198 / 407
野山を彩るハクサンチドリ
4
しおりを挟む
「あ、浅尾は……俺のこと、不愉快じゃないわけ?」
前髪とメガネの奥から、探るような視線を向けられる。
長岡の目は、やたらと大きい。ピグミーネズミキツネザルに似ているな。いや、バイカルアザラシかもしれない。
「不愉快?なんでだよ」
「その……自分の彼女を好きな男って……」
「ああ、そのことか。別に、なんとも思わねぇよ。好きになるのは自由だろ」
気にするぐらいなら、気持ちを表へ出さなければいい。そう思ったが、長岡は気弱そうな見た目に反して自分の意思を強く持っていて、それを口にしてしまう性格だった。
自分のことが好きなのかというストレートすぎる質問をされたら、誤魔化せはしないだろう。しかも、好きな女相手に。
「余裕があるんだな。それだけ、愛茉ちゃんの気持ちを信じてるってことか」
「余裕とか、そういう問題じゃねぇよ。他人の気持ちなんてどうにもならないだろ。仮に愛茉が他のヤツを好きになったとしても、それは俺がコントロールできることじゃねぇもん」
「でも愛茉ちゃんは、浅尾以外を好きになりそうにないけど。本人も言い切ってたし」
「だろうな」
「やっぱり余裕じゃないか」
「愛茉と一緒に生活できるヤツなんて、そうそういねぇからな。本人もそれはよく分かってるんだろ」
潔癖症で神経質なだけじゃなく、何かにつけてしつこいし感情が重たくてワガママ。普通なら、見た目の愛らしさを帳消しにしてしまうぐらい、面倒に思うだろう。たとえ最初は可愛く感じたとしても、生活を共にするうちに嫌気がさしてくる男の方が多いはずだ。
愛茉自身も、自分の面倒すぎる性格を十分理解している。だから必死に自分を変えようと足掻いていた。
ただオレは何故か、癖が強すぎる愛茉の性格が病みつきになっている。愛茉の細かさを見て本気で嫌な気分になったことは一切ないし、特に不満も文句もなく言うことを聞く。これに関しては、相手が愛茉だからとしか言えなかった。
部屋の外からは、小林の独演会が聞こえてくる。長岡が、また緑茶を一口飲んだ。
「同棲……してるんだっけ」
「羨ましい?」
「……う、羨ましい」
こういう素直で正直な性格には、昔から好感を持っている。変な意地を張る姿は、これまで一度も見たことがない。
前髪とメガネの奥から、探るような視線を向けられる。
長岡の目は、やたらと大きい。ピグミーネズミキツネザルに似ているな。いや、バイカルアザラシかもしれない。
「不愉快?なんでだよ」
「その……自分の彼女を好きな男って……」
「ああ、そのことか。別に、なんとも思わねぇよ。好きになるのは自由だろ」
気にするぐらいなら、気持ちを表へ出さなければいい。そう思ったが、長岡は気弱そうな見た目に反して自分の意思を強く持っていて、それを口にしてしまう性格だった。
自分のことが好きなのかというストレートすぎる質問をされたら、誤魔化せはしないだろう。しかも、好きな女相手に。
「余裕があるんだな。それだけ、愛茉ちゃんの気持ちを信じてるってことか」
「余裕とか、そういう問題じゃねぇよ。他人の気持ちなんてどうにもならないだろ。仮に愛茉が他のヤツを好きになったとしても、それは俺がコントロールできることじゃねぇもん」
「でも愛茉ちゃんは、浅尾以外を好きになりそうにないけど。本人も言い切ってたし」
「だろうな」
「やっぱり余裕じゃないか」
「愛茉と一緒に生活できるヤツなんて、そうそういねぇからな。本人もそれはよく分かってるんだろ」
潔癖症で神経質なだけじゃなく、何かにつけてしつこいし感情が重たくてワガママ。普通なら、見た目の愛らしさを帳消しにしてしまうぐらい、面倒に思うだろう。たとえ最初は可愛く感じたとしても、生活を共にするうちに嫌気がさしてくる男の方が多いはずだ。
愛茉自身も、自分の面倒すぎる性格を十分理解している。だから必死に自分を変えようと足掻いていた。
ただオレは何故か、癖が強すぎる愛茉の性格が病みつきになっている。愛茉の細かさを見て本気で嫌な気分になったことは一切ないし、特に不満も文句もなく言うことを聞く。これに関しては、相手が愛茉だからとしか言えなかった。
部屋の外からは、小林の独演会が聞こえてくる。長岡が、また緑茶を一口飲んだ。
「同棲……してるんだっけ」
「羨ましい?」
「……う、羨ましい」
こういう素直で正直な性格には、昔から好感を持っている。変な意地を張る姿は、これまで一度も見たことがない。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
セカンドラブ ー30歳目前に初めての彼が7年ぶりに現れてあの時よりちゃんと抱いてやるって⁉ 【完結】
remo
恋愛
橘 あおい、30歳目前。
干からびた生活が長すぎて、化石になりそう。このまま一生1人で生きていくのかな。
と思っていたら、
初めての相手に再会した。
柚木 紘弥。
忘れられない、初めての1度だけの彼。
【完結】ありがとうございました‼
優しい微笑をください~上司の誤解をとく方法
栗原さとみ
恋愛
仕事のできる上司に、誤解され嫌われている私。どうやら会長の愛人でコネ入社だと思われているらしい…。その上浮気っぽいと思われているようで。上司はイケメンだし、仕事ぶりは素敵過ぎて、片想いを拗らせていくばかり。甘々オフィスラブ、王道のほっこり系恋愛話。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる