やる気が出る3つの DADA

～宣言解除後の日常（44）～

（マジか）
　倉橋は、その場に立ち尽くしていた。

　地に足が着いているはずの、この【現実世界】も、ファンタジックな【ＶＲゲーム】化が進んでいるのだろうか？
「事務所まで、案内していただけますか？」　
　ＣＡの若い女が、また言った。
　女は、ずっとマスクをしたままだ。
「なぜです？」
「なぜって」
「なぜ、僕に頼むんですか？」
　状況が、全く理解できなかった。
　すると、
「入り口のところに立っていた警備員の方に、あなたに事務所まで案内して貰うように言われたもので」
　ＣＡは、言った。
　彼女が言っているのは、あの男のことらしい。
　頭が痛くなってきた。男の意図も、女が現れた意味も全くもって不明だった。

「わかりました」
　倉橋は、やむを得ず了承した。
　案内の依頼を断れなかったのは、この若い女の雰囲気が、どこか【ガスマスクの少女】に、似ていたからだ。
（他人の空似）
　こんな言葉も、心に浮かんだ。
　混乱が著しく、一瞬、意識を失いそうになったほどだった。

　今や結果的に、（う●こがしたい）という欲求だけが、倉橋に【現実感】を与えているという状況だった。
　―――いずれにしても、トイレは、また【お預け】になりそうだった。