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領地に行っていた両親が王都に戻ってきた。

本来なら、数日後にネイド様と正式に婚約を結ぶ予定だった。
だけど、帰ってきた両親にお姉様はあのおバカな発言と同じことを言ったの。

「それでね、アーサー様ったら私たちの従者になるのは嫌だって怒ってしまって…」

いやいや、怒るのは当たり前よ?
お父様もお怒りの顔よ?お母様は…何か考えているわね?

「お前はアーサーではなくネイドを選ぶんだな?」

「ええ。私の王子様だもの。」

「ならこの侯爵家はカレンに継がせる。」

よかった。お父様がまともな判断をしてくれて。

「どうして?ネイド様と私が継ぐのに。」

「アーサーと婚約破棄するお前に継がせるわけにはいかない。
 こちらの有責だ。お前に何の咎めもないと示しがつかない。」

「それなら、ネイド様の侯爵家に嫁ぐわ。いいでしょ?」

「まずはアーサーとの婚約破棄をしてからだ。それが済むまで部屋から出るな。」

「わかりました。でも、ネイド様が来られたら会っていい?」

「ダメだ!!」

えぇ~!と文句を言いながらも嬉しそうに部屋を出ていく姉はやっぱり自分が悪いとは思っていない。

「…カレン、すまんな。お前の婿はまた選ぶ。」

「はい。ネイド様のご両親はお姉様を認めてくださいますか?」

「わからん。だが、婚約破棄の一端が向こうにもある。それを年齢差と相殺できるかが問題だ。」
 

ちなみに、姉はもうすぐ学園を卒業する18歳、ネイド様は学園入学前の15歳である………

 
 




こちらは、アーサーの家。アーサーは公爵家の次男である。

「…は?従者?お前が?侯爵家で?」

父と兄がポカンとした顔でそう言った。

「ナタリー嬢が不思議な思考をしていることは婚約を結ぶ時に聞いてはいたが…
 ははっ。彼女はおとぎ話の世界の住人なんだな?」

「住人じゃない。お姫様なんだよ…はぁ。」

父と兄は爆笑している。

「で、婚約破棄で慰謝料を貰うって?男側からも。」

「じゃなきゃやってらんないよ。…あー。あの侯爵家の仕事、やりがいがあったんだけどなぁ。」

「お前に伯爵領をやるよ。好きにしたらいい。
 婚約者はどうする?自分で探すか?伝手で紹介してもらうか?」

「しばらくはいいよ。とりあえず、ナタリーと縁を切りたい。」

「…お前、好意はあったの?」

「…正直、頭がお花畑のお姫様とその従者って気分だった。」

やっぱり従者じゃないかって笑われたが、話が通じないから苦労したんだよ。
カレンが言った通り、何十年も一緒に過ごすのは大変だっただろうと思う。
仕事に逃げても、自分が夫に避けられてるとも気づかないナタリーは『いいお話を見つけたの』と内容を語って聞かせる妻になっただろうと思う。


侯爵領の仕事とカレンとのおしゃべりが出来なくなるのは残念だが、やはりナタリーとの婚約破棄は精神的には良い結果となるだろう。

  
 



 
 
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