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しおりを挟むパトリックが姉に5度目の求婚することをルナセアラは悲しく思ったのではないか。
パトリックはルナセアラにそう聞いた。
「……パトリック様は、ひょっとしてご存知だったのですか?その、私の気持ちを。」
「確証があったわけではないよ。僕は君の交友関係も知らないし、婚約者候補がいるのかも知らない。
だけど、ブレスレットを着けていてくれただろう?
僕がエメット公爵家を訪れている時に僕が贈ったものを身に着けるのは贈られた者のマナーと言えるけど、街に行く時にも着けていてくれた。単に気に入っただけかもしれないけど、嫌いな男からの贈り物なら身に着けないと思った。
だから今思えば、君の悲しそうな顔は僕の願望でもあったのかもな。」
「願望?」
「そう。『好きな人が姉のものになるのを見るのが嫌』で悲しげな顔になったっていう願望。」
ルナセアラは真っ赤になった頬を両手で押さえながら言った。
「その通りです。あの時、そう思ってしまいました。なのに、パトリック様は私に求婚を……
半年前に話したことはやはり私を選べと言ったように思わせてしまったのだと申し訳なく思いました。
実は何度か『私が姉と代わりたい、私なら喜んで求婚を受けるのに』って思ってしまうような邪な気持ちがあったからあんなことを言ってしまったのだと後悔して……
それでもやっぱり、嬉しくって。求婚を受けてしまいました。」
あの時のルナセアラは真っ青な顔をして震えていた。
それでも、自分の気持ちを行動に移して求婚を受けてくれたのだ。
「うん。僕はそんな君となら幸せになれるんじゃないかと思ったんだ。君の悲しげな顔を笑顔にしたいなって。僕はミルフィーナ嬢を選びたくないから君を選んだわけじゃないし、君に求婚したことを後悔していない。」
パトリックは求婚しないという選択肢を選ばなかった。
ここまで周りを巻き込んだ騒動になっているんだ。求婚はしなければならない。
両家のためにも、それは絶対だった。
だから、直前まで悩んだ。
決め手は本当に一瞬の表情だけだった。
それにより、パトリックは心の赴くままにルナセアラを選んだんだ。
ミルフィーナが嫌いだからルナセアラしか残っていなかった、という思いからではない。
「私も、求婚を受けたことを後悔したりしません。もうこのことで悩んだりもしません。
私もパトリック様と幸せになりたい。もっとパトリック様のことを知りたいです。」
「うん。これからよろしく。」
「よろしくお願いします。」
少しモヤモヤが晴れ、残りは吹っ飛ばしたのか、ルナセアラは吹っ切れたような顔をして笑った。
そうだ。僕たちはもう婚約者同士なんだ。
これから未来に向けて、2人で歩み始める。前だけを向こう。
ルナセアラとならいい関係が築けると思い、パトリックはようやく穏やかな気持ちになれた。
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