ホウセンカ

えむら若奈

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ヒマワリ微笑むあの丘で

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「すみません、お父さん。昨日は迷惑かけてしまって」
「いやいや、愛茉が飲ませすぎたのが悪いんだから。それにしても、ちゃんと覚えているんだね」
「記憶は飛んでませんね」

 そう言いつつもフラフラしている桔平くんに、お水を渡す。喉が渇いていたみたいで、私の隣に座りながら一気に飲み干した。

「二日酔い、大丈夫そう?朝ご飯どうしよっか」

 智美さんが私とお父さんの前にトーストを置きながら、桔平くんの顔を心配そうに覗き込んだ。低血圧だし寝起きの顔色はもともと悪いけれど、特にいつもと変わらない様子に見える。でも私のせいで具合悪くなっていたら、どうしよう。

「二日酔いは大丈夫ですけど、食欲はないかも」
「じゃあ、スムージー作ってあげよっか」
「あ、それすげぇ嬉しいです」
「私もスムージー飲みたいー!」
「ちゃんと愛茉ちゃんの分も作るわよぉ」
 
 やっぱり智美さんって、完璧なお母さんだ。桔平くんも懐いてるし、本当に母性本能が強い人だなぁって、しみじみ感じる。

「桔平くん、ごめんね。調子に乗って飲ませすぎちゃって」

 洗面所で顔を洗って戻ってきた桔平くんに謝った。具合は悪くなさそうだし、とりあえずひと安心だけど。
 
「いいって。飲んだのはオレなんだし」
「でも私の頼みは断れないんだからって、お父さんに怒られちゃったもん」

 ちらりと視線を向けると、お父さんが苦笑する。桔平くんは私の頭をポンポンと叩いて、優しく笑いかけてくれた。

「オレも嬉しかったんだよ。やっと愛茉と酒が飲めるなぁって。調子に乗ったのはオレの方だから、謝んなって」
「桔平君は、愛茉に甘いなぁ」
「お父さんほどじゃないですよ」

 桔平くんとお父さんが、穏やかな笑みを浮かべる。

 やっぱり2人とも、何となく似ているな。つまり、どっちも私に激甘。それを分かっているから、私はどんどんワガママになってしまう。でも子供の頃は、ずっと我慢していたんだもん。少しくらい良いよね。

「ところで、今日は出かける予定あるのかな?」

 朝食を食べ終えると、お父さんが桔平くんに尋ねた。
 
「特に決めてないですね。どこか観に行きたいとは思ってるんですけど」
「桔平君さえ良ければ、今日は4人で出かけようか。僕が運転するから、少し遠出しよう」
「いいんですか?せっかくの休みなのに」
「せっかくの休みだから家族4人で出かけたいなって、智美と話してたんだよ」
「そうそう。今日は天気も良いし、みんなでドライブしたら気持ちいいだろうなぁって」
「行きたい!ね、桔平くん。みんなでお出かけしよ!」

 年末年始の帰省時は、あんまりお出かけできなかったもん。4人でドライブなんて、すごく楽しそう。
 
「まぁ、愛茉がそう言うなら……」
「そうと決まれば、さっそく支度しましょー!」
 
 なんか、いつも智美さんの号令でみんなが動き出す気がする。どんどん明るい方へ巻き込んでくれるから、今では姫野家の中心的存在。そこにいるだけで場が明るくなる人って、本当に憧れるな。
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