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~宣言解除後の日常(18)~
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「ナイフ?」
倉橋が呟く。
倉橋は、そのナイフを手に取った。それは、まるで手に取ってくれと言わんばかりに、ぽつねんと置いてあったのだ。
(誰かが、置き忘れたものだろうか?)
倉橋は辺りを見回した。
誰もいるはずがなかった――駅員は、ベビーカーの回収中で、元々客の姿は皆無で、構内は閑散としていた。もう、赤ちゃんの泣き声すら聞こえなかった。
階段の途中で、果物ナイフを握りながら、倉橋は途方に暮れていた。何やら、このナイフには物語を呼び込むような、不思議な力が備わっているような気がしたのだ。
倉橋は、そのまま階段を登り始めた。
すぐに、
「あ」
倉橋が声を上げる。
倉橋は、無人の階段フロアの片隅に、あるものを発見した。
それは、焦げ茶色の紙袋だった。
あまり目にしたことの無い、厚手の紙袋が一つ上の階段の隅っこに、置き去りにされているのだ。中に何が入っているかは、ここからだと分からない。
(何やら、物語の予感がするな)
その物語が、どんな物語なのかは、まだ何一つ分からなかった。
――倉橋は、紙袋のところまで歩いて行った。紙袋は、割としっかりとしたつくりである。近づくと、袋から強い臭気が漂ってきた。
倉橋が呟く。
倉橋は、そのナイフを手に取った。それは、まるで手に取ってくれと言わんばかりに、ぽつねんと置いてあったのだ。
(誰かが、置き忘れたものだろうか?)
倉橋は辺りを見回した。
誰もいるはずがなかった――駅員は、ベビーカーの回収中で、元々客の姿は皆無で、構内は閑散としていた。もう、赤ちゃんの泣き声すら聞こえなかった。
階段の途中で、果物ナイフを握りながら、倉橋は途方に暮れていた。何やら、このナイフには物語を呼び込むような、不思議な力が備わっているような気がしたのだ。
倉橋は、そのまま階段を登り始めた。
すぐに、
「あ」
倉橋が声を上げる。
倉橋は、無人の階段フロアの片隅に、あるものを発見した。
それは、焦げ茶色の紙袋だった。
あまり目にしたことの無い、厚手の紙袋が一つ上の階段の隅っこに、置き去りにされているのだ。中に何が入っているかは、ここからだと分からない。
(何やら、物語の予感がするな)
その物語が、どんな物語なのかは、まだ何一つ分からなかった。
――倉橋は、紙袋のところまで歩いて行った。紙袋は、割としっかりとしたつくりである。近づくと、袋から強い臭気が漂ってきた。
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