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いったい、どうしたっていうんだ?
しおりを挟む風呂に入ってから離れの部屋へと戻ったが、トンちゃんの部屋の前を通ると何やら話し声が聞こえた。
誰かと電話で話しているのだろうと、その時はそのまま自分の部屋に行くが、ベッドに寝転んでスマフォを見ていたら、急に大きな声を出すトンちゃんに驚いた。あの温厚そうな人が珍しい。俺の部屋まで聞こえる怒鳴り声に、尋常ではない何かが起きていると思いトンちゃんの部屋に向かう。
そっとドアを開けてみた。
隙間から見えたトンちゃんは、泣きそうな顔をしていた。話しを聞くのは悪いと思うが、少し心配になる。何か悪い事に巻き込まれていたらどうしよう。そう思って聞き耳を立てた。
「酷いじゃないですか。折角有給を取ったっていうのに。どうして行ったらダメなんですか?!」
「..............だって、他に会える日が、..............」
誰かと出会う約束をしたんだろうか。でも、それがダメになった??
会話の内容から、俺は勝手に想像すると話の道筋を考える。それほどまでに会いたい相手って、いったい誰なんだろうか。トンちゃんにも恋人みたいな人がいるという事か?
顔も見えない電話の向こうにいる人に、俺は嫉妬の様なものを覚えていた。
今まで知らなかったトンちゃんの交友関係。いや、付き合っている人といった方がいいのか.....。
「...........分かりました、諦めます。その代わり、こっちに戻った時には会ってくださいね。......はい、.....じゃあ、おやすみなさい。」
トンちゃんは携帯をベッドの上に投げる様に置くと、静かに椅子に腰掛けた。
その表情は見えなかったが、後ろから見える肩の下がり具合が、心の疲れを表していた。
俺は、声を掛けずにそっとドアを閉めた。その後で、ふぅーっと息を吐く。
見た事のないトンちゃんの一面を垣間見て、俺の胸のつかえは尚更重くなった気がする。あんな人を怒らせる様な相手って、いったいどんな性格しているんだ?
自分の部屋に戻ると、俺のスマフォが点滅していて、それは祐斗からのメールだった。
『さっきから何だよ!今はそれどころじゃないってのに。』
心の中で叫ぶ。そして返信をしようとするが、指先が止まった。
微かに聞こえるトンちゃんのむせび泣く声が、俺の耳に入った途端、咄嗟に部屋を飛び出していた。
「トンちゃん、大丈夫?.....どうかした?」
おもわず声を掛けて部屋に入ると、ベッドの淵になだれ込む様に倒れているトンちゃんがいた。
「.............は、るき、....?」
「あ、勝手に入ってゴメン。なんか声が聞こえて.....。何処か痛いのか?」
俺に気付くと、トンちゃんは顔をあげたが、「何でもないから、.....」というトンちゃんの顔がひきつった笑顔を作っていて、余計に心配になった。
「トンちゃん、何があったんだよ、俺に話してよ。そんな悲しそうな顔しないでくれよ。」
トンちゃんの肩を掴むと云うが、それを訊いて尚更辛そうな顔になったトンちゃんは、俺にしがみ付くと肩を震わせて泣いた。
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