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しおりを挟むその後もローリエは1人で図書館に通い続けた。
あの時の3人が先にいることに気づけば会釈し、来ていなければ彼らが後で来ても気づかなかったが、ローリエが読書ではなく勉強をしている時は、声をかけられた。
「どこか分からない?」
ローリエが悩んでいるところを見かけたのか、彼はそう聞いてくれる。
「ここが。」
ローリエは申し出を有り難く受け取り、遠慮することなく教えてもらった。
そんな日々が続くと、座る場所も近くなっていた。
彼が友人たちに『ジェイ』と呼ばれていることには気づいた。
だけど、どこの誰かを聞こうとも思わないし、調べてみたいとも思わなかった。
ここでしか会わない人。
それに、おそらく彼には婚約者がいると思う。
そして私も学園を卒業するまでには婚約者が決まるはず。
それは彼みたいな男性ではないことは確か。
真っ当な男性がローリエと結婚することはないのだから。
ローリエのハーブス男爵家は、いわゆる『ワケアリ』だから、『ワケアリ』と結婚させられる。
知っている人はもうほとんどいない。
だけど、まだ罰を受けている。そんな貴族家。
事の始まりは父の祖母、ローリエの曾祖母にある。
その頃、ハーブス家は伯爵位だった。
一人娘で跡継ぎだったレイチェルが、王太子殿下と恋に落ちた。
だが、王太子殿下には隣国王女様という婚約者がいた。
王太子殿下はレイチェルと結婚するために、王女との婚約を解消したいと国王陛下に申し出た。
しかし、大国である隣国の王女が王太子殿下に一目惚れして成された婚約。
こちらから解消を言い出すことは国益の損失につながることになる。
ではレイチェルを側妃にと願った。
側妃ならば、と国王陛下は認めた。だが、王女との結婚が先でなければならない。
王女との間に子供ができれば、レイチェルを側妃にすれば問題なかった。
だが、王族の近くに王女に報告する者がいたのだろう。レイチェルのことを知った王女が激怒していることを知り、王太子はレイチェルとの駆け落ちまで考えていた。
しかし、その前に王女が急遽やって来て告げた。
『裏切りは許さない。結婚は絶対。伯爵家の女には罰を与える』
王太子殿下とレイチェルは王女によって無理やり引き離された。
ハーブス家に与えられた罰は重かった。
爵位は伯爵から男爵に。
レイチェルを1代目として5代目まで跡継ぎの配偶者は王家が決める。
何があろうと5代目までは男爵位のまま。
王都内での社交は禁止。
というもの。
配偶者にも条件があった。
貴族として失態を犯した『ワケアリ』な者。
子供は必ず1人もうけること。
結婚10年経てば離婚を認める。
というもの。
だが、この1代目のレイチェルから3代目のローリエの父の結婚相手までは王女が存命中だった。
なので、『ワケアリ』貴族となった者の中でもハーブス家の者が幸せになれそうにない相手ばかりが選ばれたのは当然のことだったのだ。
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