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約束のアングレカム
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「さて、今後のことだけど。愛茉は、やっぱり引っ越したいかな?」
お父さんが言った。
空き巣が入った家に、ひとりで住み続けるなんて絶対に無理。怖いし気持ちが悪い。きっと眠れないもん。だけどまだ半年ちょっとしか経っていないのにまた引っ越すなんて、労力もお金もかなりかかる。これ以上、お父さんに負担をかけるのも嫌。
「……あの、お父さん」
どう答えようか考えを巡らせて黙っていると、桔平くんが椅子から立ち上がって、床に正座をした。
「愛茉と一緒に住むことを、許してもらえませんか?」
思いもしなかった言葉に、私もお父さんも目を丸くする。桔平くんは、とても真剣な表情だった。
「あの部屋には住みたくないだろうし、引っ越したとしても、やっぱり不安になると思います。愛茉自身が安心して過ごせないのは、オレも嫌です」
お父さんが、桔平くんの方に向き直る。私は何となく背筋を伸ばした。
「この部屋は一括で買ったので、ローンもないし家賃はかかりません。管理費と修繕積立金も、生活費もオレの稼ぎで十分賄えます」
「一括でって……どうやってそんな大金を?それに稼ぎって?」
「中学の時から、投資をやっています。小遣いと新聞配達で貯めた分を元手に始めました。長いことやっているからかなり利益は出ていて、今は損失リスクを最小限にしながら余剰金で運用している状態です。愛茉と2人で生活できるだけの分はしっかり確保しているし、預金もちゃんとあります。あとは……微々たるものですけど、絵の収入も」
「そうなのか……。まぁ、桔平君がいてくれると安心ではあるけども。ただ、お互いまだ学生だからねぇ……」
私は、内心ハラハラしながら2人のやり取りを聞いていた。
「もし別れたら……ってことを考えているのであれば、心配しなくて大丈夫です。その時はオレの預金を全部愛茉に渡します。何なら念書も書きます。まぁ、オレから別れを切り出すことは絶対にないですけど」
自信満々と言った感じの桔平くんに、お父さんは少し気圧されているように見える。小さく唸りながら何度も頷いて、今度は私の顔を真っ直ぐ見た。
「……愛茉は、どうしたい?」
「わ、私は……」
言っていいのかな。これって、私のワガママじゃない?
だって私が今まで通りあの家に住むって言っていたら、桔平くんもこんなこと言い出さなかったでしょ。もしかして、桔平くんに負担をかけることになるんじゃないの?
「愛茉。自分が思ってることを、正直に言っていいんだよ。お父さんは愛茉自身の気持ちが知りたいから。桔平君も、そうだろう?」
桔平くんが、優しい表情で頷く。
私は意を決して立ち上がって、桔平くんの隣に正座した。
お父さんが言った。
空き巣が入った家に、ひとりで住み続けるなんて絶対に無理。怖いし気持ちが悪い。きっと眠れないもん。だけどまだ半年ちょっとしか経っていないのにまた引っ越すなんて、労力もお金もかなりかかる。これ以上、お父さんに負担をかけるのも嫌。
「……あの、お父さん」
どう答えようか考えを巡らせて黙っていると、桔平くんが椅子から立ち上がって、床に正座をした。
「愛茉と一緒に住むことを、許してもらえませんか?」
思いもしなかった言葉に、私もお父さんも目を丸くする。桔平くんは、とても真剣な表情だった。
「あの部屋には住みたくないだろうし、引っ越したとしても、やっぱり不安になると思います。愛茉自身が安心して過ごせないのは、オレも嫌です」
お父さんが、桔平くんの方に向き直る。私は何となく背筋を伸ばした。
「この部屋は一括で買ったので、ローンもないし家賃はかかりません。管理費と修繕積立金も、生活費もオレの稼ぎで十分賄えます」
「一括でって……どうやってそんな大金を?それに稼ぎって?」
「中学の時から、投資をやっています。小遣いと新聞配達で貯めた分を元手に始めました。長いことやっているからかなり利益は出ていて、今は損失リスクを最小限にしながら余剰金で運用している状態です。愛茉と2人で生活できるだけの分はしっかり確保しているし、預金もちゃんとあります。あとは……微々たるものですけど、絵の収入も」
「そうなのか……。まぁ、桔平君がいてくれると安心ではあるけども。ただ、お互いまだ学生だからねぇ……」
私は、内心ハラハラしながら2人のやり取りを聞いていた。
「もし別れたら……ってことを考えているのであれば、心配しなくて大丈夫です。その時はオレの預金を全部愛茉に渡します。何なら念書も書きます。まぁ、オレから別れを切り出すことは絶対にないですけど」
自信満々と言った感じの桔平くんに、お父さんは少し気圧されているように見える。小さく唸りながら何度も頷いて、今度は私の顔を真っ直ぐ見た。
「……愛茉は、どうしたい?」
「わ、私は……」
言っていいのかな。これって、私のワガママじゃない?
だって私が今まで通りあの家に住むって言っていたら、桔平くんもこんなこと言い出さなかったでしょ。もしかして、桔平くんに負担をかけることになるんじゃないの?
「愛茉。自分が思ってることを、正直に言っていいんだよ。お父さんは愛茉自身の気持ちが知りたいから。桔平君も、そうだろう?」
桔平くんが、優しい表情で頷く。
私は意を決して立ち上がって、桔平くんの隣に正座した。
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