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しおりを挟むオリバーとミルフィーナの結婚は10か月後に決まった。
婚約期間は1年もない。
というのも、パトリックとルナセアラの結婚が1年2か月後。
姉として、次期公爵として、妹よりも先に結婚するべきである。
と、まぁ、よくわからない昔の慣習がここでも生きていた。
もちろん、可能な限りである。
例えば、妹の結婚式が3か月後に迫っている中、姉が婚約したからと言って3か月以内に結婚することはない。
昔は、妹の結婚式を遅らせてまで姉を先にしていたこともあったとか。
そうなると、玉突きのようにあちこちで延期になり、その間に婚約破棄なども起こったりと後処理が大変になり、あまりうるさく言われなくなったということらしい。
今回はルナセアラがまだ学生であることが幸いし、ミルフィーナの結婚を先にすることにできたのだ。
「私の外見は君の好みではないようだが、君の外見は私の好みから外れてないよ。」
オリバーは婚約を交わしたミルフィーナとの交流でそう言ってみた。
彼女はオリバーがそのことを知っているとわかっていたのだろう。動揺することなく、苦笑して答えた。
「あの頃の自分が恥ずかしいですわ。幼い頃に見た絵本の王子様のような方が自分の結婚相手だと思い込んでいたのですもの。オリバー様は正真正銘の王子様でいらしたのに、失礼なことを申しました。」
そうだ。オリバーは王子だ。ミルフィーナの好みではない茶髪翠眼だが。
そしてパトリックはミルフィーナ好みの金髪碧眼ではあったが侯爵令息で王子ではない。
しかも、ミルフィーナとの結婚でオリバーは王子という肩書を失う。
つまり、王子でもなく金髪碧眼でもない。
ミルフィーナの結婚相手は、どちらも持っていない男になるのだ。
彼女は公爵令嬢としての仮面でうまく隠しているが、この婚約に未だ戸惑いが見えた。
「何か聞きたいことがありそうだが?」
「いえ、何もありませんわ。」
「そうか?でもそれはそれで寂しいな。婚約者なのに興味はないということか?」
「あ……失礼しました。そういう意味ではないのです。」
「ははっ。冗談だよ。困らせてしまったかな?もっと気楽にしてくれていいよ。」
「気楽に。っそう……ですね。少しずつ、そうなれるように努力いたします。」
「いやいや、努力するものじゃないよ。まぁ、一緒にいることに慣れることでそうなっていくさ。」
「一緒に……」
「ああ。私も一緒に学ばせてもらうために結婚まで公爵家に通うつもりだからね。」
そう言うと、ミルフィーナは驚いていた。
彼女は婿になるオリバーが何もしないと思っているのだろうか。
もちろん、王太子である兄の補佐もするが、公爵家の婿になるのだから公爵家の仕事も手伝うつもりでいる。
「君が望むなら、私が公爵として表立っても構わないが?」
オリバーがそう言うと、ミルフィーナは公爵令嬢の仮面を忘れて素で驚いていた。
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