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20.迷子

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「ハァッ!!」

 放った突きが当たり、リザードマンが一撃で光の粒子に変わる。
 リザードマンはグリーンウルフに比べるとレベルが高いのと、防御が硬い分苦戦を強いられる人もいる。
 だが、俺は装備のおかげもあって一撃で葬れている。

 まだまだ装備の慣らしも兼ねてセカンテアの湿地帯に来ているが、この先は因縁のMPKをされた場所だ。

「ここでも苦戦しねえな! すげぇパワーアップしたじゃん! いいなぁ!」

「私の出番があんまりないわね。いい事だけど」

「私……影薄い」

 ガントは褒めてくれているが、他二人は不満をこぼしている。
 自分達の出番が少ないのを不満に思っているみたい。
 たしかに出てきたモンスターは俺が殆ど倒してしまっている。
 
「いや。ちょっと俺調子にのってるかも。装備が強すぎてヤバイ」

「ドンドン奥へ行ってみようぜ!」

「ちょっと、大丈夫なの!?」

 先に湿地帯の奥へ行ってしまうガント。
 湿地帯の奥は薄暗くなっていて何かがいそうな感じがヒシヒシと伝わってくる。

「全く!」

 モー二が声を荒らげて地面を強く踏み締めながらついて行く。凄い怒りをあらわにしてるなぁと思ってみていると。

「まぁ。そういうとこが。かわいぃ。けど」

 前に居たイブが何か呟きながら向かう。
 イブはみんなに優しいんだよな。

 俺も行かないとな。
 小走りで奥の方へと付いて行く。

――――――
――――
――

 湿地帯の先には森が広がっていた。
 この森は、辺りが暗い気がするなぁ。何だろう?さっきからモンスターも出ないし、ガントのやつどこに着くか分かっていて歩いてるのか?

「なぁ。ガント?」

 ピクッ

 ガイトは少し反応を見せたかと思ったが、またそのままスタスタと歩み始めた。
 その仕草に不安な気持ちを抑えきれず、追いかける。

「おい! 止まれよ! 待てって!」

 なんとか追い付き、肩を掴みガントを止めた。
 この反応はなんか怪しい。

「ガントさぁ。迷ってない?」

 ピクッ

 また反応したかと思ったら、振り向かない。
 おい。まさか……。

「迷っ··········よ」

「聞こえないぞ?」

「迷··········よ」

「だから、聞こえないって!」

「迷ったよ! オレだって何処かわかんないよ! オレの事責めるのかよ! だったら止めてくれよ!」

 ガントは迷ってしまったらしい。だけど、それを言い出したら怒られると思い、言い出せなかったみたいだ。

「逆ギレして威張るんじゃないわよ!」

 ガツンッ!

 モー二の持つメイスで頭を殴られるガント。
 どっちにしろ怒られるんだから、もっと早くに言い出せばいいのに。

「うっ! …………ごめんなさぃぃぃ! すみませんでしたぁぁぁ!」

 その場で即座に土下座するガントは頭をモー二に踏みつけられている。

 一旦二人は放って置いておいて、どうするかなぁ。このゲーム、マップ機能ないんだよなぁ。

 どうしたらいいかと視線を彷徨わせながら考え込んでいると。

「フーマも何とか言ってよ! コイツったら!」

「まあ、モー二もその辺にしなよ。これからどうするか考えないとさ」

「なら。進んだら?」

 何かを考えての発言かはわからないが、イブがとんでもない事を言い放った。
 たしかに戻ってもさっきの湿地帯に戻るだけだ。
 それだと何も進まない。

「進む? わかんないから逆に進むって言うのか? ………………いや、そうだな。進もう」

 俺達は今結構ノリにのっている。
 だったら、勢いに身を任せてみるのもいいのかもしれない。
 
「フーマ本気!?」

 驚いたモーニが目を見開き大きな声を上げた。
 その目が俺の正気を疑う様に懐疑心に満ちている。

「どうせ迷ったんだし、進んでみよう」

 進むと言った責任がある。俺が戦闘になり先へと進んでみることにした。

 森はかなり広いようで見渡す限り森の切れ目はない。
 
 しばらく森の中を歩くと地面の裂け目のような入口?を見つけた。下に行けるように見える。

「ここ、かなり怪しそうだけど、入るか?」

 俺は不安にかられて皆に意見を求めてみた。

「俺は任せるよ!俺は意見を言える立場じゃない!」

 ガントはここで思考することをやめたみたい。
 また怒られるのも嫌だもんだ。

「ここまで来たら入るしか無いわよね」

「入ろ」

 モー二とイブの二人はこの先に入ることを同意をしてくれた。
 ここまで来たら入った方が良いというのは俺も同意見だ。

 ただ、ここまで来て死に戻ってしまったらまたセカンテアに戻る事となってしまうけど。
 そんなこと考えていたらどこにも探索に行けないか。
 ここは俺も腹をくくるしかないかもしれないな。

「じゃあ、慎重に行くぞぉ」

 皆で、慎重に裂け目の中へ入って行く。
 裂け目の先はすぐ前しかわからない暗闇であった。
 この先に一体何があるのだろうか。

 不安な気持ちを胸に抱えたまま、俺達は道の洞窟へと入る。

――――――
――――
――
 
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