やる気が出る3つの DADA

Jack Seisex

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兄貴の声⇔祭りの後✕後の祭り⇔ホログラムのグラム数

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『どうしたんだよ、ジュニア』
 それは、間違いなく兄貴の声だった。

「兄貴」
 倉橋は呟いた。
 兄貴の声は、倉橋が首を絞めている『火星人』の頭部から漏れてくる。
(兄貴?)
 驚いて、腕の力を緩める。
「ぐぅぅぅ…」
 火星人は、その場にゆっくりと崩れ落ちた。
 すると、
『シュュュュゥゥゥゥ』
 火星人の形をしていたホログラムは、徐々に形を変えていき、やがて、兄貴の姿になった。

 何と、倉橋が、殺意と供に全力で首を絞めていたバケモノは兄貴だったのだ。
「どうしてこんなことに」
 倉橋が、兄貴に駆け寄る。
「大丈夫だ。俺は、ホログラムだから痛くも痒くもない」
「しかし」
 倉橋が、声を詰まらせる。
「ジュニア。そんなことより、ホログラムなのに、手触りがあることの方が不思議じゃないか?」
「え」
 その通りだ。
 兄貴の言う通りだった。半ば無意識だったが、ホログラムなのに、兄貴の身体が重かったことに違和感を持っていたのだ。
「俺は、ホログラムとしても、まだ実験段階なんだ」
「実験段階?」
「俺は、某国立大学出身の科学者が立ち上げたベンチャー企業で、モルモット扱いされてる」
「どういうこと?」
「あの女」
「あの女?」
「うん。あの女の陰謀だ。あの女は、俺を殺した後、ホログラムの会社に俺の死体を売りつけたんだ」
「へぇ」
「その会社では、ホログラムを使った広告なんかを開発していて、画期的なのは、ホログラムに触感や重さを感じさせるということだ」
「でも、ホログラムに重さがあって、どうするの?」
「まだ、実験段階だが、広告や多様なメディアで使うつもりらしい。ネット通販で、客に手触りを確かめさせたり、アダルトビデオ業界で女の子をホログラム化したり、ビジネスとしての可能性は無尽蔵にある」
「……」
「いずれにしても、俺は、まだ実験段階のモルモットで、ホログラムとして、きちんと完成するかも分からない」
 兄貴が、自嘲的に笑った。
「兄貴。俺も、アンドロイドとして、未熟なんだから一緒だよ」
 倉橋は、兄貴を慰めた。
 
 会場では、盆踊りの音楽が鳴り響く中、他の『火星人』たちが、狂ったように踊り続けている。
 だが、そのうち、辺りがザワザワし始めた。
「○△▼?!」
「○△▼?!」
 異変に気付いた他の火星人たちが、ゾロゾロと近寄ってきたのだ。
 倉橋は、あまりの不気味さに身を固くした。
 意味不明の異星人の会話は、そのうち、子供たちの元気な笑い声に変わった。 
「あはははは」
 火星人たちは、申し合わせたように、タコやイカのような被り物を、一斉に頭から外した。
  中から、現れたのは、見覚えのある小学校(=DADAの王国)のクラスメートたちの顔だった。
 子供たちは、にこにこ笑いながら、倉橋たちを眺めている。
 まだ、どういうことか分からない。

「ジュニア、俺が全て説明するよ」
 盆踊りの音楽が流れる中、兄貴は語り始めた。
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