32 / 41
番外編
ヒート話 4※
しおりを挟むチカチカと火花が目の前で弾け、快感が全身を走り抜ける。
だがそれと同時にようやく満たされた腹の奥が気持ち良いと幸せに鳴き、ノアはシュナの陰茎を深く深く咥え込んだ蕾を収縮させ、中出しの気持ち良さにまたしても精液をぱたた、とシーツに飛び散らせた。
シュナの為だけの、ノアの奥。そこに一滴も溢さぬようにとシュナは尚も腰を深く押し付けたまま、小さく息を乱している。
それはまるで獣の交尾のような体勢で、そして荒々しく注ぎ込まれ続けるシュナの精液がヒートの熱をその瞬間だけ和らげ、だが快楽は絶えずとぐろを巻いて自身を昂らせていて、ノアはひくひくと全身を震わせながら甘い吐息を溢した。
「……ノア、大丈夫か?」
暫くお互い動くことなく息だけをしていたが、不意に柔らかくシュナが囁いてくる声にノアはピクッと身を跳ねさせた。
それは穏やかで低く、とびきり甘くて。
労るよううなじや肩、肩甲骨に口付けを落としてくるシュナにノアは尚も快感にビクンッと震えつつ、へにゃりと笑った。
「んっ、ぁ、……きもち、です……」
未だ終わらぬ、シュナの射精。
目一杯に広がった蕾はシュナの先走りとノアの愛液でぬらぬらと縁を濡らし、だがぴったりと埋めつくされたシュナの陰茎を離さないと吸い付いている。
その硬い怒張が自身の奥の奥、大事な赤ちゃんを育てる為の場所にぐぷっと亀頭を潜り込ませながら精液で埋めつくそうとしている感覚にノアは苦しさもありながら恍惚とした表情を浮かべ、そんなノアを見てはシュナは汗ばんで肌に張り付くノアの髪の毛を梳いた。
「ノア、体勢変えて良いか……?」
「……っ、はい」
くたりと沈むノアを労りながらも、顔が見たい。とシュナが健気に呟く。
そんな可愛らしいシュナの言葉にノアは途端にきゅんきゅんと胸を疼かせ、へらりと笑顔を見せた。
それはだらしなく、鼻水をずびずび啜っている顔はお世辞にも綺麗とは言えないが、やはりシュナにとっては世界一可愛くて。
そんなノアのこめかみにキスをしたシュナがそれからノアの腕を取ったが、抜けぬよう深く自身の中に沈んだままのシュナの陰茎にノアが小さく苦しげに呻いたのが分かった。
「っ、ノア、ごめん」
「だい、じょうぶっ、ですから……」
精液はようやく止まったが、アルファ性のせいで膨らんだままの根元。
それがノアを苦しめていると知っているシュナは叱られた子犬のような態度でノアを見ては、それでも向かい合わせになって顔中にキスの雨を降らせてくる。
そんなシュナの可愛すぎる態度にノアは胸に込み上げる幸せに頬を染め、そしてシュナの体をぎゅっと抱いた。
汗が引き始めているのか、ひんやりとしたシュナの滑らかな肌。
その褐色の肌と均等の取れた体はやはりどきりとするほど格好良く、こんなにも魅力的な人が自分の番いだなんて。とノアは恍惚の表情を浮かべながら、ぴったりと密着させるよう足をシュナの腰に巻き付けた。
「あっん……ん、」
「っ、……愛してる、ノア」
ちゅ、ちゅ。と余すことなく顔中にキスをするシュナが優しく囁き、微笑む。
いつもは美しくも鋭い瞳がくたりと蕩け、可愛らしく犬歯を覗かせるシュナのその愛らしさにノアも冷めぬ熱に浮かされながらも、ふにゃりと微笑み返した。
「……シュナさん、愛してます」
「俺も愛してる」
優しく唇を重ね合わせ、はむはむと互いの唇を噛みながら、二人がクスクスと笑う。
それは穏やかで甘く、そしてノアは幸せそうな表情のまま、自身の腹にそろりと手を這わせた。
さすさすと腹を擦り、シュナが埋まったままの気持ち良さに小さく喘ぎながらも、とろんとした眼差しでシュナを見たノア。
「シュナさんとの赤ちゃんが欲しいです……」
そう呟いたノアの真っ赤な艶々の唇は綺麗な弧を描いていて、その表情の美しさと言われた台詞にシュナは目を見開き、だが同じよう、幸せそうな顔をした。
「……きっとお前に似て可愛いだろうな」
ノアの言葉に同調し頬を優しく撫で、慈しむよう鼻先をすりすりと擦り合わせるシュナ。
少し前まではオメガになる事に怯え、ましてや自分と番えないならオメガになんてなりたくなかった。だなんて泣いていたノアを想えば、こうして自身がオメガである事を受け入れ、あまつさえ自分との子どもが欲しいと呟くノアに、嬉しくない訳がなく。
……どうしようもなく愛しい。とシュナは瞳を甘くたゆませては細め、またしても鼻先を擦り合わせた。
その優しい仕草にノアがふふっと小さく声を上げて笑い、同じようにすりすりと鼻先を触れ合わせる。
「俺はシュナさんに似てて欲しいです」
だなんて言いながらシュナの襟足を撫でてるノアは、可愛らしくはにかんでいて。
だがその瞳はまたしても欲に濡れ潤み始めており、もうシュナの根元が戻り始めているのが寂しいと言わんばかりに、ノアが熱い吐息を溢した。
「……シュナ、さん……、」
ぽつりと名前を呼ぶノアの声はやはり熱にくぐもり甘く、たった一回の交わりでは到底ヒートは収まらないとノアがもじとじと腰を揺らし始めれば、それに自身の陰茎が刺激されたシュナもまた、瞳をギラつかせながらノアを見た。
それから二人はベッドの上で何度も何度も互いを求めあい、ノアはシュナが少しでも離れようとすれば泣き言を溢して嫌がり、決して自身の中から抜くことを許さなかった。
そんなノアにシュナもヒートがどれほど強い繋がりを求めるのか理解していて、ずっとノアを慰めるよう繋がったままにし、それは食事中でも、僅かな睡眠の時も変わらず、食事中はノアを膝の上に乗せて自身を埋めたままノアに食事を与え、眠る時も後ろからぴったりと抱き締めたまま抜かずに眠り、何度も何度も愛してると囁いては、愛を与え続けた。
──そうしてシュナがノアにひたすら快楽と安心と愛を献身的に捧げてから、早数日。
シュナの上で気持ち良さそうに腰を振り、それでも、もう無理。と気持ちよすぎて動けずへにゃりと倒れ込んだノアを抱きシュナが下から激しく突き上げ、何度目か知らぬ精液をノアの奥の奥に注ぎ終わった頃。
ようやく燃えるようなヒートが収まったのか、ノアはシュナの上でひくんひくんと淫らに、だが可愛らしく身を震わせながらも、はぁ……。と疲労とも安堵とも呼べるような大きな息を吐き出した。
「……ノア、収まったか?」
「っあ、ん、……はい、たぶん、も、だいじょうぶです……」
ノアの匂いが、いつもの甘く、だが爽やかな桃の香りに変わってきている事に気付いたシュナが、ゆるりと労るようノアの腰を撫でる。
その刺激に喘ぎながら、汗やら涙やら互いの精液やらでぐしょぐしょになったノアはそれでも変わらず、綺麗に微笑んだ。
「頑張ったな」
体力的にも精神的にも疲れるのはノアの方だと理解しているシュナが、よしよし。とノアの髪の毛を梳き、笑う。
そんなシュナも汗にまみれていて、だがそれが誰よりも格好良いとノアはシュナの首筋に顔を埋めては、優しいシュナの手の感触と大好きなシュナの強くて穏やかなアルファの匂いを、肺一杯吸い込んだ。
それから二人はしばらくじっとしていたが、ノアが完全に落ち着いたと確信したのか、シュナはノアを風呂に入れるべくブランケットでノアをくるんで抱きながら、着替えと清潔なタオルを持って小屋を出た。
数日ぶりに出た外は、もう大分春の陽気に溢れていて。
その空気は夜だというのに暖かく、新鮮な匂いをノアはめいっぱい吸い込んだ。
群れの穏やかな香りと、春の爽やかさ。
そして夜の静けさが身を浸し、シュナに抱き付いているノアは幸福ながらも全身が筋肉痛で悲鳴をあげているとシュナの首に睫毛を刺しながら、目を閉じた。
「眠いなら寝てて良い」
ノアがうとうととしているのを感じたのかそう囁いたシュナが、ノアの汗を掻いている髪の毛に、そっと甘く口付ける。
それはやはりどこまでも優しく献身的で、……こんなにも優しいアルファだって存在していると数年前の自分に言ってもきっと信じてくれないだろうな。だなんてノアはぼんやりと思いながらも、歩き出しつつノアを抱き締めたまま背中をトントンと撫でてくるシュナに、くたりと身を任せた。
シュナの体温や匂いはやはりとても穏やかで優しく、ノアはうっとりとした心地のまま、その撫であやす大きな掌に促されるよう、キラリと目の端を幸福な涙で湿らせながらも、幸せな夢に落ちるべく意識を手放した。
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
風紀“副”委員長はギリギリモブです
柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。
俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。
そう、“副”だ。あくまでも“副”。
だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに!
BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。
悪役令嬢の兄です、ヒロインはそちらです!こっちに来ないで下さい
たなぱ
BL
生前、社畜だったおれの部屋に入り浸り、男のおれに乙女ゲームの素晴らしさを延々と語り、仮眠をしたいおれに見せ続けてきた妹がいた
人間、毎日毎日見せられたら嫌でも内容もキャラクターも覚えるんだよ
そう、例えば…今、おれの目の前にいる赤い髪の美少女…この子がこのゲームの悪役令嬢となる存在…その幼少期の姿だ
そしておれは…文字としてチラッと出た悪役令嬢の行いの果に一家諸共断罪された兄
ナレーションに
『悪役令嬢の兄もまた死に絶えました』
その一言で説明を片付けられ、それしか登場しない存在…そんな悪役令嬢の兄に転生してしまったのだ
社畜に優しくない転生先でおれはどう生きていくのだろう
腹黒?攻略対象×悪役令嬢の兄
暫くはほのぼのします
最終的には固定カプになります
モブに転生したはずが、推しに熱烈に愛されています
奈織
BL
腐男子だった僕は、大好きだったBLゲームの世界に転生した。
生まれ変わったのは『王子ルートの悪役令嬢の取り巻き、の婚約者』
ゲームでは名前すら登場しない、明らかなモブである。
顔も地味な僕が主人公たちに関わることはないだろうと思ってたのに、なぜか推しだった公爵子息から熱烈に愛されてしまって…?
自分は地味モブだと思い込んでる上品お色気お兄さん(攻)×クーデレで隠れМな武闘派後輩(受)のお話。
※エロは後半です
※ムーンライトノベルにも掲載しています
目が覚めたら黒髪黒目至上主義の世界に転生していたみたいです
抹茶もち
BL
突然異世界に転生してしまったぽわぽわ主人公が各方面からドロドロに愛されお嫁さんになって幸せにされるお話。
目が覚めるとミスラルド王国、公爵家次男のノア・フローレスに突然転生した主人公は、なんとなくある日本の記憶に引っ張られつつも前向きに気ままでマイペースに過ごしていた。
───ミスラルド王国があるこの世界、実は女性が滅んだ世界であった。
しかし人口が減退の一途を辿っていたある日、神託が下る。今後生まれてくる黒髪黒目の男児は手順を踏めば子を孕む事ができる、と。
その神託以降、黒髪黒目の男児は大事に大事にされるようになった。
そして主人公が転生したノアは黒髪黒目。
「え?僕、お嫁さんになるの?」
なんだかんだ気付くと色んな人にドロドロに愛されているお話になる予定です。
✱転生時は10歳のショタです。しばらくはほのぼのの予定。
✱展開はおそめ。
✱息抜きに勢いで書き始めたので世界観はふんわりとしています。
✱このお話は総受けです。苦手な方は回避をお願い致します。
✱男性妊娠、出産が出来る世界観です。こちらも苦手な方は回避をお願い致します。
告白してきたヤツを寝取られたらイケメンαが本気で囲ってきて逃げられない
ネコフク
BL
【本編完結・番外編更新中】ある昼過ぎの大学の食堂で「瀬名すまない、別れてくれ」って言われ浮気相手らしき奴にプギャーされたけど、俺達付き合ってないよな?
それなのに接触してくるし、ある事で中学から寝取ってくる奴が虎視眈々と俺の周りのαを狙ってくるし・・・俺まだ誰とも付き合う気ないんですけど⁉
だからちょっと待って!付き合ってないから!「そんな噂も立たないくらい囲ってやる」って物理的に囲わないで!
父親の研究の被験者の為に誰とも付き合わないΩが7年待ち続けているαに囲われちゃう話。脇カプ有。
オメガバース。α×Ω
※この話の主人公は短編「番に囲われ逃げられない」と同じ高校出身で短編から2年後の話になりますが交わる事が無い話なのでこちらだけでお楽しみいただけます。
※大体2日に一度更新しています。たまに毎日。閑話は文字数が少ないのでその時は本編と一緒に投稿します。
※本編が完結したので11/6から番外編を2日に一度更新します。
あなたの世界で、僕は。
花町 シュガー
BL
「あなたの守るものを、僕も守りたい。
ーーただ、それだけなんです」
主人公ではない脇役同士の物語。
***
メインCP→ 〈鼻の効かないα騎士団長 × 選ばれなかったΩ〉
サブCP→ 〈α国王陛下 × 選ばれたΩ〉
この作品は、BLove様主催「第三回短編小説コンテスト」において、優秀賞をいただきました。
本編と番外編があります。
番外編は皆さまからいただくリクエストでつくられています。
「こんなシチュエーションが読みたい」等ありましたらお気軽にコメントへお書きください\(*ˊᗜˋ*)/
【完結】伝説の勇者のお嫁さん!気だるげ勇者が選んだのはまさかの俺
福の島
BL
10年に1度勇者召喚を行う事で栄えてきた大国テルパー。
そんなテルパーの魔道騎士、リヴィアは今過去最大級の受難にあっていた。
異世界から来た勇者である速水瞬が夜会のパートナーにリヴィアを指名したのだ。
偉大な勇者である速水の言葉を無下にもできないと、了承したリヴィアだったが…
溺愛無気力系イケメン転移者✖️懐に入ったものに甘い騎士団長
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる