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アデルはスザンヌ様がそばにいるようになった経緯を語ってくれた。


「僕とアンジェは幼馴染で昔から仲が良かった。
 14歳の時に、『アンジェが好きだからずっと一緒にいたい。婚約してほしい』と言った。
 アンジェも僕が好きだと言ってくれて両家の両親も喜んでくれた。
 だけど、いつまで経っても婚約が受理されなかった。
 学園に入る半年ほど前、ダリウス殿下の面倒事に巻き込まれてアンジェが婚約者にされた。
 だけど、必ず白紙撤回して僕とアンジェの結婚が認められることになっていたんだ。」

「アデルも知った上での私と王太子殿下の婚約だったってことね。」


学園でも一緒に過ごすはずが、王太子殿下の婚約者となってしまったために2人きりでいるわけにはいかなくなった。
腹立たしく思いながらも、卒業までの我慢だと思っていた。

だが、対外的にはアデルに婚約者はいない。
令嬢たちからも声を掛けられるし、誘いもある。それが面倒だった。

2年生になってから、スザンヌ嬢に声をかけられた。

『協力し合いませんか?』と。

彼女には好きな人がいた。 
年上の騎士だった。
両親には反対されていて、学園で婚約者を探せと言われている。
だけど、彼女にはその気はなかった。
学園を卒業したら、家を出て恋人の騎士と結婚するつもりだと言った。

アデルと仲良くなれば、両親はしばらく様子を見るために婚約を急かさないはず。

アデルもスザンヌ嬢がそばにいれば、誤解されて近づく令嬢が減るはず。

スザンヌ嬢はアデルがアンジェリーナに好意があることに気づいていたという。
時々、周りの友人たちもいる中で2人が視線を交わすのを見てしまったから。
王太子殿下の婚約者に思いを寄せても実らないのでは?と聞かれたが、いいんだと答えた。

試しにアデルのそばにスザンヌ嬢がいることを許せば、触れ合いなど一切ないのに周りは付き合い始めたのかと勘違いした。

本当にただそれだけだった。

アンジェにもスザンヌ嬢とのことを話した。
あの距離感で婚約の噂になるのは驚くと言っていた。
お互いに利点があるのであればいいけれど、深入りしたりスザンヌ嬢のご両親に問われたら婚約する意思がないことは告げた方がいいと言われた。
僕もそのつもりだったが、学園外では噂にはならなかったので聞かれることもなかった。
 
そして、少し前にスザンヌ嬢に異変があった。
数日休んで学園に来たけれど、アデルには近づいてこなかった。
元々、アデルからスザンヌ嬢に近づいて話しかけたことはない。
彼女が来れば、話すこともあるという程度だったから。

喧嘩をしたのか、別れたのか、と噂になったけれど、付き合っていないのだから単なる友人なだけだと答えた。

深入りするつもりはないので、彼女に何があったのかを聞く気はなかった。
協力関係が終わっただけだと思った。

そして、スザンヌ嬢がそばに来ない日々が続いた後、アンジェが階段から突き落とされた。

普通に、みんなが階段を行き交う中、階段を下りていたアンジェの背中をいきなり押したという。

騒ぎを聞きつけたアデルがアンジェを医務室に運び、スザンヌ嬢は教師に取り押さえられて騎士に連行された。



で、目覚めたアンジェリーナには記憶がなく、今に至るという。 




 
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