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しおりを挟む辺境での2人の恋の経緯。ナターシャはどうやって恋人になったのかを知りたかった。
だけど、それは思い描いていたのとはちょっと…大分?違った。
ナターシャが辺境の森で発見されたのは、近くの巡回騎士2人が猫の鳴き声のようなものを聞いた気がしたからだった。
そこにいたのは、額が赤くなって服も汚れた女性と、猫の鳴き声と間違った赤ん坊。
見覚えのない女性で、ワケありっぽい感じだったので、騎士団の医務室に運ばれた。
赤ん坊は綺麗にされ、母乳の出る夫人から飲んだ。
吸う力が心配になるほど衰弱して見えたけど、安心した。
目覚めた女性に記憶がなく、辺境伯の屋敷に預けられて身元の確認がされたがわからない。
夫人が名付けて侍女として働き始めた。
ザイールがそのことを知ったのはナターシャが屋敷に来てから3か月後。
学園の長期休暇で帰った時のことだった。
礼儀作法を身につけた女性が赤ん坊と行き倒れ?記憶喪失?
ザイールは同情を誘って誰かに養ってもらおうと思っているのではないかと考えた。
赤ん坊が寝ている間は母のそばにいると聞き、母のもとへ向かうとまだ若く可愛い女性がいた。
「エリス、長男のザイールよ。」
母が自分を紹介している。
「初めまして。エリスと申します。3か月前からこちらでお世話になっています。」
自分に挨拶してくれる女性、エリス。彼女が?
「ザイールだ。」
それだけ言って部屋を出た。嘘だろう?彼女が子持ち?
彼女について聞いて回ると、どうやら母親ではないだろうということだ。
だよな。若すぎる。
それに貴族の令嬢にしか見えないんだけど?
誰かの庶子か?赤ん坊は妹とか?
妄想は広がるけれど、なかなか声をかけられないまま休暇を終えた。
学園に戻ってから気づいた。エリスに惚れたんだって。
一つ下の婚約者とは相性が悪いし、彼女は辺境は嫌だと言う。
ならば、婚約解消しようと持ち掛けた。
しかし、今は状況が悪いので、もう少し待ってくれと言われた。
言い方が気になったので調べてみると、恋人がいた。
向こうにも婚約者がいるようだ。
自分はカムフラージュ的な存在としていてほしいのかもしれない。
学園を卒業するまでに婚約を解消できればいい。そう思っていた。
頭は勝手にエリスとの将来を考えていた。
そして、半年後に辺境に戻った時に婚約を解消したいこと、エリスに惚れたことを両親に告げた。
婚約解消については両親も納得してくれた。
しかし、エリスは今の身分では辺境伯夫人にはできないし、子供もいる。
記憶が戻った時に、目立つ地位にいるのはよくないかもしれないと言われ、跡継ぎを弟にと言った。
そこまで本気なら、エリスはもちろんカリンにも好かれる必要があることと、婚約解消するまでは突っ走らないように念を押された。
そこから、まずカリン攻略が始まった。
ちょうど歩き始めた頃のカリンはとても可愛かった。
攻略なんて考えなくても、手を伸ばすと抱きついてくる。
カリンのそばにいると、エリスと話す機会も自然に増えた。
そして、残念なことにまた学園に戻らなければならなかった。
次はまた長期休暇。待ち遠しい。
そして、長期休暇で戻ってきた時も、カリンと遊びながらエリスと話をした。
ようやく半年後、学園を卒業した。
しかし、婚約解消は相手の父親の反対でなかなか進まなかったので、辺境に帰った。
そこからエリスには具体的な言葉は言わなくても態度で好意を示していた。
しかし、気づいてもらえない。屋敷中の使用人たちがザイールの恋を応援してくれていた。
中途半端な婚約もなんとかしなければ、エリスに告白できない。
そう思い、王都に行ってなんとしてでも婚約解消してくると決めた。
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