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カレンは、アーサーが来ているので挨拶してお茶に付き合うようにと父からの伝言を聞いて、応接室へと向かっていた。


アーサー様にお会いするのは久しぶり。もう爵位を貰ったのかな? 
父も母もアーサー様が婿にならないことをとても残念がってた。
だけど、アーサー様とお姉様はどう見ても合わないってわかるじゃないの。
おとぎ話の世界に生きているお姉様の婚約者を何年も我慢できるほど、この侯爵家の仕事がやりがいがあったんだろうとわかっている。

爵位があるとアーサー様のもとには婚約の申し込みが殺到してそうだなぁ…
今度は相手を選べるだろうから、どんな令嬢がアーサー様の好みなのか楽しみね。


……と、この部屋に来るまでは思っていた。



「ごきげんよう、お久しぶりです。アーサー様。」

「カレン、ああ、久しぶりだ。急に誘って大丈夫だったか?」

「ええ。今日は予定はありませんから。お父様に用があったのですか?」

「ああ。求婚の許可を貰いに。」

「???……求婚?どなたに?」

「カレンに。」

「…………え?私?」

「ああ。しばらく考えていたんだ。
 父から爵位を貰って、結婚相手を探して…って想像していつもそこで、ここを思い出す。
 この侯爵家での仕事はやりがいがあって魅力的で。
 カレンとお茶を飲みながらの雑談が楽しかったことも。
 そう思ったら、俺が望んでいるのはここじゃないのか?って気づいた。
 3年くらい待てるし、カレンの成長も見続けられるし?別にロリコンじゃないぞ?」

「…3年後には私に恋愛感情を持てるってこと?」

「う~ん。ちょっと違う。説明が難しいが…
 前からカレンには好印象を持っていた。つまり、それを恋愛感情に育てるってこと。
 カレンは、恋愛感情を持ってはいけない身内から持ってもいい令嬢になった。
 だけど、今はまだ気持ちを全開にするには年齢的にブレーキがかかる。
 20歳と13歳ならそうだろ?でも23歳と16歳なら?
 結婚できる歳になるんだから、感情を全開しても問題なくなる。
 要するに、今持っている好意を徐々に愛情へと変える自信があるってことだ。」

「なるほど。言いたいことはわかります。
 もし断ったら恋愛感情に育てることなく元婚約者の妹だったって位置のままってことですね。
 婚約者になったら、将来の結婚相手として愛情を育んでいく。
 何十年も一緒にいる相手だから、政略でも恋愛感情が芽生えた方がいいですよね。」

「そう。…ナタリーとは芽も出なかったけど。
 カレンも同じだろ?俺への印象は悪くない。義理の兄にもならなかった。
 ちょっと年上だけど、これから一人の男として意識して見てくれって言ったら?
 同年代の男よりもカレンには意識しやすいんじゃないか?」

「…そうかも。うん。言い包められてあげるわ。
 父も母もあなたが婿にならなくて残念がっていたの。
 だから、喜んでくれるわね。」

「ありがとう、カレン。足場が固まった気分だ。先が楽しみに思えるよ。」

「ふふ。アーサー様って意外とかわいいですね。」

「だろ?やっぱりカレンと話すのは楽しいよ。」

 
  

こうして、私とアーサー様の婚約がまとまったの。
 

 
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