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しおりを挟むルナセアラがパトリックと婚約したことで、オリバー殿下の相手はミルフィーナに決定した。
そのことは、ルナセアラが正式にパトリックと婚約を結んだ後、ミルフィーナに伝えられた。
ミルフィーナは一瞬動揺を見せたが、笑顔で了承した。
オリバー殿下が好みの外見と違っても、ミルフィーナはもう断ることなどできない。
これは王家からの正式な下命なのだ。
顔で笑って心で泣いて。
王子妃になるよりはまだマシだとミルフィーナが自分に言い聞かせていたことは本人以外知る由もない。
…………はずだった。
オリバー第二王子殿下の趣味は、人間観察。
興味を持った人を観察すれば、少しずつ本性、内面が見えてくる。
オリバーの前の婚約者は、自分のことよりもオリバーに尽くす令嬢だった。
そこが気に入って、婚約者に選んだようなものだった。
優しい令嬢だったが繊細で、顔に病跡があってはオリバーの横には立てないと心を病んだ。
オリバーは別に気にしないが、女性にとって顔というのは武器でもあるからなのだろう。
婚約は解消された。
次の婚約者はエメット公爵家の2人の令嬢のどちらかだと言われた。
オリバーが望むなら、気に入った方を指名してもいいらしい。
だが、オリバーでも知っている、姉ミルフィーナの婚約騒動。これまで4度も求婚を断っている令嬢。
しかも、自ら婚約を望んだと聞いている。
オリバーはミルフィーナに興味を持った。が、指名する気はない。
5度目の求婚で、婚約騒動は決着すると言われているからだ。
ミルフィーナがパトリックの求婚を受けるのであれば、それを祝福する。
他人の恋路を邪魔してまで奪おうという気はオリバーにはないから。
どうなるか見届けるために、オリバーもエメット公爵家の誕生日パーティーをこっそりと参加していた。
しかし、驚くことにパトリックが求婚したのは妹のルナセアラの方だった。
その時のミルフィーナの表情をつぶさに観察した。……面白い。
パトリックの説明は嘘なのだろう。
しかし、それに沿うようにミルフィーナも話を合わせる。
彼女の混乱を手に取るように感じた。
それでも、彼女は気づかせないように笑顔の仮面を被る。公爵令嬢として。
『コレ、逸材じゃないか?』
オリバーは楽しくなった。
少しつまらなくて色褪せていた毎日が、明るく色づいた気がした。
かつて、オリバーの婚約者候補になるのが嫌だと言ったミルフィーナ。
まさか、その令嬢と婚約することになるなんて、面白くて、楽しくて、観察するのが待ち遠しい。
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