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しおりを挟む昼休みが終わる予鈴が鳴り、彼と別れて図書館から出ると知らない令嬢に声をかけられた。
「あなたにお話がありますの。こちらへいらしてくださる?」
「……あの、授業が始まってしまいますので後ではダメでしょうか。」
「授業終了後は、私、忙しいの。だから、今がいいわ。」
「……わかりました。」
口ごたえをするなというような圧を感じた。私、何かした?
人気のないところで令嬢と向き合って話すことになった。令嬢の友人らしき女性も一緒だった。
「ローリエ・ハーブス男爵令嬢で間違いないわね?」
「はい。」
「私が何を言いたいか、わかるわよね?」
いえ、まったく見当もつかないですけど?
「……失礼ですが、どちら様でしょうか?」
令嬢は信じられないといった風に驚いていた。有名な人なのかな?
「私は、オリヴィエ・マドラス。マドラス公爵家の長女で、クレソン王太子殿下の婚約者よ。」
「存じ上げず失礼致しました。ご用件に心当たりがないのですが。」
「私が誰だか知っても心当たりがないなんて、随分と生意気なのね。」
生意気……?生まれて初めて言われた。でもどうしよう。本当に何の話かわからない。
「ひょっとして私が間接的に何かご迷惑を?」
友人たちの中にこのマドラス公爵令嬢の知り合いでもいるのかな?
みんな、高位貴族令嬢とは縁がなさそうだと思うけど。
「迷惑……?そうね。あなたのせいで殿下に婚約を考え直したいと言われたわ。」
「どうして私のせいなのですか?私は王太子殿下に会ったことなど……」
ローリエはハッと気づき、先ほどまでいた図書館の方を見た。
「え……?まさかあの3人のうちの誰かが王太子殿下なのですか?」
「あなた、何を言っているの?まさか、殿下の顔を知らないと言うの?」
マドラス公爵令嬢が愕然とした様子で聞き、ローリエは呆然としながら頷いた。
「彼はあなたに何と名乗っているの?」
「名乗り合っていません。どなたの名前も身分も存じ上げません。」
マドラス公爵令嬢は頭を押さえていた。頭痛でもしたかな?
「あなた、いったい殿下と毎日何の話をしているのよっ!」
「あの、申し訳ございませんが、王太子殿下がどの方かわかりません。」
この言い方だと、彼が王太子殿下だとは思うけど。
「殿下は金髪よ。」
「金髪の方は3人の中で2人いらっしゃるので。」
「あなた、さっきから3人って言ってるけど4人ではなくって?」
え……?3人しか見たことがないけれど。まさか金髪がもう1人?
「あ、わかったわ。1人はおそらく殿下の近くに学生が行かないように誘導してるんだわ。あなたがいう3人が誰かはわかったわ。
金髪で青い目……2人とも青いわね。あ、髪が短い方が王太子殿下よ。」
となれば、やはり彼ということになる。よりにもよって王太子殿下だったのかぁ。
「確かに王太子殿下と思われる方とお話をさせていただくことはあります。ですが私に何の関係が?」
「だからっ!殿下が婚約を考え直したいと言い出したのはあなたのせいなのでしょう?」
「え……?王太子殿下が私のせいだとおっしゃったのですか?」
「違うわよっ!だけど、今更言い出した原因はあなたしか考えられないじゃないの。」
いや、王太子殿下だったのなら尚更、私が原因だとは思えないのだけど?
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