2 / 8
2.
しおりを挟むサンルームに向かうと、なぜか隣同士に座った二人が顔が20cmも離れていないような距離で微笑み合っていた。
「ごきげんよう、ネイド様。お姉様、アーサー様がお待ちでしたのよ?」
「あっ!ごめんなさい、アーサー様。」
「カレン嬢、お邪魔しているよ。
アーサー殿、申し訳ありませんでした。
ナタリー嬢の好意に甘えて僕の話し相手をしていただいたのです。」
「ねえ、カレンたちも座って?一緒にお話ししましょ?」
隣同士に座ったまま悪びれる様子もなく、姉は私たちを呼ぶ。
まさか、ほんの数分の間でここまで進展しているとは思わなかったわ…
今後の展開が読める私は、アーサー様には考える時間も必要なくなったと思った。
だけど、ちょっと私の予想と違う展開に頭を抱えてしまったの……
姉たちの前に私とアーサー様が並んで座ったの。一番おかしな組み合わせよ?
「カレン、アーサー様。私、見つけてしまったの。理想の王子様を!」
うん。それは気づいたよ?
「それは、ネイド様なの。彼も私を自分のお姫様だって。」
うん。ネイド様もおとぎ話が好きなのね?
「だからね、アーサー様は従者でどうかしら?」
うん?従者?
「お姉様?意味がわからないわ?」
「私とネイド様が結婚してこの侯爵家を継ごうと思うのね。
だけど、アーサー様は今までこの侯爵家のために仕えてくれたでしょ?
仕事はそのままアーサー様がしてくれたらいいと思うのよ。」
は?
「アーサー様はお姉様の婚約者よ?仕えてくれていたんじゃないわ。
お姉様に代わって次期侯爵の仕事を学んでくれているのよ。」
「ええ。だからね、婚約は解消して、でも仕事はそのまましてくれたらいいじゃない?」
はぁー。
「もし、婚約解消したら次期侯爵の仕事はアーサー様がするべきことではありません。
それに、ネイド様の家はどうするのですか。跡継ぎですよね?」
「僕の侯爵家は従兄が継げばいいと思うよ?
この侯爵家の方が僕たちに相応しい規模だと思うんだ。」
手を取り合い見つめ合う二人を視界に入れたくないぃ~。
「ほら、お姫様と王子様って周りがお仕事するでしょ?
私たちに必要なお仕事って子供を授かることだと思うの。
だから、アーサー様を雇うわ?」
うちは王家じゃないのよ!
「これは立派な婚約破棄案件だ。慰謝料を請求させてもらう。
俺はお前らの下で働くなんてまっぴらだ!」
アーサー様の冷ややかな視線に、手を取り合ったまま慄く前に座る二人。
そりゃそうだ。何様なのかしらね?
「アーサー様、申し訳ございません。
父には私から事の経緯を説明して、婚約破棄の慰謝料も払うように伝えます。
これは、ネイド様の方にも慰謝料を請求するべきです。」
「ああ、そうだな。俺も父と相談するよ。」
そう言って部屋を出たアーサー様を前の二人は固まったまま見送っていたけれど、ことの重大さがわかっているのかしら?
ここまでおバカな発言を面と向かって言えるって呆れてしまうわ。
220
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
妹が私こそ当主にふさわしいと言うので、婚約者を譲って、これからは自由に生きようと思います。
雲丹はち
恋愛
「ねえ、お父さま。お姉さまより私の方が伯爵家を継ぐのにふさわしいと思うの」
妹シエラが突然、食卓の席でそんなことを言い出した。
今まで家のため、亡くなった母のためと思い耐えてきたけれど、それももう限界だ。
私、クローディア・バローは自分のために新しい人生を切り拓こうと思います。
貴方は何も知らない
富士山のぼり
恋愛
「アイラ、君との婚約は破棄させて欲しい。」
「破棄、ですか?」
「ああ。君も薄々気が付いていただろう。私に君以外の愛する女性が居るという事に。」
「はい。」
「そんな気持ちのまま君と偽りの関係を続けていく事に耐えられないんだ。」
「偽り……?」
私には婚約者がいた
れもんぴーる
恋愛
私には優秀な魔法使いの婚約者がいる。彼の仕事が忙しくて会えない時間が多くなり、その間私は花の世話をして過ごす。ある日、彼の恋人を名乗る女性から婚約を解消してと手紙が・・・。私は大切な花の世話を忘れるほど嘆き悲しむ。すると彼は・・・?
*かなりショートストーリーです。長編にするつもりで書き始めたのに、なぜか主人公の一人語り風になり、書き直そうにもこれでしか納まりませんでした。不思議な力が(#^^#)
*なろうにも投稿しています
君を愛する事は無いと言われて私もですと返した結果、逆ギレされて即離婚に至りました
富士山のぼり
恋愛
侯爵家に嫁いだ男爵令嬢リリアーヌは早々に夫から「君を愛する事は無い」と言われてしまった。
結婚は両家の父が取り決めたもので愛情は無い婚姻だったからだ。
お互い様なのでリリアーヌは自分も同じだと返した。
その結果……。
「そんなの聞いてない!」と元婚約者はゴネています。
音爽(ネソウ)
恋愛
「レイルア、許してくれ!俺は愛のある結婚をしたいんだ!父の……陛下にも許可は頂いている」
「はぁ」
婚約者のアシジオは流行りの恋愛歌劇に憧れて、この良縁を蹴った。
本当の身分を知らないで……。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
悪役令嬢が残した破滅の種
八代奏多
恋愛
妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。
そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。
その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。
しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。
断罪した者は次々にこう口にした。
「どうか戻ってきてください」
しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。
何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。
※小説家になろう様でも連載中です。
9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。
【完結】婚約破棄の代償は
かずきりり
恋愛
学園の卒業パーティにて王太子に婚約破棄を告げられる侯爵令嬢のマーガレット。
王太子殿下が大事にしている男爵令嬢をいじめたという冤罪にて追放されようとするが、それだけは断固としてお断りいたします。
だって私、別の目的があって、それを餌に王太子の婚約者になっただけですから。
ーーーーーー
初投稿です。
よろしくお願いします!
※こちらの作品はカクヨムにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる