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しおりを挟むそして、最悪の結果になった。…ええ。エドワード様が折れました。
子爵家は『どうしても婚約はできない。理由は別邸にいる護衛の弟サムエルに聞いてくれ』と伝えた結果、今ここにエドワード様が来られています。
「お前の姪をマシューの嫁にしてやるのに、何故ダメなんだ?」
「…ルイーザは跡継ぎです。何故ルイーザなのですか?」
「マシューとルイーザの子に子爵家も継がせばいいじゃないか。」
「2代続けて子爵家の嫁であるより、侯爵家は高位貴族の令嬢を望める立場ではありませんか。
もし、ルイーザが別邸に追いやられるような嫁になるかもしれないと思うと不安です。
他の高位貴族令嬢に合わせてみてはどうですか?」
「何人も合わせたさ。だが、ルイーザがいいと言う。」
「もう少し大きくなるのを待てば気持ちも変わるかもしれませんよ?学園での出会いとか。」
「いろいろ言ったんだ。…聞く耳を持たず、部屋に籠ってる。仕方ないんだ。」
サムとサフィニアは顔を見合わせて諦めたように頷いた。
「ギルバート様、ルイーザはマシュー様の妹です。なので、結婚できないのです。」
「…は?何を言っている?」
「ルイーザはサフィニア様が産んだ俺の子です。だから、マシュー様の妹です。」
「………………え?」
「俺がサフィニア様に産んでもらいました。兄夫婦に俺の子を望まれたので。」
「…マシューの…妹…」
「ええ。だから結婚は無理だとマシュー様にお伝えください。」
「…ああ、無理だな…」
一応、理解したのか呆然としたままギルバート様は別邸を出て行った。
無事に嵐は去ったか?と思われたが、やっぱりそうはいかなかった。
なんと、母屋に呼び出された。…侯爵夫人に。
「サフィニアさん、主人はそろそろギルバートに爵位を譲るつもりでおりました。
あなたにも女主人の仕事を任せて、私も主人と共に領地で過ごそうと考えておりましたのに。
ギルバートではない男の子供を産むとはどういうことですか。
侯爵家の嫁として、ありえません!」
「…あの、女主人の仕事はエリナさんがなさるのでは?」
「あの女の話はしてはいけません!」
「っはい。あのですね?侯爵夫人は私とギルバート様の契約の件はご存知でしょうか?」
「…いいえ?聞いておりません。」
「結婚した翌日に契約を交わしました。
私は子を一人産むことと最低限の社交だけを望まれました。あとは自由だと。
ですので、そのように過ごしてきました。」
「…でも、他の男の子を産むのは非常識でしょう!」
「常識ではないかもしれませんが…愛人も許可されていたんですよ?私。
エドワード様もなので、お互い自由に過ごしてよいのだと理解していました。
一年に一度か二度ほどしかお会いすることがありませんでしたからね。これも非常識では?」
「…エドワードはあの女に子を産ませるような愚かなことはしませんでした。
あなたの方が自由に過ごしすぎです!」
「なるほど。自由の認識範囲が違ったんですね。
…サムエルが実家から子を望まれて協力したくなって。
既に自分で育てられなかった子供がいたので、手元にいないのが二人でも同じかと。
元気で幸せに育ててもらえるなら、それでいいと思いました。
まさか、こんなことになるとは思いもしなくて…それは申し訳なく思います。」
サフィニアの言葉がチクチクと刺さる侯爵夫人は黙ってしまった。
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