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母へと贈るエーデルワイス
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「考えたら、一重から二重にしたぐらいで、あれこれ言われる筋合いないよね。お母さんが言ってた通り、お化粧みたいなものだもん。みんなしてるじゃない、アイプチとかテープとか使って」
「そりゃそうだ。化けるから化粧なんだろ。みんな偽りの顔面貼りつけて、堂々と闊歩してんじゃねぇか」
憑き物が落ちた愛茉は、以前と比べて明るく前向きな言葉が増えた。生来はそういう性格なのだろう。気の強さを感じる瞬間はこれまでにもあったし、自分を変えたいからと、ひとりで上京する決断力や行動力を持っている。
「前は自分の全部が大嫌いだったけど、今はこの顔も好きだよ。だって世界一可愛いでしょ?」
「ああ、すげぇ可愛いよ。しっかり見たいから、もうちょい明るくしていい?」
「それはダメ」
口を尖らせて、泡を軽く投げつけてくる。いちいち可愛いな。
瞼を二重にしただけでこれだけ綺麗になれるわけだから、愛茉はもともと整った顔立ちをしていると思う。何も悲観することはないはずなのに、愛茉の母親は完璧主義だったのかもしれない。その性格は、愛茉もしっかりと受け継いでいるようだ。
「桔平くんが可愛いって言ってくれるから、やっぱりこの顔で良かった。お母さんに感謝しなくちゃ」
両親を恨んでしまいそうな環境にあっても、愛茉は一途に慕い続けていた。それは幼い頃にたくさんの愛情を注がれていたことが、しっかりと刻み込まれているからだろう。三つ子の魂百までとは、よく言ったものだ。
ただその分、嫌悪の感情が自分へと向いていた。自分のせいで両親が離婚したと思い込み、とことん自虐する。それが自己肯定感の低さにつながってしまった。
それでも変わりたいと願って、自信のなさを自尊心で包み隠しながら、精一杯虚勢を張っていたのだろう。この世からいなくなりたいと思ったことは、数えきれないほどあるはずだ。
「そう言えば、桔平くんのお母さんってどんな人なの?」
「あー……なんつーか、無重量状態な人」
「無重量?」
「万有引力とか遠心力とか慣性力をすべて打ち消して重さをなくしてしまえる感じ」
「……ふーん?」
これは理解していない顔だな。愛茉の前ではつい、思い浮かんだ単語がそのまま口をついてしまう。
オレの母親は、とにかく明るい人だ。さくらと楓が喧嘩をしている時でも、険悪な空気に思いきり割って入って、のほほんとした顔で焼きたてのクッキーと紅茶を出してくる。人の毒気を抜くことに関しては天下一品だった。
「そりゃそうだ。化けるから化粧なんだろ。みんな偽りの顔面貼りつけて、堂々と闊歩してんじゃねぇか」
憑き物が落ちた愛茉は、以前と比べて明るく前向きな言葉が増えた。生来はそういう性格なのだろう。気の強さを感じる瞬間はこれまでにもあったし、自分を変えたいからと、ひとりで上京する決断力や行動力を持っている。
「前は自分の全部が大嫌いだったけど、今はこの顔も好きだよ。だって世界一可愛いでしょ?」
「ああ、すげぇ可愛いよ。しっかり見たいから、もうちょい明るくしていい?」
「それはダメ」
口を尖らせて、泡を軽く投げつけてくる。いちいち可愛いな。
瞼を二重にしただけでこれだけ綺麗になれるわけだから、愛茉はもともと整った顔立ちをしていると思う。何も悲観することはないはずなのに、愛茉の母親は完璧主義だったのかもしれない。その性格は、愛茉もしっかりと受け継いでいるようだ。
「桔平くんが可愛いって言ってくれるから、やっぱりこの顔で良かった。お母さんに感謝しなくちゃ」
両親を恨んでしまいそうな環境にあっても、愛茉は一途に慕い続けていた。それは幼い頃にたくさんの愛情を注がれていたことが、しっかりと刻み込まれているからだろう。三つ子の魂百までとは、よく言ったものだ。
ただその分、嫌悪の感情が自分へと向いていた。自分のせいで両親が離婚したと思い込み、とことん自虐する。それが自己肯定感の低さにつながってしまった。
それでも変わりたいと願って、自信のなさを自尊心で包み隠しながら、精一杯虚勢を張っていたのだろう。この世からいなくなりたいと思ったことは、数えきれないほどあるはずだ。
「そう言えば、桔平くんのお母さんってどんな人なの?」
「あー……なんつーか、無重量状態な人」
「無重量?」
「万有引力とか遠心力とか慣性力をすべて打ち消して重さをなくしてしまえる感じ」
「……ふーん?」
これは理解していない顔だな。愛茉の前ではつい、思い浮かんだ単語がそのまま口をついてしまう。
オレの母親は、とにかく明るい人だ。さくらと楓が喧嘩をしている時でも、険悪な空気に思いきり割って入って、のほほんとした顔で焼きたてのクッキーと紅茶を出してくる。人の毒気を抜くことに関しては天下一品だった。
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