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しおりを挟むザイールの話は私の想像と全然違っていて…恋人になったのって体を重ねた一日だけ?
でも、まだ婚約者がいたから浮気相手になる?
しかも次の日には前日の記憶がなかった?じゃあ、恋人期間抹消?
「私って、記憶喪失中に記憶喪失になったんですか?」
「うん。そうだね。」
「記憶が戻った今も2年間の記憶喪失気分なのに……これって記憶を3度失ってない?」
「うーん。そうともいえるかな?」
どう考えても体を重ねた一日の記憶は戻るなんて思えないわ。
それとも、また体を重ねると思い出すかも?
今日は初夜だけど安定期までは禁止らしいし。
というか、出産するまでそんな気にはならないよね。ザイール様も。
うん。この記憶が戻るかどうかは1年後に試すことにしよう。
「辺境伯夫妻公認でカリン攻略から始めたと。」
「そうだね。カリンには屋敷中がメロメロになっていた。」
うっ…悔しい。覚えていないなんて勿体ない。
「今のお話ですと、ザイール様は比較的早くに私に好意があったのですね。
ですが、実質卒業してからの3か月が中心で、しかも私は気づいていなかったと。」
「エリスは屋敷のみんなから、ちょっと鈍いと思われていたよ。」
「おそらく、愛人になるくらいなら片想いでいいと思ったんじゃないかしら?
素敵な貴族に優しくされて、嬉しくないはずはないわ。
でも、本気になってしまったら自分がつらくなるから。
カリンを言い訳に、憧れで留めておきたかったのよ。
だから、無意識に気づいていない状態だった。そう思うわ。」
「辺境にいた頃のエリスは、少ししおらしいというか遠慮があるというか。
だけど、明るくて一生懸命でカリンを大切にしていて。
今のナターシャも似ているけれど、自分のことを使用人って思ってないからかな?
表情はクルクル変わるし、少し積極的というか好戦的かな?
どちらも可愛くて好きだよ。」
「もう!でもそうよね。
あなたのことは初めましての気分だったのに、触れられても嫌じゃないわ。
前の自分なら、出会って間もない男性とベッドで一緒に寝るなんて考えられないし。
ザイール様が好きで、もう離れたくないっていう気持ちが記憶にあるのかも。」
「求婚してからのナターシャに今のナターシャは近いかな。
私はどんなナターシャでも骨抜きだから離れる気はないよ。」
「じゃあ、旦那様?抱き着いて寝てもいいかしら?」
「もちろん、喜んで。奥様。」
うん。やっぱり安心できる。好きだなって思う気持ちが前の自分と融合するみたい。
額にキスをされたので、目で催促してみた。
唇にもキスをもらい、やっぱり嬉しいとしか思わない私は2年間の記憶がなくてもザイール様と幸せになれると感じた。
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