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65.ハイエナ野郎
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現在それぞれの二回戦の戦いが繰り広げられていた。
タイガは順調に勝っているし、イーグも勝ち残った。ハイエナ野郎はまた毒を使って勝っている。
俺はこんなにもミリアが負けることを願う日があっただろうか。
ミリアが死んだあの日以来、ミリアには危険が迫らないように細心の注意を払ってきた。
なのに何故、俺はこの大会に出るのを止めなかったのだろうか。
またミリアに何かあったら俺は────
『それでは、最後の二回戦を開始いたしましょーー! キリンのリン選手対、注目のぉぉぉミリアァァァせんしゅぅぅぅぅぅ!』
「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」
『凄まじい応援ですねぇ。しかし、私は心配です! これに勝ったら……。いえ、止めましょう。どうか。どうかっ! 両者に勝利の女神が微笑みますように!』
実況が言いたい事は観客達にも言わずもがな伝わる所があり、一部のものは涙ぐんでいた。
そんな雰囲気の中、俺達の気持ちを知ってか知らずか。ミリアはニコニコとリンに対峙している。
『それでは、始め!』
開始早々のリンの蹴りの速さは凄まじく、持ち前の長身からの叩きつけるような蹴りがミリアを襲う。
冷静に避けているが、これは一撃でも食らったらまずそうだ。
もう負けて欲しいんだか勝って欲しいんだか分からない心境になっている。
どうしたものか。このモヤモヤは。
ステージ上では激しい攻防が繰り広げられている。リンは蹴りが主体のようで、打ち下ろしの蹴りが次々とミリアを襲う。
少しずつ被弾していく。
だか、ミリアの目は諦めてはいない。
そんな厳しい状況にも関わらず、ミリアは笑顔だ。
あんな可愛い笑顔で攻撃されたら逆に恐ろしいのだが。
避けながらローキックを放っている。
それを一貫している。
また打ち下ろしの蹴りが放たれた時だった。
軸足を蹴り飛ばすとリンの膝がカクンと折れ、地面に膝を着いた。
ミリアは口角を上げると懐に入り込んだ。
────ズドンッ
その重い重低音は会場中に響いた。
────ドサッ
リンがステージに倒れている。
ミリアが正確に胸に突きを放った。
それで、一時的に仮死状態になったようだ。
『この試合! 勝者は、ミリアせんしゅぅぅぅぅぅ!』
会場は盛り上がってる反面、心配な様子が漂ってる。
先程のハイエナの相手選手も担架で運ばれて、医務室で治療中だ。
ミリアの肌も切りつけられて毒にやられるかも思うといても立ってもいられない気持ちになる。
それは、俺だけではなかったようだ。
「俺、解毒薬買ってこようかな。役に立てっかな?」
「僕も毒消し草狩りに行ってこようかな」
「俺っちも薬屋の知り合いに取り置きしておいて貰おうかな?」
周りの観客もソワソワ。
でも席を立ってしまうと見れなくなるし、という葛藤に見舞わられる。
そうこうしている間に三回戦が始まった。
三回戦ともなれば、四試合しかないから直ぐにミリアの試合になる。
隣のブロックのタイガとライオン族のレオ、イーグは準決勝に残った。
続いてが、ハイエナとミリアの戦いだ。
『それでは、三回戦最後の試合です! 正々堂々戦ってください! 始め!』
実況の人がわざと正々堂々と言った際にハイエナは鼻が膨らんでいた。鼻で笑い飛ばしたのだろう。
あの野郎。ミリアに何かあったら許さねぇ。と思いながら睨みつけていると、みんな考えていることは同じようで。
「ハイエナ野郎。ミリアちゃんが怪我したら俺が許さねぇ」
「僕も許さない。どんな手を使っても抹消する」
「俺っちも許すまじ! 同じ目に合わせてやる!」
ファンがみんな同じように殺気を放っていてピリピリとしたなんとも言えない空気になっている。
そんな中、ハイエナが口を開いた。
「正々堂々とか言ってっけど、負けたら意味ねぇからな? しかも、ミリアだっけ? 可愛いじゃねぇか。俺の女にしてやってもいいぜ?」
「ありがとー! でも、私弱い人は好きじゃないんだぁ。ごめんね?」
その声は静まり返っていた会場に鳴り響いた。
そして、何かが切れた音が同時にした。
「きっさまぁぁぁ! 俺が弱いだと!? ここまで来た俺がか!? 俺の速さについてこれるってのか!?」
そう叫ぶと瞬時にミリアの横に移動し、右のナイフを振り回してくる。
ミリアは仰け反ってそのナイフを冷静に見て避ける。
今度は左のナイフを取り出して突き出してくる。
それを上段に払いあげる。
がら空きになった胸。
「はぁっ!」
放たれたガルン流空手の発勁によって内部の細胞が一斉に攻撃される。
「ガフッ!」
ハイエナ野郎は口から血を吐き出した。
もう終わりかと思ったのか少し引いた。
「まだ終わってねぇぞ!?」
ナイフを再び上から振り回してきた。
「弱い」
ナイフを持つ腕をハイキックで打ち付けて持っていたナイフも吹き飛ばす。
ハイエナ野郎の自慢の速さはミリアの前では大したことがなかったようだ。
「バイバーイ」
フラフラのハイエナ野郎は手を挙げた状態のまま立っていた。
肩幅に足を開いて引き絞った拳。
それが今放たれる。
───ズドンッ
ハイエナ野郎は場外に吹き飛ばされて地面に横たわった。
会場は、割れんばかりの歓声に包まれた。
───ワァァァァァァァァ
皆がミリアを心配していて、それを心配ないよとばかりに無傷でぶちのめした。
会場は最高潮の盛り上がりを見せていた。
タイガは順調に勝っているし、イーグも勝ち残った。ハイエナ野郎はまた毒を使って勝っている。
俺はこんなにもミリアが負けることを願う日があっただろうか。
ミリアが死んだあの日以来、ミリアには危険が迫らないように細心の注意を払ってきた。
なのに何故、俺はこの大会に出るのを止めなかったのだろうか。
またミリアに何かあったら俺は────
『それでは、最後の二回戦を開始いたしましょーー! キリンのリン選手対、注目のぉぉぉミリアァァァせんしゅぅぅぅぅぅ!』
「「「ミ・リ・ア! ミ・リ・ア!」」」
『凄まじい応援ですねぇ。しかし、私は心配です! これに勝ったら……。いえ、止めましょう。どうか。どうかっ! 両者に勝利の女神が微笑みますように!』
実況が言いたい事は観客達にも言わずもがな伝わる所があり、一部のものは涙ぐんでいた。
そんな雰囲気の中、俺達の気持ちを知ってか知らずか。ミリアはニコニコとリンに対峙している。
『それでは、始め!』
開始早々のリンの蹴りの速さは凄まじく、持ち前の長身からの叩きつけるような蹴りがミリアを襲う。
冷静に避けているが、これは一撃でも食らったらまずそうだ。
もう負けて欲しいんだか勝って欲しいんだか分からない心境になっている。
どうしたものか。このモヤモヤは。
ステージ上では激しい攻防が繰り広げられている。リンは蹴りが主体のようで、打ち下ろしの蹴りが次々とミリアを襲う。
少しずつ被弾していく。
だか、ミリアの目は諦めてはいない。
そんな厳しい状況にも関わらず、ミリアは笑顔だ。
あんな可愛い笑顔で攻撃されたら逆に恐ろしいのだが。
避けながらローキックを放っている。
それを一貫している。
また打ち下ろしの蹴りが放たれた時だった。
軸足を蹴り飛ばすとリンの膝がカクンと折れ、地面に膝を着いた。
ミリアは口角を上げると懐に入り込んだ。
────ズドンッ
その重い重低音は会場中に響いた。
────ドサッ
リンがステージに倒れている。
ミリアが正確に胸に突きを放った。
それで、一時的に仮死状態になったようだ。
『この試合! 勝者は、ミリアせんしゅぅぅぅぅぅ!』
会場は盛り上がってる反面、心配な様子が漂ってる。
先程のハイエナの相手選手も担架で運ばれて、医務室で治療中だ。
ミリアの肌も切りつけられて毒にやられるかも思うといても立ってもいられない気持ちになる。
それは、俺だけではなかったようだ。
「俺、解毒薬買ってこようかな。役に立てっかな?」
「僕も毒消し草狩りに行ってこようかな」
「俺っちも薬屋の知り合いに取り置きしておいて貰おうかな?」
周りの観客もソワソワ。
でも席を立ってしまうと見れなくなるし、という葛藤に見舞わられる。
そうこうしている間に三回戦が始まった。
三回戦ともなれば、四試合しかないから直ぐにミリアの試合になる。
隣のブロックのタイガとライオン族のレオ、イーグは準決勝に残った。
続いてが、ハイエナとミリアの戦いだ。
『それでは、三回戦最後の試合です! 正々堂々戦ってください! 始め!』
実況の人がわざと正々堂々と言った際にハイエナは鼻が膨らんでいた。鼻で笑い飛ばしたのだろう。
あの野郎。ミリアに何かあったら許さねぇ。と思いながら睨みつけていると、みんな考えていることは同じようで。
「ハイエナ野郎。ミリアちゃんが怪我したら俺が許さねぇ」
「僕も許さない。どんな手を使っても抹消する」
「俺っちも許すまじ! 同じ目に合わせてやる!」
ファンがみんな同じように殺気を放っていてピリピリとしたなんとも言えない空気になっている。
そんな中、ハイエナが口を開いた。
「正々堂々とか言ってっけど、負けたら意味ねぇからな? しかも、ミリアだっけ? 可愛いじゃねぇか。俺の女にしてやってもいいぜ?」
「ありがとー! でも、私弱い人は好きじゃないんだぁ。ごめんね?」
その声は静まり返っていた会場に鳴り響いた。
そして、何かが切れた音が同時にした。
「きっさまぁぁぁ! 俺が弱いだと!? ここまで来た俺がか!? 俺の速さについてこれるってのか!?」
そう叫ぶと瞬時にミリアの横に移動し、右のナイフを振り回してくる。
ミリアは仰け反ってそのナイフを冷静に見て避ける。
今度は左のナイフを取り出して突き出してくる。
それを上段に払いあげる。
がら空きになった胸。
「はぁっ!」
放たれたガルン流空手の発勁によって内部の細胞が一斉に攻撃される。
「ガフッ!」
ハイエナ野郎は口から血を吐き出した。
もう終わりかと思ったのか少し引いた。
「まだ終わってねぇぞ!?」
ナイフを再び上から振り回してきた。
「弱い」
ナイフを持つ腕をハイキックで打ち付けて持っていたナイフも吹き飛ばす。
ハイエナ野郎の自慢の速さはミリアの前では大したことがなかったようだ。
「バイバーイ」
フラフラのハイエナ野郎は手を挙げた状態のまま立っていた。
肩幅に足を開いて引き絞った拳。
それが今放たれる。
───ズドンッ
ハイエナ野郎は場外に吹き飛ばされて地面に横たわった。
会場は、割れんばかりの歓声に包まれた。
───ワァァァァァァァァ
皆がミリアを心配していて、それを心配ないよとばかりに無傷でぶちのめした。
会場は最高潮の盛り上がりを見せていた。
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