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しおりを挟む12歳のユリアナは、ルカリオ王太子と婚約することに猛反対した。
彼女には既に心に決めた令息がいたからである。
公爵令息リロード。仮婚約の相手で2歳上である。
この国では正式な婚約は15歳からで、それまでに相手を決めれば仮婚約となる。
仮婚約の場合は破談になっても15歳までは傷がつかない。
ユリアナとリロードは子供ながらに思い合っていた。
頭のいいユリアナだったら理解できるだろうと経緯を話したが、それならば兄のルーセルが王太子になるべきだと主張する。
新国王に引き続きルカリオが王太子から国王になれば2代続けて王家の血筋ではない。
それから、しれっとユリアナとの子を王位に就けるなんてふざけてる。
そこまで王家の面子や血筋に拘るのなら、ルーセルが王太子になるべきだ。
正論である。
だが、12年も甥と思ってきたルカリオに公爵も情があった。
子種を絶ってしまうのも可哀想であった。
ルカリオの気持ちに任せようと思った。
同じく12歳のルカリオもユリアナとの婚約に猛反対だった。
ルカリオにはリンダという仮婚約の相手がいるのだ。
リンダはリロードの妹。同じ歳の公爵令嬢であった。
しかし、王太子になるためにはユリアナとの結婚が必須だと説得された。
子種を絶って臣下になることと天秤にかけて、王太子を選んだ。…この時は。
結局、王命ということでルカリオとユリアナの婚約は決定路線となった。
ユリアナは、王太子妃教育のため王宮に通うことになった。
そして週に一度はルカリオとの交流も求められた。
従兄妹だと思っていたのが違った赤の他人。だが、婚約者となった二人。
以前のようには話が弾むこともなかった。
何度も父に訴えたが、『前は仲が良かったんだからそのうちなんとかなる』というような全く頼りにならない返事が返ってくるだけだった。
仕方なしに努力した。ユリアナはいろんな話題も振ったし、誕生日プレゼントも贈った。
しかし、ルカリオからは何もない。ルカリオの努力が足りない。そう感じていた。
学園に入学してからは、もっとひどくなった。
王宮での交流は、学園で会えるから必要ないと勝手に決めて、無くなった。
そしてリンダばかり目で追っている。
ユリアナとの交流を避けるルカリオは、どういう気でいるのだろう。
そっちがその気なのであれば……
ユリアナは一縷の望みをかけて、今後の計画を練っていった。
それから3年後の卒業パーティーでのルカリオの婚約破棄宣言までは表面上の付き合いしかなかった。
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