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43.晩餐会
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「この前のスタンピードは原因が不明らしいね。しかも、A級も混じっていただろう? だから、王立騎士団も大慌てだよ。よくあの時冒険者達だけで対処出来たね…………聞いた話によると、スケルトンが最後は殲滅したらしいが……?」
伯爵の当主ともなればそういう問題も降り掛かってくるのか。
なるほど、この前のあれは原因不明となっているのか。目に傷のある男が原因な気がしていたけど、下手なことは言えないな。
『そうですね。A級が群れをなしていました。その為にこちらも統率が崩れた部分がありますね。最後は、剣に悪いことをしました。せっかくのミリアとの思い出がある剣を粉々にしてしまいました』
マルスさんは目を閉じることを忘れているのか目を見開いたままだ。
「そんなに驚くことかしら? ナイルさんも念話できるようになったのですわよ?」
「そのようだね。聞いたことがない声だったから驚いたよ。そうか。これは良いねぇ。ミリアさんの事を煩わせなくてすむね」
リンスさんがそうフォローしてくれる。マルスさんはそれはいいと気分が上がったようで、鼻歌を歌っている。
「でも、私はなんだか、少し寂しい気分ですよぉ」
「今までナイルさんを独り占め出来ていたんですもんね?」
「ちょっ! 別にそういう意味じゃ! っ!」
ミリアの顔が茹でダコの様になり頭から煙が出てきた。
あれ?
ミリアってそんなに反応するやつだったっけ?
『どうした? いつものミリアらしくないな?』
「いっ! いつもの私ってなによぉ! いつもどんなんだって言うのよ! 粗暴で! 食べ方が汚くて! 可愛げがないってこと!?」
そういってテーブルを力強く叩くと、部屋を出ていってしまった。
何だったんだろうか……俺が余計なことを言ったからか?
まさかあんなに恥ずかしがると思ってなかったからなぁ。こっちもミリアの反応が可愛くて動揺して憎まれ口みたいになっちまった。
「ナイルさん? 行っておあげなさい。ダンテが行き先を知っているそうよ」
優しくそう言ってくれたのはリンスさんの母親、ショナさん。
『すみません。有難う御座います! ちょっと行ってきます!』
「ナイルさん、ミリアを頼みましたわよ?」
リンスさんに釘を刺され、親指を立てて部屋を後にする。
部屋を出るとダンテさんが案内してくれた。
前に通してもらった所にいるみたいだ。
コンコンッ
小さくノックしてみる。
返事はない。
この距離なら念話は届くだろう。
『ミリア、さっきはすまなかった。ミリアの反応が可愛すぎてついつい憎まれ口を叩いちまった。ごめん。俺はな、ミリアの山賊みたいな飯の食い方も好きだぞ? 愛らしいと思ってる。ただ、他の貴族との食事会とかだとやめた方が良いかもな。はははっ。ミリアが下に見られるのは、俺も嫌だから』
そこまで言うと中で物音がした。
少し話を聞く気になってくれただろうか。
『前はあぁいう事を言われてもケラケラ笑うだけだっただろ? だから、俺も色々考えちまったんだ。馬鹿だよな。あまりにも反応が可愛いから意地悪するなんてガキみたいだ。なぁ。そんな反応をするってことは、俺が骨でも好きでいてくれているってことなのか?』
「……」
少し気配を探るが。
動きがない。
ヤバイ。突っ込んで聞きすぎたか。
『いや、余計なことだっ────』
「だから、前から好きって言ってるじゃん! ずっとそう言ってるでしょ!?」
『いや、でも今まで────』
「今までは私だって気を使って冗談っぽく言ってたんだよ! だってナイルは骨だから……とか言って流すからさ。私にとっては、ナイルは最初から私の王子様だった」
『えっ!? そんなこといちども────』
「言えるわけないじゃん! 私だって嫌われたくなかったんだよ! だからナイルの事を沢山知ろうとした。でも、失敗ばっかりで上手くいかなくて……そしたら死んじゃってた」
『あの時、もしかして……俺を気遣って前線に出したのか?』
「そうだよ……だって、ナイルが戦いたいだろうと思って、いつも私を守って伸び伸び戦えないからあの環境なら存分に戦えるのかなって思って」
俺は膝から崩れ落ちた。
そうか。おれがミリアにそうさせていたのか。
「でもね、ナイルが悪いわけじゃないんだよ? 私がそう思って勝手にそうしたの」
目の前には扉を開けたミリアが居た。
「ねぇ、ナイルは私の事好き? 私はナイルがスケルトンだっていいよ? ぜーんぜん構わない」
『俺だってミリアを最初に見た時から可愛いと思っていたさ。でも、俺はモンスターだ。だから、この気持ちを伝えていいのかわからなかった』
ミリアは俺を抱きしめてくれた。
「いいよ。だって、ナイルはナイルだもん。モンスターなんて、関係ないよ! 私はナイルが好きなの!」
『おれでいいんだろうか? こんな骨だけのやつがミリアみたいな可愛い子を好きになっていいんだろうか……』
「いいよ? 私が許してあげる!」
俺とミリアはしばらく抱き合って気持ちを伝え合った。
それを影からリンスさんと、ダンテさん、マルスさん、ショナさんに見られていたのは気づかなかった。
みんな涙を流していたとか。
伯爵の当主ともなればそういう問題も降り掛かってくるのか。
なるほど、この前のあれは原因不明となっているのか。目に傷のある男が原因な気がしていたけど、下手なことは言えないな。
『そうですね。A級が群れをなしていました。その為にこちらも統率が崩れた部分がありますね。最後は、剣に悪いことをしました。せっかくのミリアとの思い出がある剣を粉々にしてしまいました』
マルスさんは目を閉じることを忘れているのか目を見開いたままだ。
「そんなに驚くことかしら? ナイルさんも念話できるようになったのですわよ?」
「そのようだね。聞いたことがない声だったから驚いたよ。そうか。これは良いねぇ。ミリアさんの事を煩わせなくてすむね」
リンスさんがそうフォローしてくれる。マルスさんはそれはいいと気分が上がったようで、鼻歌を歌っている。
「でも、私はなんだか、少し寂しい気分ですよぉ」
「今までナイルさんを独り占め出来ていたんですもんね?」
「ちょっ! 別にそういう意味じゃ! っ!」
ミリアの顔が茹でダコの様になり頭から煙が出てきた。
あれ?
ミリアってそんなに反応するやつだったっけ?
『どうした? いつものミリアらしくないな?』
「いっ! いつもの私ってなによぉ! いつもどんなんだって言うのよ! 粗暴で! 食べ方が汚くて! 可愛げがないってこと!?」
そういってテーブルを力強く叩くと、部屋を出ていってしまった。
何だったんだろうか……俺が余計なことを言ったからか?
まさかあんなに恥ずかしがると思ってなかったからなぁ。こっちもミリアの反応が可愛くて動揺して憎まれ口みたいになっちまった。
「ナイルさん? 行っておあげなさい。ダンテが行き先を知っているそうよ」
優しくそう言ってくれたのはリンスさんの母親、ショナさん。
『すみません。有難う御座います! ちょっと行ってきます!』
「ナイルさん、ミリアを頼みましたわよ?」
リンスさんに釘を刺され、親指を立てて部屋を後にする。
部屋を出るとダンテさんが案内してくれた。
前に通してもらった所にいるみたいだ。
コンコンッ
小さくノックしてみる。
返事はない。
この距離なら念話は届くだろう。
『ミリア、さっきはすまなかった。ミリアの反応が可愛すぎてついつい憎まれ口を叩いちまった。ごめん。俺はな、ミリアの山賊みたいな飯の食い方も好きだぞ? 愛らしいと思ってる。ただ、他の貴族との食事会とかだとやめた方が良いかもな。はははっ。ミリアが下に見られるのは、俺も嫌だから』
そこまで言うと中で物音がした。
少し話を聞く気になってくれただろうか。
『前はあぁいう事を言われてもケラケラ笑うだけだっただろ? だから、俺も色々考えちまったんだ。馬鹿だよな。あまりにも反応が可愛いから意地悪するなんてガキみたいだ。なぁ。そんな反応をするってことは、俺が骨でも好きでいてくれているってことなのか?』
「……」
少し気配を探るが。
動きがない。
ヤバイ。突っ込んで聞きすぎたか。
『いや、余計なことだっ────』
「だから、前から好きって言ってるじゃん! ずっとそう言ってるでしょ!?」
『いや、でも今まで────』
「今までは私だって気を使って冗談っぽく言ってたんだよ! だってナイルは骨だから……とか言って流すからさ。私にとっては、ナイルは最初から私の王子様だった」
『えっ!? そんなこといちども────』
「言えるわけないじゃん! 私だって嫌われたくなかったんだよ! だからナイルの事を沢山知ろうとした。でも、失敗ばっかりで上手くいかなくて……そしたら死んじゃってた」
『あの時、もしかして……俺を気遣って前線に出したのか?』
「そうだよ……だって、ナイルが戦いたいだろうと思って、いつも私を守って伸び伸び戦えないからあの環境なら存分に戦えるのかなって思って」
俺は膝から崩れ落ちた。
そうか。おれがミリアにそうさせていたのか。
「でもね、ナイルが悪いわけじゃないんだよ? 私がそう思って勝手にそうしたの」
目の前には扉を開けたミリアが居た。
「ねぇ、ナイルは私の事好き? 私はナイルがスケルトンだっていいよ? ぜーんぜん構わない」
『俺だってミリアを最初に見た時から可愛いと思っていたさ。でも、俺はモンスターだ。だから、この気持ちを伝えていいのかわからなかった』
ミリアは俺を抱きしめてくれた。
「いいよ。だって、ナイルはナイルだもん。モンスターなんて、関係ないよ! 私はナイルが好きなの!」
『おれでいいんだろうか? こんな骨だけのやつがミリアみたいな可愛い子を好きになっていいんだろうか……』
「いいよ? 私が許してあげる!」
俺とミリアはしばらく抱き合って気持ちを伝え合った。
それを影からリンスさんと、ダンテさん、マルスさん、ショナさんに見られていたのは気づかなかった。
みんな涙を流していたとか。
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