8 / 13
8.
しおりを挟むアデルはスザンヌ様がそばにいるようになった経緯を語ってくれた。
「僕とアンジェは幼馴染で昔から仲が良かった。
14歳の時に、『アンジェが好きだからずっと一緒にいたい。婚約してほしい』と言った。
アンジェも僕が好きだと言ってくれて両家の両親も喜んでくれた。
だけど、いつまで経っても婚約が受理されなかった。
学園に入る半年ほど前、ダリウス殿下の面倒事に巻き込まれてアンジェが婚約者にされた。
だけど、必ず白紙撤回して僕とアンジェの結婚が認められることになっていたんだ。」
「アデルも知った上での私と王太子殿下の婚約だったってことね。」
学園でも一緒に過ごすはずが、王太子殿下の婚約者となってしまったために2人きりでいるわけにはいかなくなった。
腹立たしく思いながらも、卒業までの我慢だと思っていた。
だが、対外的にはアデルに婚約者はいない。
令嬢たちからも声を掛けられるし、誘いもある。それが面倒だった。
2年生になってから、スザンヌ嬢に声をかけられた。
『協力し合いませんか?』と。
彼女には好きな人がいた。
年上の騎士だった。
両親には反対されていて、学園で婚約者を探せと言われている。
だけど、彼女にはその気はなかった。
学園を卒業したら、家を出て恋人の騎士と結婚するつもりだと言った。
アデルと仲良くなれば、両親はしばらく様子を見るために婚約を急かさないはず。
アデルもスザンヌ嬢がそばにいれば、誤解されて近づく令嬢が減るはず。
スザンヌ嬢はアデルがアンジェリーナに好意があることに気づいていたという。
時々、周りの友人たちもいる中で2人が視線を交わすのを見てしまったから。
王太子殿下の婚約者に思いを寄せても実らないのでは?と聞かれたが、いいんだと答えた。
試しにアデルのそばにスザンヌ嬢がいることを許せば、触れ合いなど一切ないのに周りは付き合い始めたのかと勘違いした。
本当にただそれだけだった。
アンジェにもスザンヌ嬢とのことを話した。
あの距離感で婚約の噂になるのは驚くと言っていた。
お互いに利点があるのであればいいけれど、深入りしたりスザンヌ嬢のご両親に問われたら婚約する意思がないことは告げた方がいいと言われた。
僕もそのつもりだったが、学園外では噂にはならなかったので聞かれることもなかった。
そして、少し前にスザンヌ嬢に異変があった。
数日休んで学園に来たけれど、アデルには近づいてこなかった。
元々、アデルからスザンヌ嬢に近づいて話しかけたことはない。
彼女が来れば、話すこともあるという程度だったから。
喧嘩をしたのか、別れたのか、と噂になったけれど、付き合っていないのだから単なる友人なだけだと答えた。
深入りするつもりはないので、彼女に何があったのかを聞く気はなかった。
協力関係が終わっただけだと思った。
そして、スザンヌ嬢がそばに来ない日々が続いた後、アンジェが階段から突き落とされた。
普通に、みんなが階段を行き交う中、階段を下りていたアンジェの背中をいきなり押したという。
騒ぎを聞きつけたアデルがアンジェを医務室に運び、スザンヌ嬢は教師に取り押さえられて騎士に連行された。
で、目覚めたアンジェリーナには記憶がなく、今に至るという。
476
お気に入りに追加
1,766
あなたにおすすめの小説
もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。
婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。
記憶がないなら私は……
しがと
恋愛
ずっと好きでようやく付き合えた彼が記憶を無くしてしまった。しかも私のことだけ。そして彼は以前好きだった女性に私の目の前で抱きついてしまう。もう諦めなければいけない、と彼のことを忘れる決意をしたが……。 *全4話
完結 そんなにその方が大切ならば身を引きます、さようなら。
音爽(ネソウ)
恋愛
相思相愛で結ばれたクリステルとジョルジュ。
だが、新婚初夜は泥酔してお預けに、その後も余所余所しい態度で一向に寝室に現れない。不審に思った彼女は眠れない日々を送る。
そして、ある晩に玄関ドアが開く音に気が付いた。使われていない離れに彼は通っていたのだ。
そこには匿われていた美少年が棲んでいて……
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる