ホウセンカ

えむら若奈

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夕焼けに浮かぶベンジャミン

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「美味しかったねぇ。たまには外食もいいね」
「まぁ愛茉の飯が一番だけど、時々は息抜きしような」

 桔平くんは、料理の盛り付けが良い刺激になるみたい。確かに、盛り付けってアートだもんね。私も気分転換できた感じで、大満足。

 少しブラブラ歩いて原宿から山手線に乗ろうとした時、七海からLINEが来た。

『いまデート中?もしそうなら、無視していいよ』

 もしかして、翔流くんと何かあったのかな。原宿から帰るところだと返信すると、新宿にいるから会えないかって。

「どうかした?」
「七海が、新宿にいるからちょっと会えないかって。行ってきていい?」
「それなら、オレも行くよ」

 どうせ新宿で乗り換えだもんね。桔平くんも一緒でいいか七海に訊くと、ぜひ一緒に来て、だって。一体何なんだろう。

 七海は東口近くの、個室があるカフェにいるみたい。何となく嫌な予感がするとブツブツ言う桔平くんを宥めつつ、お店へ向かう。実は私もそうなんだけどね。あまり良い予感はしていない。

 お店に入って個室に通されると、七海は少し……ううん、かなり不機嫌そうな表情をしている。

「どうしたの?翔流くんにチョコ渡せた?」

 桔平くんと一緒に向かいのソファに座りながら尋ねると、七海は眉間にシワを寄せてハーブティーが入ったカップを割れんばかりに握りしめた。
 
「かけるん、彼女と会ってるんだって」
「……彼女?か、彼女!?」

 思わず大きな声が出ちゃった。翔流くん、彼女いたの?いつから?合コン行ってる時は彼女いないはずって、桔平くんは言ってたよね。

「浅尾っち、知ってた?かけるんに彼女いるの」
「いや、知らねぇ。つい最近まで、彼女できねぇって嘆いてたんだけどな」
「それ、いつ?」
「3,4日前だったかな」

 つまり七海との一夜があったのに、他の人と付き合い始めたってこと?それってどうなの……。
 
「とりあえず、大事な話があるから絶対に来てってここに呼んでる。彼女とはデートじゃなくて、ちょっと会うだけらしいし。だから2人とも、一緒にいてくれない?」
「え?でも、七海と翔流くんだけで話す方が……」
「愛茉と浅尾っちに、証人になってもらう。どういうつもりだったのか問い質すから」
「すげぇ外堀埋めてくじゃん」
「当たり前でしょ。私を本気にさせたらどうなるか、思い知らせてやる」

 桔平くんを見ると、明らかに「めんどくせぇ」と顔に書いてある。ほんっと、ごめんなさい。帰ったらチョコあげるね……。

「ほら、2人とも何か頼みなよ。奢るから」
「んじゃ、オレはミックスジュースで……」
「私、イチゴパフェにしていい?」

 まだ食うのかとでも言いたげな視線が、右側から突き刺さる。甘いものは別腹なのです。……さっきの店でもデザート食べただろ、みたいな顔してるし。

「いいよ、たくさん食べて。浅尾っちはジュースだけでいいわけ?」
「もう入らねぇよ。さっき、すげぇ食ったもんなぁ?」
「食べたけど、歩いて消費したもん」
「大して歩いてねぇだろ」
「いいよねぇ、2人とも。いつもめっちゃ仲良しでさ」

 七海がため息交じりで言った。……言葉を返しづらい。
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