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22.裂け目の主
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「はぁっ。はぁっ。はぁっ」
俺は毒もあり息が上がってしまっている。
まずいな。体力も削がれるのか。
このままじゃ戦うどころじゃない。
「大丈夫か?」
「何とか……」
ガントが気にかけてくれるが、息も絶え絶えになりながら歩いていく。
ここまでかなりの距離を歩いている。
「何時間歩いたのかしら?」
「2時間位。かな」
グビッ
回復薬をまた口に含んで流し込んでいく。ここまでに回復薬も消耗してしまっている。
早くなにかが見つかるといいんだけどな。
すると、奥にほのかに光が見えてきた。
「光が見えてきたぞ!」
ガントが先に様子を見行き、後に続いて進むとひらけたところに出た。
明るい光だと思っていたものは苔だったようだ。壁の苔が光を放っている。
そこには。
絶望が。
待っていた。
ゾワゾワァァァァァァァァァァァァァァッ
頭の先から背中にかけて寒気が走る。
今まで感じたことがないような、そんな感覚。自分の心臓が握られているのかと錯覚するほどの苦しさに悶える。
「な……な……ん…………だ?」
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い
動け動け動け動け動け動け動け動け動け
「クッソォーーー!! 来やがれぇぇぇ!! 挑発!!」
同じような感覚に陥っていたはずのガントは目の前に立ちはだかり、叫び声を上げながらスキルを使った。
ガタガタガタガタ
隣でモー二が震えている。
俺は何のために皆とパーティ組んだんだ。自分のためを思ってついてきてくれてる皆の為に戦うって決めたじゃないか。
脳が本来の機能を取り戻す。そして、意識が覚醒してきた。
腕に腹に力を入れてあの強大な恐怖へと立ち向かう。
「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
雄叫びを上げながら謎のモンスターへ向けて駆ける。恐怖なんて吹き飛ばすんだ。俺が皆を守る。
「身体強化! 身体加速!」
周りの景色がスローモーションで流れる中で自分だけが早く動ける世界。目の前にいる黒い影へと肉薄する。
「ウラァ!」
駆ける勢いのまま跳躍し、飛び膝蹴りを放つ。
フワッ
殴ったはずなのにおかしい。全く手応えがない。
目を凝らしてよく見ると、黒いローブを被っているのが見えた。
これは一体なんなんだ?
なんのモンスターだ?
「ガント! シールドバッシュで面で攻撃しろ!」
「了解!」
俺とガントは交代するように前後移動で入れ替わりサポートに徹する。
ガントは盾を持って駆ける。
「ドリァァ!」
ゴツッ!
ガントの攻撃は手応えがあった。
しかし、硬い。シールドバッシュではHPの減りは微々たるものだ。
何でシールドバッシュなら当たったのかは疑問だ。だが、面の攻撃だと当たり判定があるのだろう。
物理はジリ貧だ。それなら魔法に頼ろう。
「ドリルサイクロン!」
右手にドリルの形をした風の塊が暴れまわる。
渦巻く風か俺の髪を靡かせる。
周りの空気を取り込んで大きなドリルを型取る。
ギュルギュルギュル
空手独特の強い踏み込みから肉薄し、黒い影の懐に入る。この時確信できた。この攻撃は当たると。
顔面目掛けて風を纏った上段突きを放つ。
「フゥッ!!」
ギャリギャリ
硬いものをドリルで削るような音が辺りに響き渡る。それは工事現場のような音をさせて削っていく。
魔法が切れそうだ。
一旦下がる。
敵のHPは若干減っているがまだまだだった。
「クソッ! ほぼ無傷じゃねぇか。」
「一旦、距離を取って作戦を練るか!」
敵の黒い影を視線に収めながら慎重に下がり、距離をとる。ガントと共に敵を眺める形になった。
所が。
恐怖は。
終わっていなかった。
『カタカタカタカタッ』
黒い影がゆっくりと上へと杖を掲げた。
すると。
黒いモヤが集まり始めた。
それが収束した瞬間。
それは放たれた。
ブウォォォァーーー!!
「みんなガードしろ!」
ガントは盾を構えながらみんなを激励する。モヤが通り過ぎて行った。
ただ通っていっただけに見えた。
しかし、モヤは俺たちにまとわりついたまま。
そのモヤは取れることはなくまとわり続ける。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
モヤのところから赤い光の粒子が流れ出ていく。何かが抜けていく感覚に襲われながら何とかもがこうとするが。
だんだん身体がボロボロになっていく。
手が体が皮膚が剥がれてエネルギーの粒子が流れ出てしまう。
あぁ。モー二が頭を抱えながら泣いている。
俺には何も出来なかった。
くそっ。悔しい。
だけど、怖い。体がすくむ。
力が入らない。
何でこんなに恐怖を感じるんだ。
さっきまでは立ち向かえたのに今は立ち向かえる気がしない。
黒い影を見るとフードが脱げていた。
先程まで被っていたフードには隠蔽効果があったみたいだ。
モンスターネームが頭上に表示されていた。
それはゴールドネーム。
――――――――――――――
エルダーリッチ
――――――――――――――
レアボスであることを指していた。
――――――
――――
――
俺は毒もあり息が上がってしまっている。
まずいな。体力も削がれるのか。
このままじゃ戦うどころじゃない。
「大丈夫か?」
「何とか……」
ガントが気にかけてくれるが、息も絶え絶えになりながら歩いていく。
ここまでかなりの距離を歩いている。
「何時間歩いたのかしら?」
「2時間位。かな」
グビッ
回復薬をまた口に含んで流し込んでいく。ここまでに回復薬も消耗してしまっている。
早くなにかが見つかるといいんだけどな。
すると、奥にほのかに光が見えてきた。
「光が見えてきたぞ!」
ガントが先に様子を見行き、後に続いて進むとひらけたところに出た。
明るい光だと思っていたものは苔だったようだ。壁の苔が光を放っている。
そこには。
絶望が。
待っていた。
ゾワゾワァァァァァァァァァァァァァァッ
頭の先から背中にかけて寒気が走る。
今まで感じたことがないような、そんな感覚。自分の心臓が握られているのかと錯覚するほどの苦しさに悶える。
「な……な……ん…………だ?」
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い
動け動け動け動け動け動け動け動け動け
「クッソォーーー!! 来やがれぇぇぇ!! 挑発!!」
同じような感覚に陥っていたはずのガントは目の前に立ちはだかり、叫び声を上げながらスキルを使った。
ガタガタガタガタ
隣でモー二が震えている。
俺は何のために皆とパーティ組んだんだ。自分のためを思ってついてきてくれてる皆の為に戦うって決めたじゃないか。
脳が本来の機能を取り戻す。そして、意識が覚醒してきた。
腕に腹に力を入れてあの強大な恐怖へと立ち向かう。
「ウォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
雄叫びを上げながら謎のモンスターへ向けて駆ける。恐怖なんて吹き飛ばすんだ。俺が皆を守る。
「身体強化! 身体加速!」
周りの景色がスローモーションで流れる中で自分だけが早く動ける世界。目の前にいる黒い影へと肉薄する。
「ウラァ!」
駆ける勢いのまま跳躍し、飛び膝蹴りを放つ。
フワッ
殴ったはずなのにおかしい。全く手応えがない。
目を凝らしてよく見ると、黒いローブを被っているのが見えた。
これは一体なんなんだ?
なんのモンスターだ?
「ガント! シールドバッシュで面で攻撃しろ!」
「了解!」
俺とガントは交代するように前後移動で入れ替わりサポートに徹する。
ガントは盾を持って駆ける。
「ドリァァ!」
ゴツッ!
ガントの攻撃は手応えがあった。
しかし、硬い。シールドバッシュではHPの減りは微々たるものだ。
何でシールドバッシュなら当たったのかは疑問だ。だが、面の攻撃だと当たり判定があるのだろう。
物理はジリ貧だ。それなら魔法に頼ろう。
「ドリルサイクロン!」
右手にドリルの形をした風の塊が暴れまわる。
渦巻く風か俺の髪を靡かせる。
周りの空気を取り込んで大きなドリルを型取る。
ギュルギュルギュル
空手独特の強い踏み込みから肉薄し、黒い影の懐に入る。この時確信できた。この攻撃は当たると。
顔面目掛けて風を纏った上段突きを放つ。
「フゥッ!!」
ギャリギャリ
硬いものをドリルで削るような音が辺りに響き渡る。それは工事現場のような音をさせて削っていく。
魔法が切れそうだ。
一旦下がる。
敵のHPは若干減っているがまだまだだった。
「クソッ! ほぼ無傷じゃねぇか。」
「一旦、距離を取って作戦を練るか!」
敵の黒い影を視線に収めながら慎重に下がり、距離をとる。ガントと共に敵を眺める形になった。
所が。
恐怖は。
終わっていなかった。
『カタカタカタカタッ』
黒い影がゆっくりと上へと杖を掲げた。
すると。
黒いモヤが集まり始めた。
それが収束した瞬間。
それは放たれた。
ブウォォォァーーー!!
「みんなガードしろ!」
ガントは盾を構えながらみんなを激励する。モヤが通り過ぎて行った。
ただ通っていっただけに見えた。
しかし、モヤは俺たちにまとわりついたまま。
そのモヤは取れることはなくまとわり続ける。
恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い
死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ
モヤのところから赤い光の粒子が流れ出ていく。何かが抜けていく感覚に襲われながら何とかもがこうとするが。
だんだん身体がボロボロになっていく。
手が体が皮膚が剥がれてエネルギーの粒子が流れ出てしまう。
あぁ。モー二が頭を抱えながら泣いている。
俺には何も出来なかった。
くそっ。悔しい。
だけど、怖い。体がすくむ。
力が入らない。
何でこんなに恐怖を感じるんだ。
さっきまでは立ち向かえたのに今は立ち向かえる気がしない。
黒い影を見るとフードが脱げていた。
先程まで被っていたフードには隠蔽効果があったみたいだ。
モンスターネームが頭上に表示されていた。
それはゴールドネーム。
――――――――――――――
エルダーリッチ
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レアボスであることを指していた。
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