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4.初の弟子
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もう一体もキマイラと同じように一撃で葬ったあとに、帰路についていた。
「ド、ドラゴンも一撃なんですね……?」
「んー? そうだなぁ。あまり回数は必要としないな。その分一撃で消費する魔力がデカイのさ」
「そうなんですか? それにしても攻撃が強すぎますね」
サーヤは明らかに怯えていた。
「俺には怯える必要ないだろう? 最初のようにざっくばらんに話したらいいだろ?」
「あの強さを見てはそういう気にはなれません」
「ふむ。そんなものか?」
「そういうものです」
怯えたままでは旅がしづらいだろうに。一つ真実を教えてあげよう。
「俺は別に魔力や身体が人間離れしている訳ではないぞ? これのおかげさ」
赤と黒の入り交じった斑の腕輪を見せる。
そこから煙が出て来るというサーヤから見れば謎の物だろう。
「それっ! さっきなんか煙出てましたよね?」
「そうだ。よく見てたな。これはな……七大罪具が一つ。憤怒を司る怒りの腕輪だ」
「えっっ!?……七大罪のアーティファクト!?」
目を見開いて俺の腕輪を凝視している。
魔王直属の部下である七大罪のアーキファクトは珍しく、膨大な強さを秘めているのだ。
「そうだ。七大罪は初めて見たか? 内緒だぞ?」
「そんなの、所有してるなんて……何者!?」
「昔は魔境に行って探したもんさ」
「七大罪具を見つけたとされる伝説の探索者が何人か居ますよね?」
「あぁ。みんな顔なじみだ」
そう話すと目をキラキラさせて詰め寄ってきた。
「ねぇ、旅のときでいいので、その時の話を聞かせてください!」
「あぁ。時間がある時に話してやろう」
「やった! ありがとうございます!」
「なぁに。マナにも話したものさ」
昔はマナも俺に探索者時代の話をして欲しいとよくねだってきたものだ。その当時のマナの顔が脳裏に浮かぶ。
一体どこに行ったのか。必ず見つけてやるからな。
「街に着いたな。ギルドで報酬を受け取ろう」
「はい!」
サーヤを連れてギルドへ入ると見しった顔がチラホラいた。
「おぉ! ホントにガイルさんが来てる!」
「旦那! 久しぶりじゃないですか!」
「あら、ガイルさん、また男が上がってるわねん?」
昔からいる探索者達だった。昔のことが想起される。皆で馬鹿やったもんだよな。
「皆久しぶりだな。特級は片付けておいた。今日には立つぞ」
「話は聞きましたよ。マナ嬢が行方不明とか……俺達も行きたいところだが……」
「いいんだよ。俺はこの子と行ってくるからよ」
そう言ってサーヤを指した。
「えぇっ!? その子を連れていくんですか!?」
「そうだ。見込みがあると思ってな」
「あんなに頑なに弟子を取らなかったのに!」
「まぁ、弟子を取りたくなるくらい歳を重ねて丸くなったってこったろうよ」
おれがそう伝えると年長組は目を見開いて驚いている。現役時代を知っている奴らは本当に意外なんだろうな。
「報酬も貰ったし、出るか? サーヤは一人暮らしだろ? 何か持っていくか?」
「そうですね! 一回家に寄っていいですか?」
「あぁ。かまわん」
ギルドを出ると前を歩くサーヤを追いかける。小走りで自分のアパートへと向かって歩くが俺はゆっくりと歩いていく。
見られたくないものもあるだろう。少し距離を置いて行こうか。
路地を曲がって行った所をついて行きアパートの二階へと上がっていく。扉を開けたままにされている。
開け放たれた扉をチラリと見ると下着姿で慌てて干されていた下着を麻袋へと入れているところであった。二十歳はもういい大人だ。閉めて着替えなさい。そっと扉を閉めてやる。
マナも同じ歳だった。冒険者は十五歳からなれる。すぐになりたいと言ったが、俺達は反対したものだ。だが、意思は固かった。
アパートの通路の壁に寄りかかりながら腕を組んで待つ。
手伝えることもないだろうしな。
野営道具は大体の道具は俺が持ってきているから最低限でいいだろうけど。
「サーヤ! 野営道具はあまり多くなくても俺が鍋とか火打石とかはあるからいいぞー?」
「はーい! でも、一応何時もの野営道具は持って出ます!」
まぁ、あるならあってもいいか。ゴソゴソと音がしているがゆっくりと待っていた。温かい陽光で目が虚ろになってきた頃、サーヤが出てきた。
「師匠! お待たせしました!」
「なに? 師匠?」
「はい! これからついて行くんですから、師匠と呼ばせていただきます!」
なんか現金な奴だな。まぁ、弟子を取ったということになるんだろうからいいか。
「おう。じゃあ、早速行くか。腹ぁ減らねぇか?」
「お腹ですか? そんなに減って──」
──グゥゥゥゥゥゥ
「ますね」
「だよな? じゃあ、馴染みの店で食うか」
アーガーに来るといつも食べる焼肉の店がある。そこでは魔物の肉を焼いてステーキにし、それを米の上にのせて食べるのだ。
米はこの世界の主食だ。白くてつぶつぶのモチっとしていてほのかに甘い。これとステーキがよく合うのだ。
「いらっしゃい! まいど!」
「ステーキ丼二つ」
「あいよ! おまち!」
昼の時間は過ぎていたため、比較的早めに提供された。
「わぁ。初めて食べます!」
「そうか。美味いぞ?」
「では、食べさせて頂きます!」
一口頬張る。
目を見開きキラキラとさせていた。
「これ、美味しい!」
「だろ? これで体力つけたら出発だ!」
一緒の旅仲間ができた。
なんだか、賑やかになりそうだ。
「ド、ドラゴンも一撃なんですね……?」
「んー? そうだなぁ。あまり回数は必要としないな。その分一撃で消費する魔力がデカイのさ」
「そうなんですか? それにしても攻撃が強すぎますね」
サーヤは明らかに怯えていた。
「俺には怯える必要ないだろう? 最初のようにざっくばらんに話したらいいだろ?」
「あの強さを見てはそういう気にはなれません」
「ふむ。そんなものか?」
「そういうものです」
怯えたままでは旅がしづらいだろうに。一つ真実を教えてあげよう。
「俺は別に魔力や身体が人間離れしている訳ではないぞ? これのおかげさ」
赤と黒の入り交じった斑の腕輪を見せる。
そこから煙が出て来るというサーヤから見れば謎の物だろう。
「それっ! さっきなんか煙出てましたよね?」
「そうだ。よく見てたな。これはな……七大罪具が一つ。憤怒を司る怒りの腕輪だ」
「えっっ!?……七大罪のアーティファクト!?」
目を見開いて俺の腕輪を凝視している。
魔王直属の部下である七大罪のアーキファクトは珍しく、膨大な強さを秘めているのだ。
「そうだ。七大罪は初めて見たか? 内緒だぞ?」
「そんなの、所有してるなんて……何者!?」
「昔は魔境に行って探したもんさ」
「七大罪具を見つけたとされる伝説の探索者が何人か居ますよね?」
「あぁ。みんな顔なじみだ」
そう話すと目をキラキラさせて詰め寄ってきた。
「ねぇ、旅のときでいいので、その時の話を聞かせてください!」
「あぁ。時間がある時に話してやろう」
「やった! ありがとうございます!」
「なぁに。マナにも話したものさ」
昔はマナも俺に探索者時代の話をして欲しいとよくねだってきたものだ。その当時のマナの顔が脳裏に浮かぶ。
一体どこに行ったのか。必ず見つけてやるからな。
「街に着いたな。ギルドで報酬を受け取ろう」
「はい!」
サーヤを連れてギルドへ入ると見しった顔がチラホラいた。
「おぉ! ホントにガイルさんが来てる!」
「旦那! 久しぶりじゃないですか!」
「あら、ガイルさん、また男が上がってるわねん?」
昔からいる探索者達だった。昔のことが想起される。皆で馬鹿やったもんだよな。
「皆久しぶりだな。特級は片付けておいた。今日には立つぞ」
「話は聞きましたよ。マナ嬢が行方不明とか……俺達も行きたいところだが……」
「いいんだよ。俺はこの子と行ってくるからよ」
そう言ってサーヤを指した。
「えぇっ!? その子を連れていくんですか!?」
「そうだ。見込みがあると思ってな」
「あんなに頑なに弟子を取らなかったのに!」
「まぁ、弟子を取りたくなるくらい歳を重ねて丸くなったってこったろうよ」
おれがそう伝えると年長組は目を見開いて驚いている。現役時代を知っている奴らは本当に意外なんだろうな。
「報酬も貰ったし、出るか? サーヤは一人暮らしだろ? 何か持っていくか?」
「そうですね! 一回家に寄っていいですか?」
「あぁ。かまわん」
ギルドを出ると前を歩くサーヤを追いかける。小走りで自分のアパートへと向かって歩くが俺はゆっくりと歩いていく。
見られたくないものもあるだろう。少し距離を置いて行こうか。
路地を曲がって行った所をついて行きアパートの二階へと上がっていく。扉を開けたままにされている。
開け放たれた扉をチラリと見ると下着姿で慌てて干されていた下着を麻袋へと入れているところであった。二十歳はもういい大人だ。閉めて着替えなさい。そっと扉を閉めてやる。
マナも同じ歳だった。冒険者は十五歳からなれる。すぐになりたいと言ったが、俺達は反対したものだ。だが、意思は固かった。
アパートの通路の壁に寄りかかりながら腕を組んで待つ。
手伝えることもないだろうしな。
野営道具は大体の道具は俺が持ってきているから最低限でいいだろうけど。
「サーヤ! 野営道具はあまり多くなくても俺が鍋とか火打石とかはあるからいいぞー?」
「はーい! でも、一応何時もの野営道具は持って出ます!」
まぁ、あるならあってもいいか。ゴソゴソと音がしているがゆっくりと待っていた。温かい陽光で目が虚ろになってきた頃、サーヤが出てきた。
「師匠! お待たせしました!」
「なに? 師匠?」
「はい! これからついて行くんですから、師匠と呼ばせていただきます!」
なんか現金な奴だな。まぁ、弟子を取ったということになるんだろうからいいか。
「おう。じゃあ、早速行くか。腹ぁ減らねぇか?」
「お腹ですか? そんなに減って──」
──グゥゥゥゥゥゥ
「ますね」
「だよな? じゃあ、馴染みの店で食うか」
アーガーに来るといつも食べる焼肉の店がある。そこでは魔物の肉を焼いてステーキにし、それを米の上にのせて食べるのだ。
米はこの世界の主食だ。白くてつぶつぶのモチっとしていてほのかに甘い。これとステーキがよく合うのだ。
「いらっしゃい! まいど!」
「ステーキ丼二つ」
「あいよ! おまち!」
昼の時間は過ぎていたため、比較的早めに提供された。
「わぁ。初めて食べます!」
「そうか。美味いぞ?」
「では、食べさせて頂きます!」
一口頬張る。
目を見開きキラキラとさせていた。
「これ、美味しい!」
「だろ? これで体力つけたら出発だ!」
一緒の旅仲間ができた。
なんだか、賑やかになりそうだ。
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