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「…あなた、エドワードと夫婦として母屋で暮らす気はあるのかしら?」

「夫婦として?…それは難しいかもしれませんね。愛人を母屋に招けませんよね?」

「別れる気はないってこと?」

「エドワード様が別れたからと言って、私まで別れる必要がありますか?」

「…マシューの母になれるのに?」

「あの子はもう12歳です。母を必要とする時期はとっくに過ぎました。
 今更、母親ヅラしても心を開かないでしょう。…ルイーザの件もありますし。」

「…そうね。どうしたらいいかわからなくなってしまったわ。」

「一つは、今のまま私は別邸で暮らし、社交が必要な時だけエドワード様にお付き合いします。
 女主人は…6年後には結婚するであろうマシューのお嫁さんにお任せですかね?
 もう一つは、離婚ですね。新しい妻をエドワード様が迎えるかどうかはお任せします。
 もし子供を授かっても、マシューを邪険に扱わなければ構いません。」

「…新しい妻が子爵位より上だと、マシューの後継が危うくなるわよ。」

「それも仕方ないことです。通常、兄弟が数人いても後継は一人です。
 早めに伝えれば、自らの道を選べるのでは?官吏、騎士、領地管理、領主補佐、起業。
 12歳ですから、まだ十分に間に合います。」

「エドワードと相談するわ。現状維持か離婚か。この二択なのね?」

「はい。今更、夫婦は無理です。」


そう言って、母屋から出た。…どっちになるかな?どっちでもいいけど。




エドワード様の愛人エリナさんは、少し前に騎士と逃げたらしい。…貰った宝石を全部持って。
しかし、その騎士はエリナさんをすぐに捨てて宝石を奪って逃げた。
宝石を現金に換えようとした中に侯爵家の紋章が入った物があり、騎士は侯爵家の人間だと証明できず捕まった。
捕まった騎士に話を聞くと、エドワードに若さが無くなり腹も出てきて夜の方も不満に思っていたエリナは簡単に靡いたと言った。
騎士が捨てた後のエリナは行方不明だ。移動したか誰かに拾われたか買われたか売られたか。
10数年も良い生活をしてきたメイド上がりの平民は、今どう思っているだろうか?




エドワード様と侯爵夫妻の話し合いの結果、離婚になった。
良い出会いがあれば再婚するが、流れに任せるようだ。
でも、傷心のエドワード様はマシューの教育に熱心になったらしい。
教育と言っても、領地に関わることなので後継者教育かな?
マシューの婚約者は一つ年上の侯爵令嬢に決まりそう。
侯爵夫人が女主人の仕事を張り切って教えそうね。



別邸の使用人たちもバラバラになる。
アオとカナは7年前に結婚して子供もいる。庶民の定食屋を開こうと考えているらしい。
イオとアンも結婚した。二人はアオたちの店の従業員になりたいらしい。
マナは数年前に実家に呼び戻されて結婚した。
ユンは母屋に戻る。もうオドオドしていない。
トムは引退だ。というか、ここでものんびり畑仕事をしていたし。護衛?何それ?



そして私とサムは結婚して、サムの実家の子爵領で領地管理を手伝うことになった。
叔父様は、サムに任せたいと思って待っていたようだった。
領地の屋敷では学園に入るまではルイーザも長く過ごすので、我が子にも会える。 
実家の領地の屋敷も近いので嬉しい。
本当の自由さを満喫していたら、妊娠した。サムは笑ってる。確信犯ね?
産むのは三人目なのに子育ては初めて。普通ではありえないわね。
領地に来てから、たまに手紙のやり取りをしているマシューに異父妹が産まれたと伝えると会いに来たいと返事が来た。
こういう付き合いも変わってるけど、いいよね?



政略結婚はお互いに自由にし過ぎた結果、離婚してしまったけれど、社交界には興味も未練も全くないわ。
サムと再会できたことは感謝するけどね。
別邸での生活も自由で仲間と楽しく過ごせたけれど、同じ自由でもここでの自由の方が私らしくて楽しいわ。



<終わり>

 
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