8 / 14
8.
しおりを挟む婚約式後の生活は、公爵家には思ったほどの変化はない。
ジークとカイルについては、同じ生活。
マリエルとリリーベルについては、週2日3時間だけ王城へ行くだけで、今までの予定をちょこちょこと変更した程度の変化である。
だが、王族側では周囲の変化も慌ただしかった。
…婚約式前までにアダム王子付きの侍従・侍女・乳母を調査・監視したところ、問題点の続出であった。
侍従と侍女に関しては、甘やかして自分たちを頼るように仕向けて、購入品の一部に自分の物も購入できるようにおねだりしたりして、甘い汁を吸う気であったと判明した。
既に何点か少額の購入品があったが、二人への依存度はまだ低かった。
乳母に関しては、元々お役御免の時期は過ぎていた。
が、挨拶や食事のマナーを担当すると申し出があり、延長していた。
そのはずが、王子がかわいくて甘やかしたくて自らの手で食べさせたり…マナー教育は?となっていた。
当然、母より身近にいるため、誰よりも王子が甘えた人物だ。
そして婚約を機に、人員整理が行われたのである。
王太子が子供の頃に世話をしてくれた侍従と侍女を現在いた部署から呼び戻し、アダム王子を頼んだ。
それぞれの下に二人が信頼できる人材を配置し、徐々に仕事を教えていくようにした。
とにかく急遽必要となったため、王太子が確実に信頼できる者を頼った結果ではあるが、『ひとまず出足好調?』とアダム王子の人格形成の向上に向けて歩みだした。…間に合うかな?
急なことで王子は戸惑ったが、意外とあっさりうまく丸め込まれ新しい生活が始まった。
教師については、まだ時間があるため細かく調査をすることにした。
各担当の中から数人ずつ選出してもらい、教える姿勢、王子との相性、後ろ暗い裏がないか、時間を要する。
リアナ王女の過去の教師と現在の教師、ここにも調査を入れることにした。
王女は隣国に嫁ぐ予定で本人も喜んでいる縁談なのだが、王太子は『リアナ女王』案が頭にチラつき、王女に変な入れ知恵をする人物がいないか不安に感じていた。
おそらくそれは、バカ王子を見て国を心配した一派による案なので、王子が問題なくなれば未来に話題にもならないはずである。
リアナ王女が隣国に嫁ぐのは18歳、その時アダム王子は15歳である。…そう夢の終わりの時期…
王子に問題が起こった場合、王女は嫁げるのか…
王太子は、アダム王子の未来は変わると信じているが、次期国王として『もう一人子供が必要』という思いもあった。万が一の場合、直系が途絶えるのだ。
この国の中でリアナとアダム以外に自分の次に王太子になれるのが、現国王の姉の娘の子しかいない。
王太子はルナリーゼに相談することにした。
「ルナ、もう一人子供を産む気はある?」
その言葉だけで、ルナリーゼは王太子が言いたいことを把握した。
「そうね、その考えは次期国王として必要よね。わかってるわ。私も考えたもの。
先に確認したいの。
私が断った場合、側室制度を復活させて子供を産ませる?」
「まさか。誰に何を言われようと、それはないね。私にはルナだけだ。
アダムが王太子になれなかった場合は、嫁いだリアナの子でもいいんじゃないか?
隣国とは元々一つの国だったんだ。
別に乗っ取られるわけでもない。
<魔の森>の結界の恩恵を受け続けても恩着せがましいことなど言わない国だ。
貴族もそのままだろう。自分たちに影響がなければ文句もないだろう。」
「よかった。今28歳だから、産めるか心配だったの。
もちろん、アダムも最後まで見捨てない。
もし子供が授かれたら、国のためじゃなくて私たち家族が望んで生まれて来てくれたって思いたいもの。」
「そうだな。じゃあ昔みたいに子供が出来やすい日前後の予定は軽めに調整すること。
疲れて最中に寝てしまわないようにね。
まぁ、寝てしまっても気絶してしまっても今までみたいに最後まで楽しませてもらうけど。
寝てたのにいつの間にか子供が出来ましたってなるよ?」
王太子は普段は穏やかで優しいが、閨では少しだけ鬼畜だ……。
144
お気に入りに追加
247
あなたにおすすめの小説
【完結】私の婚約者は妹のおさがりです
葉桜鹿乃
恋愛
「もう要らないわ、お姉様にあげる」
サリバン辺境伯領の領主代行として領地に籠もりがちな私リリーに対し、王都の社交界で華々しく活動……悪く言えば男をとっかえひっかえ……していた妹ローズが、そう言って寄越したのは、それまで送ってきていたドレスでも宝飾品でもなく、私の初恋の方でした。
ローズのせいで広まっていたサリバン辺境伯家の悪評を止めるために、彼は敢えてローズに近付き一切身体を許さず私を待っていてくれていた。
そして彼の初恋も私で、私はクールな彼にいつのまにか溺愛されて……?
妹のおさがりばかりを貰っていた私は、初めて本でも家庭教師でも実権でもないものを、両親にねだる。
「お父様、お母様、私この方と婚約したいです」
リリーの大事なものを守る為に奮闘する侯爵家次男レイノルズと、領地を大事に思うリリー。そしてリリーと自分を比べ、態と奔放に振る舞い続けた妹ローズがハッピーエンドを目指す物語。
小説家になろう様でも別名義にて連載しています。
※感想の取り扱いについては近況ボードを参照ください。(10/27追記)
婚約破棄イベントが壊れた!
秋月一花
恋愛
学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。
――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!
……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない!
「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」
おかしい、おかしい。絶対におかしい!
国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん!
2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。
この誓いを違えぬと
豆狸
恋愛
「先ほどの誓いを取り消します。女神様に嘘はつけませんもの。私は愛せません。女神様に誓って、この命ある限りジェイク様を愛することはありません」
──私は、絶対にこの誓いを違えることはありません。
※子どもに関するセンシティブな内容があります。
※7/18大公の過去を追加しました。長くて暗くて救いがありませんが、よろしければお読みください。
なろう様でも公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる