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25.助太刀
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酒を飲んで宿に泊まった俺達だったがこの街には宿屋が数多くあり、一人一部屋で泊まることができたのだ。久しぶりの一人部屋で嬉しかった。
サーヤはちょっと不満そうだったが。何が不満なのかはいまいちわからない。
宿を出ると街の外へ向かう。
「もう行くのかい!?」
昨日救った子供の祖母が声をかけてくれた。もっと俺をしたかったんだとか。
ありがたいが、こちらも少々急いでいる。
「実は、俺も娘を探す旅でな。少し急いでいるんだ」
「そうなのかい!? てっきりその子が娘だと思ったよ!」
「はははっ。実は違うんだ」
「そうかい。気を付けてねぇ」
「あぁ。有難う。おばあさんも元気でな」
そんな感じで声をかけられながら街の外にきたのであった。
「おぉ。街の英雄が旅立つんですな?」
昨日いた門番の人であった。
「あぁ。俺も急いでいるからな」
「娘さん、見つかるといいですな?」
「あぁ。有難う。必ずみつけるさ」
「ご武運を!」
手を振って街を後にする。本当はもう少しいてもよかったのだが、あまり長いすると居心地がよくなってしまいそうだ。
このまま街道を南へ向かっていく。
ここからは見通しのいい草原が広がっていて、遠くにある山が見えている。
「今日はどこまでいくんですか?」
「行ける所まで行くが、徒歩だと限界がある。今日は野宿かもな」
「わかりました!」
ただ歩いているだけではもったいない。
サーヤを鍛えながら行こう。
「サーヤ、魔力強化はできるか?」
「あー。はい。あの体に魔力を巡らせるやつですよね?」
「そうだ。魔力コントロールの練習になるからかけながら歩くんだ。魔力消費が増えれば魔力総量もあがるからな。消費していないとそのまま増えることはないんだぞ?」
「そうなんですか!? うわぁ人生無駄にした!」
急に立ち止まって上を向いて嘆く。
「大丈夫だ。これからやればまだ伸び代はある! まだマナと同じ二十だろう?」
「はい! では、やってみます!」
言われたとおりに身体へ魔力を纏う。
少し波があるが、ちゃんとまとえている。
「まずは、少し強い部分と弱い部分がある。それを均等にするんだ」
「こうですか?」
少し差が少なくなった。
「そうだ。それを持続させたまま歩くんだ」
「わかりました」
それから歩き出すとやはりムラがあるものだから、それを指摘しながら歩いて行った。
ついでだからと俺とヤマトもやりながら歩いていた。
魔力総量は相当なものがあるから、魔力切れの心配はない。
腕輪に貯蔵されている魔力がかなりあるからだ。それはヤマトも同じこと。
少しずつしてきしながら歩いているとサマになってきた。
「いいぞ。サーヤ、上手じゃないか」
「これきついです!」
「きついから意味があるんだ! 頑張れ!」
俺とヤマトは慣れたものである。引退してからも魔力操作のトレーニングはしていたからな。ヤマトもその点は同じようだ。
なにせ、ヤマトは魔力操作を誤ると自分が食われるからな。そういう危険をはらんでいるのがアーティファクトだ。
憤怒の腕輪も怒りの力をコントロールできないと俺は暴れまわってしまうのだ。
日が高くなってきたころ、前方が何やら騒がしい。
「ししょー! だれか襲われてます!」
目を凝らすと馬車が何者かに襲われているようだ。
身体強化をかけたまま駆ける。
「ファイヤーランス!」
「アクアカッター!」
「プロテクト!」
俺は炎の矢を、サーヤが水の刃を、ヤマトは馬車に結界を張った。
「なんだ!? 邪魔が入ったぞ!」
盗賊たちが俺達を警戒している。
馬車は無事のようだ。護衛の兵士たちは何名か既に亡くなっているようだ。
「助太刀します!」
「助かります!」
なんとか残りの一人が馬車を守ってしのいでいたようだ。
「サーヤはその人を守れ! 馬車はヤマトが!」
「はい!」「うーい」
腕輪は強すぎるためあまり人には使いたくない。理由はミンチになってしまうからだ。
人には魔力強化で十分。
馬車の中を襲おうとしていた男に殴りかかる。
その男は後ろへ飛んでよけた。
好都合。
魔力強化の出力を上げる。
すると、一瞬で目の前に男が。
顔面を地面へと打ち付け殺す。
その次はサーヤの元へ駆けている男。
一瞬で間合いを詰めると横から殴りつける。
顔が陥没した男は死んでいるだろう。
最後に遠目から指示を出していた男。
「グラビティ!」
──ズンンンッッ
体の重さが倍に感じた。だが、それだけ。俺の魔力強化はものともしない。
「軽いわ!」
拳骨をする要領で頭の上をゴツンと殴りつける。
すると地面へ埋まって絶命した。
他にも仲間はいたようでみすぼらしい姿の死体が何体かあった。
結構な大人数で襲われたようだ。こちらの馬車の人たちは三人程の護衛だったようだ。少ないと思うが、予算上やむを得なかったのかもしれない。護衛を雇う金がないのはよくあることだ。
「いやー。お強いですな。助かりました」
「護衛の探索者の方ですか?」
「いえ、違います。馬車に乗っているお嬢様の家に雇われている私兵です。この旅は助太刀感謝します。このご恩は戻ったら必ず」
「あぁ。いいんですよ。カレロに行かれるところですか?」
「そうです。マッコール家の──」
「──ローラ・マッコールですわ。この度は感謝いたしますわ」
馬車から出てきたのは煌びやかなドレスに身を包んだ金髪を巻いたお嬢様だった。
成り行きで救ったこの馬車の人、もしかしたら大物だったかもしれない。
サーヤはちょっと不満そうだったが。何が不満なのかはいまいちわからない。
宿を出ると街の外へ向かう。
「もう行くのかい!?」
昨日救った子供の祖母が声をかけてくれた。もっと俺をしたかったんだとか。
ありがたいが、こちらも少々急いでいる。
「実は、俺も娘を探す旅でな。少し急いでいるんだ」
「そうなのかい!? てっきりその子が娘だと思ったよ!」
「はははっ。実は違うんだ」
「そうかい。気を付けてねぇ」
「あぁ。有難う。おばあさんも元気でな」
そんな感じで声をかけられながら街の外にきたのであった。
「おぉ。街の英雄が旅立つんですな?」
昨日いた門番の人であった。
「あぁ。俺も急いでいるからな」
「娘さん、見つかるといいですな?」
「あぁ。有難う。必ずみつけるさ」
「ご武運を!」
手を振って街を後にする。本当はもう少しいてもよかったのだが、あまり長いすると居心地がよくなってしまいそうだ。
このまま街道を南へ向かっていく。
ここからは見通しのいい草原が広がっていて、遠くにある山が見えている。
「今日はどこまでいくんですか?」
「行ける所まで行くが、徒歩だと限界がある。今日は野宿かもな」
「わかりました!」
ただ歩いているだけではもったいない。
サーヤを鍛えながら行こう。
「サーヤ、魔力強化はできるか?」
「あー。はい。あの体に魔力を巡らせるやつですよね?」
「そうだ。魔力コントロールの練習になるからかけながら歩くんだ。魔力消費が増えれば魔力総量もあがるからな。消費していないとそのまま増えることはないんだぞ?」
「そうなんですか!? うわぁ人生無駄にした!」
急に立ち止まって上を向いて嘆く。
「大丈夫だ。これからやればまだ伸び代はある! まだマナと同じ二十だろう?」
「はい! では、やってみます!」
言われたとおりに身体へ魔力を纏う。
少し波があるが、ちゃんとまとえている。
「まずは、少し強い部分と弱い部分がある。それを均等にするんだ」
「こうですか?」
少し差が少なくなった。
「そうだ。それを持続させたまま歩くんだ」
「わかりました」
それから歩き出すとやはりムラがあるものだから、それを指摘しながら歩いて行った。
ついでだからと俺とヤマトもやりながら歩いていた。
魔力総量は相当なものがあるから、魔力切れの心配はない。
腕輪に貯蔵されている魔力がかなりあるからだ。それはヤマトも同じこと。
少しずつしてきしながら歩いているとサマになってきた。
「いいぞ。サーヤ、上手じゃないか」
「これきついです!」
「きついから意味があるんだ! 頑張れ!」
俺とヤマトは慣れたものである。引退してからも魔力操作のトレーニングはしていたからな。ヤマトもその点は同じようだ。
なにせ、ヤマトは魔力操作を誤ると自分が食われるからな。そういう危険をはらんでいるのがアーティファクトだ。
憤怒の腕輪も怒りの力をコントロールできないと俺は暴れまわってしまうのだ。
日が高くなってきたころ、前方が何やら騒がしい。
「ししょー! だれか襲われてます!」
目を凝らすと馬車が何者かに襲われているようだ。
身体強化をかけたまま駆ける。
「ファイヤーランス!」
「アクアカッター!」
「プロテクト!」
俺は炎の矢を、サーヤが水の刃を、ヤマトは馬車に結界を張った。
「なんだ!? 邪魔が入ったぞ!」
盗賊たちが俺達を警戒している。
馬車は無事のようだ。護衛の兵士たちは何名か既に亡くなっているようだ。
「助太刀します!」
「助かります!」
なんとか残りの一人が馬車を守ってしのいでいたようだ。
「サーヤはその人を守れ! 馬車はヤマトが!」
「はい!」「うーい」
腕輪は強すぎるためあまり人には使いたくない。理由はミンチになってしまうからだ。
人には魔力強化で十分。
馬車の中を襲おうとしていた男に殴りかかる。
その男は後ろへ飛んでよけた。
好都合。
魔力強化の出力を上げる。
すると、一瞬で目の前に男が。
顔面を地面へと打ち付け殺す。
その次はサーヤの元へ駆けている男。
一瞬で間合いを詰めると横から殴りつける。
顔が陥没した男は死んでいるだろう。
最後に遠目から指示を出していた男。
「グラビティ!」
──ズンンンッッ
体の重さが倍に感じた。だが、それだけ。俺の魔力強化はものともしない。
「軽いわ!」
拳骨をする要領で頭の上をゴツンと殴りつける。
すると地面へ埋まって絶命した。
他にも仲間はいたようでみすぼらしい姿の死体が何体かあった。
結構な大人数で襲われたようだ。こちらの馬車の人たちは三人程の護衛だったようだ。少ないと思うが、予算上やむを得なかったのかもしれない。護衛を雇う金がないのはよくあることだ。
「いやー。お強いですな。助かりました」
「護衛の探索者の方ですか?」
「いえ、違います。馬車に乗っているお嬢様の家に雇われている私兵です。この旅は助太刀感謝します。このご恩は戻ったら必ず」
「あぁ。いいんですよ。カレロに行かれるところですか?」
「そうです。マッコール家の──」
「──ローラ・マッコールですわ。この度は感謝いたしますわ」
馬車から出てきたのは煌びやかなドレスに身を包んだ金髪を巻いたお嬢様だった。
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