出会ってはいけなかった恋

しゃーりん

文字の大きさ
上 下
12 / 17

12.

しおりを挟む
 
 
曾祖父の日記は、結婚後の絶望の日々が書き綴られていた。

それと同時に、レイチェルの近況も調べさせていたらしく、自分の子供を産んだことを知っていた。
駆け落ちを決めたときに関係を持ち、その時にできた子だった。

父である国王も知っていたが、孫と認めればその子が害されることを恐れ認知はできなかったのだ。

レイチェルは『ワケアリ』と結婚させられたが、その時すでに妊娠していたために夫の子供は必要なかった。お互い、『ワケアリ』なのだから子供の父親の詮索はないだろう。
だが、レイチェルは夫から暴力を受けていたと聞いた時の日記には涙の跡があった。 

どうしてレイチェルとハーブス家だけが罰を受けなければならないのか。
自分がレイチェルを望んでしまったことで、彼女は跡継ぎにも関わらず徐々に受け入れてくれたのだ。
咎を受けるのは自分であるはずだ。

曾祖父の日記からはそんな悲痛な叫びが何度も聞こえた。

その後、王太子から国王に即位するので日記を書くのは最後だと綴っていた。

結婚後、この部屋は次の独身の王太子が決まるまで空き部屋だが、日記を書くために息抜き用として使用し続けていたらしい。夫婦の部屋は繋がっているため、王女に日記が見つかることを恐れたためだろう。

最後に、この日記を見つけた王族に向けて書いてあった。

『これを読んだ者が何を思うかは自由だ。だが後世の王太子の教訓するため残し続けてほしい』
 
……父も祖父も読んだのだろうか。あるいは気づかなかったのだろうか。確かめることはしない。彼らは王女に指示されて『ワケアリ』をハーブス家に送り込んだ張本人なのだから。




学園の図書館の一角、そこは2年過ごすうちに昼休憩は自分と友人たちの空間となっていた。

それが破られたのは新たな新入生がいたからだ。

いつもなら、王太子であるクレソンに話しかけた時点でやんわりと退場になる。
図書館なのだ。本を読んだり勉強するところであって、私語をする気はないのだと断るから。

だが、我々よりも先に座っていたその令嬢は、読書に集中しているのかこちらに見向きもしなかった。
ほとんど彼女が先に来るが、たまに我々が先にいても、会釈をして本を読み始めるだけ。

別に隣に座るわけじゃない。別の机にいるのだし、追い出すことはできなかった。

ここに来る通路の手前で、友人の一人が奥に行かさないように誘導してくれている。
だが、彼女だけは今のところ通して問題ないと告げていた。




彼女が学年に数人しかやらない課題に熱心に取り組んでいるのを見て、思わず声をかけて役立つ本を渡した。

『先輩でしょうか?』

そう聞かれたことで、彼女は王太子の顔を知らないのだとわかった。
地方の下位貴族なのだろうと思った。

気が楽になった。

友人たちに、クレソンではなくミドルネームの『ジェイ』で呼ぶように頼んだ。 

こちらから声をかけないと話しかけることがない彼女のことは、通常では知り合うことのできない友人のように感じていた。


気持ちが変わったのは、彼女がハーブス男爵令嬢だと知ったからだ。

わずか半時間程度とはいえ王太子に近づく者なのだ。友人が調べてきた。
 




 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

頭頂部に薔薇の棘が刺さりまして

犬野きらり
恋愛
第二王子のお茶会に参加して、どうにかアピールをしようと、王子の近くの場所を確保しようとして、転倒。 王家の薔薇に突っ込んで転んでしまった。髪の毛に引っ掛かる薔薇の枝に棘。 失態の恥ずかしさと熱と痛みで、私が寝込めば、初めましての小さき者の姿が見えるようになり… この薔薇を育てた人は!?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】お前とは結婚しない!そう言ったあなた。私はいいのですよ。むしろ感謝いたしますわ。

まりぃべる
恋愛
「お前とは結婚しない!オレにはお前みたいな奴は相応しくないからな!」 そう私の婚約者であった、この国の第一王子が言った。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

処理中です...