やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

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~宣言解除後の日常~(140)

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『ウイーン』
 再び、耳元で音がした。
 すぐに、
『見つけたぞ』
 不気味な声が聞こえた。
『ウイーン』
『ウイーン』
『この恨みはらさでおくべきか』
『どこでもドア~』
 電子的な音声のロボットたちが、倉橋の隠れている売店の周囲に、どんどん集まってきているようだ。

(勘弁してくれ)
 倉橋は、ぶるぶる震え始めた。
 何とか、命だけは助かったと思ったのだが、そんなに甘い世界では無いようだ。
 アート界の宝石ともいえる【デュシャンの小便器】のレプリカや、【警備ロボット】に、自身の【尿】をかけたのだから、とても逃げられるものではないだろう。

「助けてくれ!」
 倉橋は叫んだ。
 倉橋は、立ち上がって、売店の中から、【ゆく年くる年】のチラシや、古い新聞紙や空き缶などを、ロボットに向かって投げつけていた。 
 もう、滅茶苦茶だ。
(ロボットな悪霊ども、退散してくれ)
 倉針は祈った。
 ――ハッタリでもいいから、この場をしのぎたかった。
 周囲に、鈍い音が響いた。
 空き缶の幾つかが、ロボットの頭部に当たったようだ。
 
『ぎぎぎぎぎ』
 ロボットが変な声を出している。
 何があったのか。打ち所が悪かった(良かった)のかもしれない。
『ぎぎぎぎぎ』
 という声を合図に、売店を囲んだまま、突然、異様なほどに(!)静かになってしまった。
 売店を囲んだ数百体のロボットたちは、身動きすらしない。
 かえって不気味だった。
 ソーシャルディスタンスで密を避けるつもりなのか。はたまた、飛沫感染を防ぐつもりなのか。
 ――でも、ロボットだから関係ないだろ、君たち。

 そのうち、
『了解。新しい情報を傍受しました。ジャンルは【政治経済】。全員で【共有】します』
 ロボットの一人が言った。
 さらに、
『【共有】』
『【共有】』
『この宣言解除後の日常も、そろそろ次の章に、進むだろうな』
 別のロボットが反応した。
「次の章?」
 倉橋が思わず聞いた。
『そうだ。情報を傍受したんだ。そろそろ、君たちの国のトップが、【緊急事態】の宣言を再び出すようだ。警備ロボット業界は、その噂でもちきりなんだ』
 でも、
「君らに関係ないだろ」
 倉橋が怒鳴る。
 倉橋は、虚勢を張っているだけだった。
 実際は、ロボットの行動が理解不能だった。気味が悪い。いったい、どうしたんだ。こいつら。
 
 すると、
『ウイーン』
『いや。宣言のあるなしで、出動が増えたり減ったり、君たち人間どのには、僕ら【警備ロボット】は振り回されて迷惑しているからね。いつも』
『ハハハハ』
『ウイーン』
『どこでもドア~』
『ウイーン』
『ぎぎぎぎっぎ』
『宣言解除後の………非日常?』
 警備ロボットたちは、蜂の巣をつついたような騒ぎとなった。

 いずれにしても、ロボットたちの言ってることは、それほど間違ってはいない。
 コイツらには、全てお見通しのようだ――さすが、AI 人工知能(5G対応)。
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