3 / 14
3.
しおりを挟む王都に着き、今回はサイモンの家に泊まらせてもらうことになり荷物を置いて休憩した。
その間に、サイモンは私を連れて王都にいると手紙を出したようだ。
結果、翌日に会うことになった。
向かったのは、ロレーヌ嬢の母親の実家であるエントス侯爵家。
ここにロレーヌ嬢は避難しているそうだ。
ま、お見合いみたいなものかな?とまだ軽く考えていた。
応接室に現れたのは、この家のエントス侯爵夫妻とキーレン侯爵夫妻とロレーヌ嬢。
…サイモンは別室で待っているので、こちらは自分一人だった。
挨拶を交わした後、すぐに本題に移った。
「ホイラン子爵、姪のロレーヌとの結婚を望んでくれていると思っていいのかな?」
エントス侯爵が切り出した。
私が望んでいるわけではないが、望んでいることにしなければいけないのだろう。
「はい。私は子爵と爵位は低いですし再婚にもなりますが、子供はおりません。
再婚を考えていた時に、今回のお話をいただきました。
ただ、暮らす場所は領地になります。
それにキーレン侯爵ご夫妻とロレーヌ嬢が納得していただければ。ということになりますが。」
「はっ!王都からいなくなった方がいいんだ。
学園を退学させられた不名誉な娘が王都をウロウロしていると迷惑だ。
ああ、持参金は出さないぞ。
もともと、修道院に入れるつもりだったんだ。
もうロレーヌに金を出す気はない。」
「……そうですか。
ロレーヌ嬢、婚約する前に子爵領をご覧になってから考えますか?」
ロレーヌ嬢に聞いたつもりが、キーレン侯爵から返事が返ってきた。
「なにを呑気なことを言っている?
婚約期間なんて必要ない。即、結婚だ。
キミがいつロレーヌを放り出そうが構わない。
子供を産ませてから離婚してもいいし、使用人でも、修道院に入れるのもいい。
ロレーヌが帰ってくる場所はもうない。
婚姻届を出して、すぐに王都から去れ!」
キーレン侯爵のサイン済の婚姻届をテーブルに叩きつけて、部屋から出て行ってしまった。
……え?今日、結婚するのか?
誰もがあ然としていた。
エントス侯爵がなんとか雰囲気を変えようと明るめの声を出して言った。
「えーっと。っほら!またキーレン侯爵に会う手間も省けるし、届を出すのもいいんじゃないか?
領地に行ってからお互いを知っていけばいいんだ。」
そうするしかないのだが……
「ロレーヌ嬢、結婚式とかは……」
勢いよく首を横に振られてしまった。
「しなくていいのか?」
勢いよく首を縦に振られてしまった。
母親であるキーレン侯爵夫人を伺って見ると、同じく頷いている。
「サイン……するか?」
またまた勢いよく首を縦に振ったので、逃げるわけにもいかずサインをしてロレーヌ嬢に渡した。
令嬢であるロレーヌの方は、保護責任者として父親のキーレン侯爵がサイン済。
私は既に子爵なので保護責任者はいないが、見届け人としてエントス侯爵もサインをした。
エントス侯爵が侍従に婚姻届を渡し、提出を頼んだ。
こうして顔合わせしたその日に、ロレーヌと結婚することになってしまった。
87
お気に入りに追加
986
あなたにおすすめの小説
(完結)夫に殺された公爵令嬢のさっくり復讐劇(全5話)
青空一夏
恋愛
自分に自信が持てない私は夫を容姿だけで選んでしまう。彼は結婚する前までは優しかったが、結婚した途端に冷たくなったヒューゴ様。
私に笑いかけない。話しかけてくる言葉もない。蔑む眼差しだけが私に突き刺さる。
「ねぇ、私、なにか悪いことした?」
遠慮がちに聞いてみる。とても綺麗な形のいい唇の口角があがり、ほんの少し微笑む。その美しさに私は圧倒されるが、彼の口から紡ぎ出された言葉は残酷だ。
「いや、何もしていない。むしろ何もしていないから俺がイライラするのかな?」と言った。
夫は私に・・・・・・お金を要求した。そう、彼は私のお金だけが目当てだったのだ。
※異世界中世ヨーロッパ風。残酷のR15。ざまぁ。胸くそ夫。タイムリープ(時間が戻り人生やり直し)。現代の言葉遣い、現代にある機器や製品等がでてくる場合があります。全く史実に基づいておりません。
※3話目からラブコメ化しております。
※残酷シーンを含むお話しには※をつけます。初めにどんな内容かざっと書いてありますので、苦手な方は飛ばして読んでくださいね。ハンムラビ法典的ざまぁで、強めの因果応報を望む方向きです。
好きにしろ、とおっしゃられたので好きにしました。
豆狸
恋愛
「この恥晒しめ! 俺はお前との婚約を破棄する! 理由はわかるな?」
「第一王子殿下、私と殿下の婚約は破棄出来ませんわ」
「確かに俺達の婚約は政略的なものだ。しかし俺は国王になる男だ。ほかの男と睦み合っているような女を妃には出来ぬ! そちらの有責なのだから侯爵家にも責任を取ってもらうぞ!」
私知らないから!
mery
恋愛
いきなり子爵令嬢に殿下と婚約を解消するように詰め寄られる。
いやいや、私の権限では決められませんし、直接殿下に言って下さい。
あ、殿下のドス黒いオーラが見える…。
私、しーらないっ!!!
愛していたのは昨日まで
豆狸
恋愛
婚約破棄された侯爵令嬢は聖術師に頼んで魅了の可能性を確認したのだが──
「彼らは魅了されていませんでした」
「嘘でしょう?」
「本当です。魅了されていたのは……」
「嘘でしょう?」
なろう様でも公開中です。
【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!
高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。
7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。
だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。
成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。
そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る
【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】
あの約束を覚えていますか
キムラましゅろう
恋愛
少女時代に口約束で交わした結婚の約束。
本気で叶うなんて、もちろん思ってなんかいなかった。
ただ、あなたより心を揺さぶられる人が現れなかっただけ。
そしてあなたは約束通り戻ってきた。
ただ隣には、わたしでない他の女性を伴って。
作者はモトサヤハピエン至上主義者でございます。
あ、合わないな、と思われた方は回れ右をお願い申し上げます。
いつもながらの完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティなお話です。
当作品は作者の慢性的な悪癖により大変誤字脱字の多いお話になると予想されます。
「こうかな?」とご自身で脳内変換しながらお読み頂く危険性があります。ご了承くださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる