから数分後、ルガは密集し包囲されたルシフェルの様子を伺おうと戦闘員たちに指示を出す。
「そろそろ頃合いかなぁ、一旦離れて」
と言うと一部の戦闘員はルシフェルの元から退け真ん中からぐったりとした状態の悪魔がみえた。
「おー…いい感じにくたばってるねぇ…。」
 ジョセフはルガの近くによると、一件落着だな、などと労う気持ちで言葉をかけた。
 しかし、次の瞬間ルシフェルはルガを手で握ろうとガバッと見を起こしてルガに襲いかかる。だが、ルガは一瞬にしてルシフェルの手をすり抜け顔に飛び蹴りを一発お見舞いする。
 そして、ルシフェルは完全に気絶しルガの張ったバリアの上に落ちる。その後を戦闘員やルガたちが追いかけるがルシフェルはピクリとも動くことはなかった。
「しっかし、いつこれだけの戦闘員を集めたんだ?」
「簡単な話さ。俺たちがコサインズのアジトである建物に入る前にこの援軍を読んだのさ」
「まさか、こうなることを知って…」
「違う違う、念のためってやつだよ」
ジョセフは驚いた表情でルガに聞き返す
「念のためぇ⁉︎じっじゃあここに一つの都市を崩壊させるほどの爆弾とかあったらどうするつもりだったんだよ」
「よく考えてみろ、宇宙一科学や魔学の進んだ星の大都会でそう言った類に対しての対策を練っていないはずがないだろ」
 これにジョセフは納得する。ここまで来るとジョセフも言い返せなかったからだ。彼自身も武器のスペシャリストであり、この都市を破壊することのできるほどの強力な爆弾がまだ存在しないということも。
 すると二人がそう話し込んでいる間にも異変は起こった。
「悪魔の様子がおかしいぞ!」
攻撃体制!
 周りの戦闘員たちは身構える。ルシフェルは仰向けになったまま反応はない。彼の体の後背には黒い魔法陣が現れ、体は少しずつ魔法陣の中に入っていく。
戦闘員のうち一人は、逃がすな‼︎
と言ったが、その頃にはもう遅く誰一人ルシフェルの体に触れることができず、ルシフェルは魔法陣の中に消えていった。
「逃げられた」
その言葉に周囲は沈黙し、この瞬間コサインズとルガたちによる戦いは幕を閉じた。






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