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しおりを挟むオリバーが公爵として表立っても構わない。
そう言うと、ミルフィーナは素で驚いていた。
「もちろん、エメット公爵はお元気だ。出番はまだまだ先になるだろう。」
「……オリバー殿下はやはり、公爵家の婿という立場に納得していないということでしょうか?」
仮面を被りなおしたミルフィーナは少しオリバーを非難するように聞いてきた。
「まさか。私は納得しているよ。不満なら、王弟のままでもいれたし、爵位を手にして兄の補佐をすることもできたし、爵位と王領を選ぶこともできた。妻が10歳下になろうが別に待てばいいだけだしね。」
「……失礼しました。」
「君にとって公爵という立場が重いようなら、いつでも代わるという意味だ。肩書きだけね。別に君を侮っているわけでもないよ?向き不向きというものは誰にでもある。そういう話だ。」
公爵ともなれば定期的に議会にも出席する必要がある。
もちろん、周りはほとんど男ばかりだ。たまに、下品な話になったりもする。
おそらくエメット公爵は、できるだけ長く自分が公爵でいるつもりのはずだ。
ミルフィーナが公爵令嬢として優秀でも、女公爵となるとまた風当りが強くなったりもする。
それに、求婚騒動は有名だ。いつまでもからかわれる場合もある。
女が爵位を継いだ場合、妊娠・出産で表に出られない時期があるため、夫が代理になりそのまま表に立つ場合があるのだ。
「君は、本当は注目されるのが苦手だろう?」
オリバーがそう言うと、ミルフィーナの顔色が真っ青になった。
「ほら、水を飲め。」
放心状態になったミルフィーナに水の入ったグラスを手渡した。
「あ……ありがとうございます。」
「そんなに驚いたのか?まぁ、君は上手く誤魔化して公爵令嬢として振る舞っていたようだな。ほとんど誰も気づいていないと思うから心配するな。」
あのパトリックは少し気づいていたかもしれないがな。
「……誰にも言わないでください。」
「不器用だな。家族の前でも公爵令嬢を演じてどうするんだ?」
「切り替えができなくなってしまったんです。以前はルナセアラの前では姉として頼られるようにと頑張っていましたけど、両親や侍女たちの前では素の自分でいたはずでした。
なのに、いつの頃からか誰の前でも公爵令嬢として振る舞うようになってしまって。一人にならないと無理なんです。」
周りが期待するような令嬢を演じてしまう。
パトリックとのこと以外、ミルフィーナは誰からも認められる公爵令嬢だと思われていたのだ。
「でも今は素だろう?もう私の前で演じなくてもよくなったな。」
ミルフィーナはパチパチと瞬きして首を傾げて聞いてきた。
「素でいてもいいのですか?」
「もちろん。夫婦になるんだ。普段は素の方が嬉しいね。」
そう言うと、ミルフィーナははにかんで笑顔を見せた。
うわっ……めちゃくちゃ可愛くないか?
オリバーはますますミルフィーナに興味を持った。
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