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色鮮やかなオオゴチョウ
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その後も桔平くんの口数はとても少なかったけれど、飲み会自体は和やかに進んだ。
長岡さんも場の空気に慣れてきたらしく、ぎこちなかった顔に少しずつ自然な笑顔が浮かんできて、何故かホッとしてしまった。
そして2時間の飲み会は無事終了。みんないい感じに打ち解けて、親交が深まったっぽい。だけど上機嫌でお酒を飲みまくっていた小林さんは、終盤には半分寝ているような状態だった。
「あぁほら、七海。しっかり自分で歩きなさい」
「歩けない~!翔流に寄りかかる~!」
こっちはこっちで、足元がおぼつかない七海の体を翔流くんが支えてあげている。
私はあまり飲んでいなかったし、もちろん桔平くんもいつも通り酔わない程度にセーブしていた。結衣と葵は途中からソフトドリンクに切り替えていたから、まったく問題なさそう。
「じゃあ俺、一佐連れて帰るから」
小林さんの小さな体を支えながら、長岡さんが言った。
長岡さんは結構飲んでいたのに、全然平気みたい。お酒強いんだ。でも小林さん、軟体動物みたいにぐでんぐでんになっているけれど、ひとりで連れて帰れるのかな。
「長岡さん、大丈夫?」
「大丈夫だよ、いつものことだし。一佐の家は通り道だから」
「そっか……気をつけてね」
「ありがとう。愛茉ちゃんも気をつけて……って、浅尾と一緒だから大丈夫か」
私と長岡さんのやり取りを気にすることもなく、桔平くんはスマホを見ている。
間に、葵がずいっと割り込んできた。
「英哉くん、またLINEするね?」
やっぱり葵は、長岡さんを落とす気なんだろうなぁ。
七海のようにいきなりホテル、みたいなことはしないタイプだから、時間をかけて少しずつ攻めていきそう。
「あ、えっと……お、俺あんまり返せないかもしれなけど……」
「大丈夫、分かってるから。卒業制作とかバイトで忙しいんだもんね?」
「ま、まぁ……うん」
「時間がある時、また遊んでね」
あまり押しすぎると引かれてしまうと判断したのか、葵はそれ以上言わなかった。
そして東京駅で解散して、それぞれ帰路につく。長岡さんは、小林さんを抱えながら山手線のホームへ向かっていった。
私と桔平くんは中央線。車内は結構空いていて、ゆったりと座席に座れた。ようやく解放されたといった感じで、桔平くんが軽く伸びをする。
「ねぇ、桔平くん」
「んー?」
「小林さんのこと、一佐くんって呼んだら怒る?」
「そんなことで怒るわけねぇじゃん。アイツが喜ぶのは癪だけどな」
言いながら、大きな欠伸をした。
「……じゃあ、長岡さんは?英哉くんって呼んでもいい?」
「愛茉が呼びやすいように呼べばいいよ。翔流のことだって名前で呼んでんじゃん。それに愛茉は、長岡と仲良くなりてぇんだろ?」
「う、うん……」
改めて言葉にされると、何故か一気に罪悪感がこみ上げてくる。別に後ろ暗いものがあるわけじゃないのに。
ただ純粋に、長岡さんのことは人として好きなの。だってあんなに優しくて誠実な人って、そうそういないし。
長岡さんも場の空気に慣れてきたらしく、ぎこちなかった顔に少しずつ自然な笑顔が浮かんできて、何故かホッとしてしまった。
そして2時間の飲み会は無事終了。みんないい感じに打ち解けて、親交が深まったっぽい。だけど上機嫌でお酒を飲みまくっていた小林さんは、終盤には半分寝ているような状態だった。
「あぁほら、七海。しっかり自分で歩きなさい」
「歩けない~!翔流に寄りかかる~!」
こっちはこっちで、足元がおぼつかない七海の体を翔流くんが支えてあげている。
私はあまり飲んでいなかったし、もちろん桔平くんもいつも通り酔わない程度にセーブしていた。結衣と葵は途中からソフトドリンクに切り替えていたから、まったく問題なさそう。
「じゃあ俺、一佐連れて帰るから」
小林さんの小さな体を支えながら、長岡さんが言った。
長岡さんは結構飲んでいたのに、全然平気みたい。お酒強いんだ。でも小林さん、軟体動物みたいにぐでんぐでんになっているけれど、ひとりで連れて帰れるのかな。
「長岡さん、大丈夫?」
「大丈夫だよ、いつものことだし。一佐の家は通り道だから」
「そっか……気をつけてね」
「ありがとう。愛茉ちゃんも気をつけて……って、浅尾と一緒だから大丈夫か」
私と長岡さんのやり取りを気にすることもなく、桔平くんはスマホを見ている。
間に、葵がずいっと割り込んできた。
「英哉くん、またLINEするね?」
やっぱり葵は、長岡さんを落とす気なんだろうなぁ。
七海のようにいきなりホテル、みたいなことはしないタイプだから、時間をかけて少しずつ攻めていきそう。
「あ、えっと……お、俺あんまり返せないかもしれなけど……」
「大丈夫、分かってるから。卒業制作とかバイトで忙しいんだもんね?」
「ま、まぁ……うん」
「時間がある時、また遊んでね」
あまり押しすぎると引かれてしまうと判断したのか、葵はそれ以上言わなかった。
そして東京駅で解散して、それぞれ帰路につく。長岡さんは、小林さんを抱えながら山手線のホームへ向かっていった。
私と桔平くんは中央線。車内は結構空いていて、ゆったりと座席に座れた。ようやく解放されたといった感じで、桔平くんが軽く伸びをする。
「ねぇ、桔平くん」
「んー?」
「小林さんのこと、一佐くんって呼んだら怒る?」
「そんなことで怒るわけねぇじゃん。アイツが喜ぶのは癪だけどな」
言いながら、大きな欠伸をした。
「……じゃあ、長岡さんは?英哉くんって呼んでもいい?」
「愛茉が呼びやすいように呼べばいいよ。翔流のことだって名前で呼んでんじゃん。それに愛茉は、長岡と仲良くなりてぇんだろ?」
「う、うん……」
改めて言葉にされると、何故か一気に罪悪感がこみ上げてくる。別に後ろ暗いものがあるわけじゃないのに。
ただ純粋に、長岡さんのことは人として好きなの。だってあんなに優しくて誠実な人って、そうそういないし。
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