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22.捜索

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「ナイル! 大変! リンスさんがいない!」

 クソッ!
 やられた!

 店を出ると裏側に回る。
 人影はない。

 どこ行きやがった?
 この通りは人の通りも多いし、樽を詰んだ荷車を引いている人もいる。

「ナイル!? いた?」

 いや、何処かに隠れたらしい。
 どこにも人影がない。

「どうしました? 皆さん、慌てて?」

 そこにタイミングが良いのか悪いのか。
 やって来たのはダンテさんだ。

「すみません。目を離した隙に拐われてしまいまして……」

「なんと!? こんな街でも安全ではないということですな。お嬢様を見つけましょう」

「はい! でも、なんだかそれらしい犯人が分からなくて……どうしたらいいんでしょうか? すみません! ダンテさん!」

 ミリアが頭を下げるが、そんな暇があれば今は手がかりを探すことに頭を使った方が良いだろう。

 考えろ。
 何かヒントはないか?
 この通りを通って逃げたはずなのに、全然周りの人が反応していないということは、人を連れているということがわからないということ。

 ん?
 あの樽……あんなに積んであるのに一人で引けるのか?
 一個しか中身がないなら……。

 そうか! ミリア!
 アイツだ!

 指さしたのは樽を積み重ねているのに一人で引っ張っている人だ。

 ミリアが走っている。
 俺も後を追う。

「あの! その樽何が入ってるんですか!?」

「あぁ!? 別に何でもねぇって!」

「見せてもらっていいですか!?」

 ミリアが無理矢理見ようと樽を触ると、急に走り出した。

「嫌なこった!」

 樽を積んだまま走り出してしまった。
 後を追うミリアと俺。

 クソッ!
 速い!

 路地に入ってしまう。 
 角を曲がった。
 追って角を曲がる。

 けたたましい音がしたかと思ったら樽が飛んできた。その男は一個の樽を持つとあとの樽を蹴り飛ばし走り出した。

 その男、足が速い。
 俺もミリアも追いつけない。

 裏路地の方に入っていってしまった。
 ヤバい。見失う。

「あれー? どこに行ったかな?」

 路地に入ると何処にも居なくなっていた。
 入口は無数にある。
 全部回るには時間が無い。

 どうする?
 何とかして追えないか?

「見つかりましたか?」

 ダンテさんが肩で息をいながら追いついてきた。額には滴が転々と浮かび上がっている。

 すみません。ダンテさん。
 見失いました。

「ごめんなさーい! 見失っちゃいましたぁ」

 ミリアが頭を下げる。

「はぁ……はぁ……そう……ですか。ふぅー。じゃあ、匂いで探しましょうか」

 匂い?

 ダンテさんは目を閉じると深呼吸する。
 匂いで探るようだ。
 そんな犬みたいなことできるのか?

「私は、お嬢様の付けている香水の匂いを把握しています。お嬢様がこだわってこだわって作り上げたお嬢様だけの匂いなのです」

「それで、分かりましたか?」

「はい。こちらですね」

 奥へと歩みを進める。
 ピタリと止まった。

「ここで匂いが途切れています」

 他の扉と何ら変わったところを見受けることが出来ない。もうダンテさんを信じるしかない。

 俺は、その扉の前で五感を研ぎ澄ませた。

「…………しろ!」「なん…………すわ!」

 確信した。
 たしかになにか言い争っている声が聞こえる。

 ミリア、ここに突入するぞ!

「ホントにここなの!?」

 あぁ。声も聞こえた。
 恐らく間違いない。

「よしっ! じゃあ、行って!」

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(皇《すめらぎ》)」

 扉を真っ二つに斬り裂く。

 中には樽から少し引きづられ、衣服が乱れているリンスさんが。
 犯人と思わしき男ほこちらを見て呆然としている。

「何でここがバレた!? おい! 始末しろ!」

 奥から五人ほど武装した男たちが剣をスルリと抜き放ち俺の前に並んだ。

 これはこれは、ご丁寧に並んでいただいて有難う。

 ストロング流剣術 幻剣術
「カタタ(現《うつつ》)」

 その場に残像を残して真ん中の男に肉薄する。

 ストロング流剣術 抜剣術
「カタカタ(皇《すめらぎ》)」

 からの

 ストロング流剣術 剛剣術
「カタカタ(覡《かんなぎ》)」

 横薙ぎの一撃で真ん中の人を沈め、続け様に振り切った先にいた男を斬る。大上段からの素早い振り下ろしで切り伏せ。

 ストロング流剣術 柔剣術
「カタタカ(黄昏《たそがれ》)」
 
 斬りかかってきた目の前の男の剣を上に弾き上体を上向きに向ける。ガラ空きになった胸に剣を突き刺す。

 そこから振り返ると並んでいた二人を一気に始末する。

 ストロング流剣術 剛剣術
「カタカタ(光芒《こうぼう》)」

 引き絞った剣を全体重を乗せて二人目掛けて突き出す。
 二人の胸に穴が空いた。

 ものの五秒でカタがついた。

 最後に残った男に向き直る。
 俺の胸の青い炎がその男の震える頬を青く照らしている。

「もう少しで貴族を売り払えたのに! クソガァァァァァァァァ!」

 腰に差していた剣を抜き放つが、感情がたかぶっている奴ほど動作が大きい。大ぶりに両手を上げるような形になると、その胸に剣を突き刺すだけである。

「グッ……ゴフッ……」

 倒れてくる男を避けてリンスさんの元へ行き、樽から出してあげる。
 その部屋から出る。

「お嬢様! よかった!」

 ガバッとダンテさんがリンスさんを包み込んだ。

「ダンテ、ごめんなさい。私がワガママを言ったからこんな事になって……」

「いいんです。ミリア様とナイル様にお礼を申し上げます。誠に有難う御座います」

 はぁぁ。よかった。

「侍女でありながら目を離してしまって申し訳ありませんんん! どうか、ぶってください! けってくださいいいい!」

「よかったです! 私達も目を離してしまいました。ごめんなさい!」

「ミリアが謝ることはないですわ。私が思慮が足りませんでした。今度からは注意致しますわ」

 ベリーさんはスルーなんだな。
 まぁ、リンスさん、次は注意してくれ。
 こんなんじゃ俺の心臓がもたないぞ。
 青い炎だからもつとかもたないとかないけど。
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